八月十八日の政変
文久三年八月十八日
八月十八日の政変
会津藩・薩摩藩を中心とした公武合体派が、長州藩を主とする尊皇攘夷派を京都から追放したクーデター事件である。
****
壬生浪士組の出動は、正午過ぎ。
午前中、副長室にて、意味不明な言い合いが、繰り広げられていた。
「私は、今日は、留守番してるってば!」
いつもは、行きたがる癖に何故だか出動を渋る千夜。
「お前は、まだ言っているのか!さっさと支度せよ!」
芹沢局長の怒鳴り声が聞こえてくる。
もう半刻程、この調子。
何が、そんなに嫌なのか…?せっかくの出動なのに……と、中村は、思う。
「わかった……。支度するから、出てけ!くそジジイッ!」
「さっさとしろ!くそガキが! !」
本当に、この人達は、素直じゃない。
幹部隊士達は、この二人のやり取りで疲れた表情を見せた。まだ、出動前なのに……。
やっと、出動となり、御所に向かって歩く。
中村は、誠の旗を掲げる旗役として、歩いた。
旗は、結構重いが、誇らしいと感じていた。
御所の蛤御門に着き、芹沢局長も、千夜さんも、後ろの方に居た。必然的に、会津藩士と
話すのは、近藤さんになる。
「御所内の警備を仰せつかった。
壬生浪士組、中に入れて頂きたい!」
会津藩の者達は、顔を見合わせる。
「不審者を通す訳にはいかぬ!」
流石に、皆、この言葉には、固まった。
ちゃんと命を受けて来たのに、この扱いなのだから、致し方ないだろう。
「不審者?お前ら……。ふグッ」
「はいはーい。ちぃちゃんは、ちょっと黙って?」
沖田さんが、千夜さんの口をすかさず手で覆う。それが嫌なのか、ジタバタする千夜さん。
いや、怒るのは、当たり前じゃないか?
「全く……」
副長のそんな声が聞こえた。
「不審者だと……?我等は、命を受けて此処に来た!不審者扱いをされる言われはない!」
凄い迫力で、鉄扇を振り回しながら言い放つ芹沢局長は、格好いいけど、やっぱり似た者親子……。
この後も、会津相手に悪口などを言いたい放題。通せ。通さない。の押し悶着が続いた。
その後、この知らせを受けた、会津藩の軍事奉行や公用方が駆けつけ、事態はようやく収拾。
壬生浪士は、御所の南門の警備が割り与えられた。
この時、誰も気づかなかった。
千夜さんを見てる人物が、御所の中に居たなんて……。




