考え方
なんなんだ?
あれから、ベタベタしてくる佐々木。
私は、何にも言ってない。
恋仲になるとも、付き合うとも、付き合わないとも、
なのに、稽古中でも、副長室に居ても、ベタベタとしてくる。不自然な程に。だ。
「聞いてる?」
ーーまたか。
「佐々木、お前が私に近寄る理由はなんだ?」
空を見ながら愛次郎は答えた。
「君なら、いつも俺を助けてくれる君なら
俺を助けてくれるかな?って。」
寂しそうな、切なそうな、そんな顔をする佐々木。
何から助けるとかは言わなかった。
けど、私には伝わった。”助けてくれ”という気持ちが。
フッと笑う。
「そうか。お前言ったよな?
私が、男でも女でも構わないと。」
空を見つめ、佐々木の視線を感じ、彼の目を真っ直ぐに見る。
「私は、お前が尊皇でも幕府でも構わない。
お前が、例え、どこの藩の間者でも、ここに居たいなら、居ればいい。」
目をそらした佐々木。
「あ、あはは、何それ、俺が間者って、」
目が泳いでる
佐々木愛次郎、長州藩の間者
でも、五月に入隊したが、はじめの1ヶ月だけだ
彼がソワソワして過ごした時は。
「例え話しだ。佐々木、お前が壬生浪士組に居続けたいなら、私はいつでも、お前を助ける。」
例え長州藩の間者でも、壬生浪士組に居たいという奴をなぜ殺す必要がある?
殺す必要なんか、ない。
「何で?もしそうだとしても
そこまでする必要なんか!
お前だって、処分されるかもしれないんだぞ!」
「処分したけりゃすればいい。
長州だからって、倒幕派だからって
それは、全ていけない事か?
たまたま生まれが長州で、信じた奴がたまたま倒幕派だった。———それだけだろ?」
佐々木の見開かれた目。
それを見て、千夜は更に口を開いた。
「壬生浪士組に入って、視野が広がった。
一つの考え方しか知らなかった奴も居るだろ?
こういう考え方があるんだと。
それを知って、ここに居たいという奴をなぜ殺す必要がある?
私は、間違った事を正しいと言い張る組に居たくない。
そんな組になっていくなら、殺された方がマシだ。」
サラサラと、結われた桜色の髪が風に揺られなびく
日に当たった髪がキラキラ光って、綺麗だった。
————彼女が。
「土方さーん、
何なんです?あれ。僕のちぃちゃんに、ベタベタしてー。」
お前こそ、なんなんだ?
人の部屋に入ってきたかと思ったら、部屋からずっと外を見てる総司、何かと思えばちぃと佐々木が、中庭で一緒に居るだけなのに、文句をいいだした。
しかも、僕のちぃちゃんって、、、
お前のじゃねーよ!
「土方さーん、聞いてます?」
返事をするのを忘れてた。
「聞いてる。 」
「いいんですか?
佐々木は間者の疑いがかかってるんでしょ?」
佐々木愛次郎。あいつは、
長州の間者の疑いがかかってるが…
「まだ疑いだ。確証がねぇんだ。手も足も出ねぇだろうが。」
「だって、ちぃちゃんが!」
視線をそちらに向ければ
近い…
何が?って?
佐々木とちぃの距離がだよ
バキッ持ってる筆が折れちまった。
「あーあ。
土方さん、また、筆折って、
さっさと、ちぃちゃん呼び戻してくださいよー。」
はぁ。
結局、お前は、筆より、ちぃちゃんだろうが
俺もか……。
スッと立ち上がり
「芹沢!お前、仕事さぼってるな!」
ビクッとして振り返る彼女。
少し距離がある場所に居た千夜は、
タッタッタっと、こちらにかけてくる。
「うまい茶を頼む。」
「はい!」
お前は、俺の小姓だ。
だからーー。
「ちぃちゃん~」
ふがっ…!
…………
…………
ふがっ!って?
見れば、総司がちぃに抱きついていた。
「総司っつつ!!!!」
屯所に土方の怒鳴り声が響いたのは言うまでもない。




