表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
噂話し
56/281

記憶の混濁ー弐

騒ぎを聞きつけ、芹沢の部屋へとやって来た土方ら、

目の前の光景を見て、絶句した。


どうなってやがるっ?


さっきまで、笑顔を振りまいてた、千夜が 倒れて、

芹沢が、

「お前達は、何者だっ!」


いつもの威厳すらない。まるで、何かに怯えている様な、そんな感じで、刀を片手に、ただ、それを振り回す。

新見は、己の身体の後ろに、倒れた千夜を庇い続ける。

平間は、芹沢を背後から押さえつけているが、体格のいい芹沢だ。平間はズルズル引きずられる、形となっていた。


『芹沢はもう長くない。』


『命をかけて作った組。それが、壬生浪士組。』


あゝ、もう長くないって、殺されるとかじゃなく、

蝕まれて死ぬのか。


「ちぃちゃんっ」


「ちぃっ」


声を荒げた、藤堂と沖田。二人が駆け寄ったのが見えて、二人の隙間から赤く染まった千夜が見えた。右目から血を流し、肩からも、おびただしい程の赤が畳を汚していた。生きているのかわからねぇ。


今、芹沢をほって、ちぃに駆け寄ったら、きっと怒鳴られるだろう。未だ、暴れ続ける壬生浪士組筆頭局長。


「総司、新八っは、俺を援護しろ。

平助、左之は、ちぃと新見をっ!」


「「「「応っ!」」」」

皆の返事の後、


「斬っちゃっていいんですか?土方さん。」

気が抜けそうな程に、楽しげな沖田の声が聞こえてきた。


「阿保かっ!斬っていい訳ねぇだろぅがっ!

————こいつは、壬生浪士組の局長だっっ!」


認めたくねぇがな。

キィンッキィンッ部屋に響く真剣の交わる音。

悔しいが、芹沢についていくのが精一杯な三人。


「芹沢っ!テメェ!、この組の局長だろうがっ!

しっかりしやがれっ!!」


「お前など知らぬわっ」


ドカッっと、足で土方を押し倒す芹沢に、土方は、キッっと視線を向けた。


「痛てぇな!あゝ。俺の名前も忘れたか?仕方ねぇな。

壬生浪士組副長!土方 歳三だっ!!」


『土方は、ーー。』


『んーよっちゃん』


『土方歳三は、鬼になれない。芹沢が鬼なら、私は悪魔だね。』


「誰だっ?知らぬっ。」


俺は、あんな穏やかな時など知らぬ


全てを————捨て————


『壬生浪士組は、お前の命そのものっ!』


揺るぎなき碧い瞳。風になびく桜色の髪。

畳で動かなくなっている桜色の髪が視界に入る。

倒れているのは誰だ?


『芹沢、命は重い。一人の人間の死が負の連鎖を起こす…

仲間、家族、兄弟、その人間に関わった全ての者たちの悲しみが、憎しみとなり、また、新たな死者をつくる。


————忘れるな。芹沢。命は尊く、重いものだ。』



そこに横たわる小さな身体。新見は、傷だらけで、平間も髷が乱れている。


動かない彼女。————死。その言葉が頭をよぎる。


「千夜……。っ俺が千夜を————


「勝手に殺すな。芹沢。」


ゆっくり、起き上がった千夜の身体。皆が驚きの表情で、それを見た。彼女の周りを漂う光。

それは、次第に彼女の身体を覆っていった。


「なんだ!この光っ!」


土方が、光を引き離そうと刀を振り回すが、無意味。


「大丈夫だよ。」


左手で体を支え、なんとか、上半身だけ起こし刀を右手に持つ千夜だったが、カラン…カラン…と、刀は、落ちる。

それと同時に、フワッと光が消えた


「誰か山崎をーー「自分なら此処に。」


部屋の入り口に立っていたのは、山崎烝。


千夜の前にしゃがみ込む山崎、

後ろで支えてくれてるのは藤堂。


「ちぃ?これ、幾つかわかるか?」


そういって、千夜の目の前で、指を二本立てて見せる山崎。

「………。」

わかるわけないじゃん。

右目は、————もう見えない。


あの光達は、痛みを取り除いてくれただけ。


「なんでやっ!

なんで、そないな無理ばかりするんやっ!?右手も力入らんのやろ!!」


「だったら、どうしたの?右目がないなら、左で見ればいい!それでも足りないなら、右耳がある。右手が使えないなら、左手があるっ!」


「何、言うてん?頭おかしなったんか?ちぃ。」


「おかしくなんてなってないし、誰も悪くもない。

私が避けれなかった。ただ、それだけの事だ。

平間、新見、芹沢を休ませてやれ。」


「…千夜……。」


「薬ちゃんと呑んで、ちゃんと寝ろ。

苦しくなったら、私に言え。

今度はちゃんと、————止めてやるから。」



自分のがボロボロなクセに、何で、笑ってられる?どうして————?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ