白黒世界
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真っ白な世界。
何も無い白だけの世界。
此処が何なのか、
あたりを見渡してもわからない。
何故私は洋服を着ているのか、
白いワンピースなんか、私は持ってない。
女の子の格好に抵抗を感じる。
真っ白な世界に、人は、私だけ。
怖い。死に行く人が見る幻なのかな?
初めて生きたいと思った。
死ぬのが怖いと初めて感じた。
フワフワ浮かぶ黒いモノ
さっきまでなかった、その異様な黒。
目で追っても、何かは、わからない。
触ってみようか?と、思ったが、手が拒絶する。
触りたくないと。
触れてはダメだと言わん限りに、、、。
そして気づく
その黒が徐々に、白い世界を染め上げている事に……
真っ白の世界が黒く変わりだす。
”白が生を…。黒が死を…”
「誰?」
何もなかった筈の世界。
確かに感じる人の気配に私は声を出した。
人らしきモノが見えた瞬間
グニャリと黒が形を変え、私を襲う。
怖くて目を閉じた瞬間、私は黒に捕まった。
霧の様な黒が私の身体の自由を奪う。
支える事が出来ず、その場に崩れ落ちた。
そういえば、
身体に傷がないと倒れた状態で気づく私は
どこまで緊張感がないのか、
でも、傷はないが、微かに感じる痛み。
間違いない、私はまだ、
よっちゃん達が居る世界にちゃんと居る。
だったらここは、夢か幻。
まぁ、死の狭間かもしれないけど…ね。
どれぐらいそこに居たのか、
黒に巻きつかれ、寝転んだまま、
手に感じる鼓動に、目を閉じてみた。
『ちぃちゃん?』
総ちゃんの心臓の鼓動。
伝わってくる、悲しみ。
総ちゃんが、泣いてる?
「こんなとこで、寝転んでる場合じゃないよ!」
口にしてみる。とりあえず…。
はぁ~。そんなのわかってるんだよ。
みんなが心配してるのなんか、とっくに伝わって来てた。
だけどこの変な空間からどうやれば出れるの?
考えてもわからない、
考えても無駄なら、
いつもなら寝るんだけど、起き上がってみる。
この白と黒の世界。
「変な空間だよね、ここ。」
黒が通ると白は避ける。
交わらないの?混ざらない。
「生は白…。死は黒…。だっけ?
グレーは無い
二色の色。二色しか無い。」
ああ。そうか。
「ここは、私の心の中。か。」
色を知らない、四歳の私。
白は紙。黒は墨。
だから、交わらないし混ざらない。
黒が強いのは当たり前か。
白は動かない、紙
黒は自由に動く、筆
「貴方には、こう見えたんだ。この世界は、」
(そうだよ)
四歳の時の私が現れた。
私にソックリな、桜色の髪をした碧い瞳の女の子。
身長は、当然だけど小さいまま。
「で?
ここに私を閉じ込めて何がしたいの?」
(何も?
このままにしておけばいいかなって)
閉じ込めて放置って事ですか?
勘弁願いたい。
「あのさ、帰りたいんだけど?」
(だめだよ。
あのひと達が居るとあなたは弱くなる。)
弱くなる?
死を恐れる。一人が嫌になる。
そういう意味,
私にはわかるだって目の前に居る少女は
私だから、私の過去の姿だから。
「だから、一人でいろって?平成の時みたいに!」
嫌だよ。戻れって言うの?平成に、孤独に、
孤独?
バッと勢いよく見上げ、少女を見る。
四歳。
そういえば、よっちゃんに出会ったのも、四歳。
なぜ、この子は四歳のまま世界を拒絶するのか?
(貴方はわたしを忘れてしまった貴方の力と一緒に。)
力って何?
突然の頭痛、
金槌?バット?なんでもいい。
とにかく頭を
何か硬いもので殴られた衝撃が私を襲う,
頭をおさえたいのに、おさえれない,
痛い、いたい、イタイ
よっちゃん、よっちゃん!
もがく千夜。
それを見下ろす四歳の千夜。
『俺たちと一緒に生きてくれないか?』
突然聞こえたよっちゃんの声,
鼓動が手に伝わってくる。
頭は痛いままで、だけど千夜は動きを止めた。
「よっちゃんが、泣いて、る。みんなが、泣いてる。」
(それが、どうしたの?)
冷たい言葉。
ズキンッズキンッ頭が痛む。
「ずるいね、貴女…」
(何をいって!)
「本当は気付いてるのに、見えないふりをする。
口があるのに、話そうとしない
耳があるのに、聞こうとしない
感情に蓋をする。」
(だから何をいっている!)
「貴方が拒絶している世界の話をしてるの!
世界は、こんな二色だけじゃないよっ。
自分の目の色、自分の髪の色!
私と全く同じならわかるでしょ?」
(………)
「わからないわけ無いよ。多摩川が黒いわけないもん。
這いつくばった地面が白いわけない。
口に入れた雑草もちゃんと色があった筈だよ?
ちゃんと貴方は知ってるよ?」
頭の痛みが消えた。
(覚えて?)
驚いた様子の四歳の千夜
「覚えてるよ?泥だらけの四歳の私。」
どうしてか抱きしめたくなって
四歳の私を抱きしめた
(はなして)
「イヤだ。」
これじゃ、どっちが子供かわからない。
(なんなの……?)
そういいながらも頬を赤くする小さな子
ツン…デレ?
抱きしめた手ははなしてあげない。
この子は知らないから、
こういう温もりを…
「ねぇ、私が忘れちゃったならさ
貴方が教えてくれないかな?」
(なんで?)
「貴方は私だから。」
なんで笑うの?
わたし、ここに閉じこめようとしたのに、
(なんで笑えるの?)
わからない。
自分なのに、わからない。
どうして、私に微笑むの?
ーー私は、貴女を殺しに来たのに…
貴女の望みだったから、
殿内をけしかけたのは、私。なんだよ?




