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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
最後の戦い
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死亡の知らせ


千夜を抱きしめた沖田



「……無事に帰ってきて。」


ぶっきらぼうにそう言った沖田。それが、彼の今の精一杯。


「はい。」


その返事をして、千夜は、戦闘機に乗り込んだ。


そして、飛び立ってしまった戦闘機を皆で見上げる



「あー。ハートだ!」


「ハート!父上にだ!」


戦闘機の機体から発する雲で、千夜が空に描いたハート


「……本当、やってくれるよ…」



沖田は、それを見上げながら声を漏らす。


『何?これ。』


『ハートって言うんだけどね、英語で「心」「心臓」って意味だけど、好きな人にハートを贈ったりするんだ。』


『へー。』


『この時代の日本では使ってる人いないから

暗号にしようか?』


『僕と千夜だけの?』


『そう。愛してるって意味で』



にこやかに彼女はそう言った。


「……本当に、君にはかなわない……


僕も、————愛してるよ。

絶対、無事に帰ってきてくれなきゃ、許さないんだから。」




空に描かれたハートを見つめ、沖田は静かに呟いた。


千夜が居なくなって、6か月という月日が流れた。手紙は数回届いたが、清の治安は思っていた以上に治安が悪い様子で、日本人だとわかると惨殺される事もあるらしい。


治療の方は順調に進んでいると一か月前に届いた手紙には書かれていた。


子供達は、屯所でみんなに遊んでもらい千夜の居ない生活にも、なんとか慣れ始めた頃、


清から一報が入ったのだった。


「はぁ?そりゃ、なんかの間違いだろ?」

「官邸から、沖田千夜、死亡の一報が入りました。」


皆「っっっ! ! !」



「なんかの間違いだっ!もう一度確認してっ!」


「…………はい。」


「ちぃが……死んだ?なんで、どうしてだ!

ちぃは、清の奴らを助ける為にっ!


うわぁーっ! !」


気が動転して、暴れだす藤堂を原田と永倉が押さえつける。


「平助っ!落ち着けっ! !まだ、そうと決まった訳じゃねぇ。」


「そうだ。誤報かも知れねぇだろ! ?」


「…………ちぃ。」



ズルッと崩れ堕ちた藤堂


「山崎っ!中村っ!お前らなんかわからねぇか?」



「……すいません。こんな離れた事ないんで

何も、わからないです。」


「俺もや。」


「クソッ!」


柱を殴りつけた土方。


沖田は力なく、そこに座っているのがやっとだった。


藩邸からの一報。それから一週間がたった。


「沖田千夜、死亡確認された様です。」


力なく、その報告を、受けた。



その日、珍しく慶喜が屯所へとやって来た。


容保も連れて……。



広間に集められた新選組


「徳川椿。いや、沖田千夜の遺品だ。」



並べられた見覚えのあるモノ


「……コレ…」



沖田が手にした桜色の手拭い。沖田からの初めての贈り物。それは、所々焼け焦げ、ススだらけ。


彼女がコレを手放した事は無い。



「……千夜…」


手拭いを抱きしめ、涙を流した沖田。



「……遺体は?」


首を振る慶喜。



「椿の診療所にな爆弾を投げ込まれて、遺体は、判別がつかない。」


そっと立ち上がる沖田


「……総司?」


「…すいません。少し、1人にさせて下さい。」


そう言って沖田は部屋を出た。


その日の夜、沖田は夕餉も食べず、皆が寝静まる頃、中庭へと歩んだ。


空を見上げ、綺麗な月を涙を流しながら見つめる。そして、


刀を手に、その刃先を自分へと向けた。



「君が居ない時が————こんなに辛いとは思わなかった。

————今、僕も君の元に行くから……。」


すでに、絶望の中に居た沖田。


一報が入ってから、ずっと生きた心地がしなかった。


『君が死ぬ時、僕も共に死ぬ……』


あの頃の感情しかなかったのだ。


「僕は、君とずっと一緒に居たい。」


そう言って、刀を振り上げた時だった。


「父上?」


ビクッと刀を持つ手が止まる。声の方に視線を向ければ、娘の姿。


「危ないよ?刀、自分に向けたら。」



子供達を置いていくなと、千夜には言っといて

自分は、何をしている?


カランッと刀が沖田の手から滑り落ちた。


「……千歳……」

「どうしたの?」


千歳の後から勇司の姿


「……勇司……」



僕は、死ねない……。ごめん。千夜。

やっぱり、————あの約束は、果たせない。



沖田は、我が子を抱きしめたのだった。沖田はそれから、たまに、千夜が生きている錯覚を起こす様になった。



「平助、千夜は?」

「……えっと、厠かな?」


「……そう…」

「…………。」



また別の日


「土方さん、千夜見ませんでした?」

「……総司……」


「?なんです?」


「いや、ちぃはココには来てないぞ。」


「父上ー。携帯あったー。」


我が子が手にしてる携帯の待ち受けを見て

涙を流す。



「……千夜……」


そこには家族四人で撮った写真。


皆、笑顔で写っていた。



「父上、母上の写真見よー。」

「見よー!」


正直、見るのは辛い。2人の我が子の誘いに、沖田はうなづいた。


「そうだね。見ようか。」


子供達を膝に乗せ、携帯を操作すれば、そこには、笑顔の千夜が沢山居た。



「……千夜……」



「父上、見てみて。コレ押すとね、動画見れるよ。」


ピッと触れた画面


『ほら、芹沢笑って?』


『突然笑えるか!クソガキが!』


芹沢の頬をつねって伸ばす千夜こんな事、彼女しか出来ない。懐かしい声。次から次に動画が再生される。



涙を流しながら、動画を食い入るように見る沖田 。土方は、子供達を別室に連れて行った。



誰が死んでも、月日は流れる。

千夜が死んだ日から 2年もの歳月がたった。


世の中は目まぐるしく変わっていった。千夜が考えた農協も運営しだした。


西郷、高杉、桂、吉田。新選組沢山の人が力を合わせて日本を平和な国にしていく。



年明け、木戸と伊藤は、一体の女神像の前に居た。


「清にはいつ行く気?」

「出来れば早い方がいい。」



「平和の象徴だとはいえ、千夜そっくりに作らせたのに理由はあるの?」



「……ふ!誰も文句は言わないだろ?戦争を止めたのは彼女なんだからね。」


「自分の感情はないと?」


「意地悪だね?木戸は。俺だって、まだ好きだよ。そういう、君だって…」


ギロッと睨む木戸。

おー怖っ。と言って、伊藤は口を閉じた。



「だからって毎日来る事ないだろ?公務をしろ!公務を!」



「はい。はい。木戸、明後日までに仕事は終わらせる。その後、清だ。」


「終わればな。」


「じゃ、頑張んなきゃなぁー。」



伸びをしてそんな声を出した伊藤。


「沖田の為に?」


「……まぁ、あいつも嫌いじゃないからね。」




そして、その二日後


伊藤と木戸は、清へと旅立ったのだ。

清の視察として————。












































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