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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
最後の戦い
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山賊と小銃

————狙いは、私?


パンッパンッと聞こえた銃声は、小銃の銃声にしか聞こえない。まだ、小銃なんて普及してない筈なのに………。


さっき見えた、あの人なら、手に入れられる、代物だ。日本は、戦争を起こしたい。

その為には……私は、邪魔な存在————。


そういう事?


「千夜っ!何してるの!逃げるよっ!」


グイッと、沖田に腕を引かれ、そのまま、走った。山崎は、すでに馬の上に乗せられ、後は吊り橋を渡るだけ。


小銃を持ってる山賊がほとんどだが、弾は、人には、当たらない。不慣れなのか、小銃の性能が悪いのか、微かに火薬の匂いがした。


何処から、先に目を向ければ、その先は、吊り橋。


何で、吊り橋のあたりには山賊が居ないのか?


……どうして……吊り橋を渡った先にも山賊が居ないのか?


答えなんて簡単。私達が、吊り橋を渡れないから————。



「止まってっ! !」



突然叫んだ千夜。先頭を走るのは、山崎を乗せた馬と土方だ。


土方が止まっても、何故か、馬が止まらない。


考えてる時間もない。千夜は、近くに居た馬に飛び乗り、吊り橋前までかけた。


土方も、山崎が乗る馬の手綱を引いてくれるが

止まらない。土方が引きずられるほどに、馬のスピードが速くなっていく————。


その馬は、千夜の馬だ。


「……ごめん。」


バンッ


山崎が乗った自分の馬の足をコルト・パイソンで撃つ。


山崎の体が馬から落下する。それを横目で見ながら、千夜は、馬の手綱を引いた。目の前には、吊り橋。吊り橋に近づけば近づく程、火薬の匂いが強くなった。


ドカァーーーン! ! !


そして、吊り橋が爆破した。


そして、沖田らが千夜の乗ったはずの馬を見れば、そこには、馬が立ち止まってはいるが、千夜の姿はなかった————。


「……。千夜?千夜っ! !」

「ちぃ!」


馬のあたりを探しても千夜は居ない。


「……うっ……」


「山崎君っ?大丈夫?」


ゆっくり起き上がる山崎


「……ちぃ…は?」


見渡しても千夜の姿がない。


「……頭が……。ちぃ…?あかん。」


ユラユラと必死に立ち上がる山崎。


その間にも、沖田と土方らが千夜の行方を探している。山賊と戦っているのは斎藤、高杉、伊東だ。


「……ちぃは…崖の下や…」


「……え?」


「頭打っとる……」


視線が定まらない山崎。


その言葉を信じた訳ではないが、付近に居ないとなれば、その可能性は高い。


原田と永倉が、吊り橋の落ちた付近を覗き込む。


「————千夜っ!!!総司っ!土方さんっ!」


「千夜が、千夜が————崖の下にっ! !」


原田と永倉の言葉に慌てて崖下を覗き込む沖田と土方。

崖下には、本当に頭から血を流し、倒れた千夜の姿があった。


「千夜っ! !」


うつ伏せに倒れた千夜は、微動だにしない。


「……俺が……助けに…」


「山崎君、無理だって!その体じゃ……!」



健康体の山崎でも危険が伴うのに、熱を出している彼には、もっと過酷な状況。


行かせる訳にはいかない…


「僕が行く。」


そう名乗り出たのは沖田だった。



「待て、行くって…この崖をどうやって!」


「……木に縄を二本回して…

一本は、自分に…もう一本は、下に着いたら、ちぃに……っ……はぁ……


クナイを崖に刺して足場に……。残りの人は、縄を引く…」


説明するのもやっとの状態の山崎



クナイで足場を作っても、落ちてしまう可能性が高い。その為、縄を引き重力を極力かけないようにせねばならない。



山崎の指示通りに、沖田が崖を下る事になった。下りる時にクナイを正確に刺さねば、もし、縄が切れてしまったら、崖なんてよじ登れる訳がない。


悪戦苦闘しながら、千夜が倒れている岩場まで下りる事が出来た。


真下まで縄が足りなかったが、崖の突き出た岩場に丁度落ちた千夜。

そのおかげで、縄の心配は要らなくなった。


「……千夜?」


頭から流れる赤。身体中に擦り傷も目立つ。沖田もその姿に、恐る恐る手を伸ばした。


頭を撫でれば、手には赤がベットリとつく。


「……目覚ましてよ…」


浅く息をする彼女が、目を覚ます訳はなく、

出来る治療なんて限られていた。止血と傷口に晒しを巻く。それしかやってあげれない。


千夜の身体に縄を巻き、キツく縛った。沖田は、彼女を一度抱きしめた。


「……死なせない。絶対…」


彼女を背負おうとしたら、ハラリと落ちた手拭い。沖田が贈ったその手拭い


「……まだ、持っててくれたんだ…」


少し苦笑いをした沖田。


自分も千夜から貰った鈴を引き上げる合図として振り鳴らした。


もう何年前の贈り物か……。


初めての贈り物が手拭い。簪とか櫛とか、散々悩んだ贈り物。


その手拭いの色は、桜色。彼女の髪と同じだった。


その手拭いを千夜の腕に縛り付け、下ってきた時のクナイを頼りに登っていった。


引き上げてくれなきゃ、到底登るのは不可能……。


背におぶった彼女の浅い呼吸を感じながら、沖田は、崖を登りきったのだった……


「……ちぃ……」

「……千夜…」


そんな声が男達から上がる


伊東らが捕縛出来た山賊は、たった3人。


自刃した者が5人


残りの山賊はバラバラに逃げ出してしまった。


自刃した者は初めに出てきた山賊であった。

山賊に見えない男達。山賊が自刃……?そんなのは聞いた事がない。


何故、銃を持っていたか、何故自分達を狙ったのか、捕縛した3人は「わからない。ただ、頼まれただけだ。」


そう口にした……


結局、吊り橋を壊されてしまった為、

一つ前の宿屋まで戻り、その周辺の警察署に男を引き渡しただけだった。


宿屋に医師を呼び、山崎と千夜の治療を頼んだ

皆、気が気ではなく、右往左往する。


襲撃された理由すらわからない。


ダンッ


その音に皆が振り返った


「……どうして、いつも、ちぃなんだよっ!」


土方の悲痛な声。頭から赤を流し、意識がなかった千夜の姿。


皆、同じ思いだった。



しばらくして、医師が部屋から出てきた。


「先生っ!千夜は?千夜は、大丈夫なんですかっ! ?」


赤く染まった沖田が医師に詰め寄る。力無く首を振った医師


「……あと、2、3日もつか…」

「……そんな…」


沖田は、医師を突き飛ばし、部屋へと駆けた。

千夜のすぐそばに崩れる様に駆け寄り、千夜を揺らす。


「……千夜?ねぇ、起きて?千夜っ!」


傷を負った千夜を揺する沖田を原田と永倉が抑える。


「総司っ!」


その声に、沖田は静止して、その場に崩れ落ちた。


「なんで……千夜が………どうして?」


座り混んでしまった沖田の目からは、涙が流れた。その痛々しい姿を直視出来ず、男達は、声を押し殺し、人に見られるのなんて構わずにその場で涙を流した…


月が綺麗な夜


宿屋からは啜り泣く様な声が部屋から聞こえたのだった…



そして、翌日の昼。

慌ただしい音が宿屋に響いた



スパーンッ


開け放たれた襖


「千夜さんっ!」

「椿っ!」


中村と慶喜の登場に、驚きを隠しきれない沖田ら。連絡なんかしていない。そんな余裕すらなかったから————。


だから、2人が現れるはずが無いのだ。なのに千夜に駆け寄った2人……。


「……どうして…」


「俺の中には、千夜さんの力がある。だから、わかったんです。千夜さんの身に危険が迫った事が…」


そういえば、昨日山崎が、千夜の容態を言い当てた。崖の下に落ちた事も————。


























































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