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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
最後の戦い
252/281

江戸の新しい屯所

ガヤガヤ


「とりあえず荷物を運べっ!」


新たな屯所に着いた土方らは、御所の様なデカさに唖然とし、やっと、言葉を発した。


土方らが、新たな屯所に着いたのは夕暮れ時の事であった。


平隊士が、馬車に乗せて持ってきた荷物を振り分け、土方の部屋へと置いた。自分の荷物と共に置かれた千夜の鞄。それは、黒いスーツケースだ。それを見つめ、スーツケースにため息を吐く。

こんな、目立つ物を持たせる訳にはいかなかったから、運ぶといったのは、自分なのだが、中は金な訳で、重いに決まっている・・・。


副長室に荷物を運び終え、新しい屯所を見て回ろうと襖を開けたら、そこには、沖田と千夜が寝ていた。



「先、着いたんだな。ふっ!ったく」


そう言いながらも、笑う土方。


彼は、よく笑う様になった。新選組は、幕府に認められた。全てにおいて、睨みを効かせずに居られるのだ。土方は、色んな、しがらみから解放された訳だ。


薄手の布団を二人にかけてやる。


「ちぃ、お前のおかげで新選組は、認められた。ありがとうよ。」


寝てる千夜から返事が有るはずも無く、しばらく寝かしてやるかと部屋から出た。


よほど疲れて居たのか、夕餉の時間まで沖田と千夜は起きて来なかった。


その日、引っ越し祝いだと、江戸城に呼び出され、宴が行われた。


「引っ越したら蕎麦でしょ?」

「寿司じゃ嫌か?」


「・・・いいけどさ。」


相変わらずデカイ寿司・・・



お寿司を食べ、お酌をする。場所が変わっても

いつもと変わらない宴


伊東もお酒を呑んでいた。

そっと、徳利を向ければ


「・・・千夜さん。ありがとうございます。」


杯をニッコリと差し出した彼。それに酒を注ぐ。


「お前は、変わった奴だな。俺は、許される事は、何もしてないのに・・・」


寂しそうに言う伊東


「綺麗な人間なんて居ませんよ。間違いは誰でも、起こしてしまうんです。


貴方が特別な訳じゃない。

心配しなくても、これから、頑張って働いて貰いますから。」


クスッと笑う千夜に、苦笑いを浮かべた伊東。


「かなり、頑張らないとな。」

「頑張って下さいね、総長。」


ドンッと肩を叩いたら、伊東は、ゴホゴホッと咳き込んでしまった。



これは、あれだね。逃げるしかないねw



伊東を放置し、お酌をしていく。


「千夜、平気?」

「あ、総ちゃん。」


彼女はいつまでたっても総ちゃん。最近呼び捨てになった僕が言うのも可笑しいが・・・



夢の話も聞いた。

新選組の幻も結局なんだかわからない。


不安ばかりが襲う。


「ん?どうしたの?難しい顔して。」


「……」


「総ちゃん?おーい。」


「……」


何も言わない沖田。千夜は、彼の頬を指先でつまみ、横に引っ張った。



「…痛いよ。」


千夜が、沖田の頬を掴みビヨーンっと横に引っ張り、沖田がようやく、不満の声を漏らした。


「難しい顔してるからだよー。」


ケラケラ笑う彼女。


僕より、怖い筈なのに、彼女は、そういう顔を見せない。


「だからって、つねらないでよ。」


呆れた沖田の声に、また、彼女は笑う。いつだか桂が言った。

彼女は、日本の夜明けの光みたいだ。と、————でも、ワガママだと罵られ様と、僕の隣で笑っていて欲しい。


彼女を幸せにしたい。


もう、戦わなくてもいいのに、彼女は、まだ戦っている。————ただ、日本が平和になる様に・・・


町の様子を見て人の話を聞き、此処に来るまでに千夜の言うノートは、三冊にもなった。


罵声を浴びせられても、彼女はずっと、言葉を受け取り、時間をかけてでも話を聞いた。攘夷派が無くなった訳ではない。


ただ戦わないだけで、受け入れられ無い人だって居る。


そんな、しがらみから、どうやったら、君を解き放ってあげれる?


宴が終わった帰り道。そんな事をずっと考えていた。


ーーーー

ーーー

ーー



江戸の新たな屯所に移り住み、早くも二カ月が経とうとしていた。


今日は、姉さんに会いに行く。しかし、千夜は死んだ事になってる訳で


「つ、椿。」


「ぎこちなくない?」


「だな!総司お前しっかりしろよ!」


名前を呼ぶ練習をする、沖田の姿があった。



「あのね、千夜っていつも呼んでるの!

いきなり、椿って呼べないよ・・・」


「言えたじゃねぇか。」


「土方さん!他人事だと思って!」


実際、他人事だ。


「まぁ、なんとかなるだろ。」


「ちょっと!なんで、そんないい加減なんですか?千夜、土方さんの家にも行きたいって言ってましたよ?」


「はぁ?聞いてねぇよ!」



「言ってたぞ。土方さんに聞いたら

『わかった。』っていったし ・・・

俺の目の前で、やりとりしたんだから。」


藤堂がそう言う・・・



「上の空だったんじゃないですか?」


そう言われると言われた様な・・・



「マズイ!将軍は、籠出すとか、言ってた!」


「はぁ?籠って・・・僕、家に行くだけなのに

このナリじゃダメなんですか?」


慌てだす二人


「支度できたか?」


将軍の声に、体を停止させた男達


「いえ。まだです。」


スッ


「なんだ、まだか?椿は支度出来たのに。

椿、入れ。」


「ヤダ。」


はぁっとため息をついた将軍。



「ちぃ、似合っとるて。」


「本当にこれで行くの?着物重いよ。」


山崎との会話は聞こえてくるが肝心の彼女の姿は見えない・・・



「椿っ!」


「わかったよ・・・」


ゆっくり現れた千夜の姿に


部屋の中の男達は、目を丸くする・・・


太夫の千夜とは違う。髪の結い方や化粧


着物まで・・・


「千夜、綺麗。」


うわ言の様に自然に沖田が言う。


満足そうに慶喜が笑う


「本当にこれでいくの?」


「に、似合ってるぞ。」


何故か、噛む土方。


「ちぃ、スゲェ綺麗。ありがとう。俺のために。」


「おい!平助、君の為じゃないよね?」

「総司には勿体無い!」


「僕の嫁だってば!」



言い争う二人にため息を吐いた

「言い争う前に支度したらどうだ?」


慶喜に言われてハッとする。

バタバタと支度をしに部屋を出て行った沖田と土方。


「土方は、あのままでもいいんじゃないか?」


「あぁ。ちぃが、土方さんの家行きたいって言ったからだよ。」


「ああ、そうか。土方の家で育ったからな。」

「顔見たいだけなんだけどね。」


「まぁ、お前なら大丈夫だろうが、今日は徳川椿だからな。」


「はい。」


「山崎、護衛頼む。」


「御意。」


慶喜は忙しいのか、その後、屯所を後にした。



「でも、本当綺麗だなぁ。ちぃって、わかんねぇ。」


「わかんないって・・・コレで籠乗っていくの、ヤダ。」


「また、そんな事いうて・・・。歩いて行けへんやろ?」


「たくし上げていいなら・・・」


「あかんっ!」



当たり前だ。徳川を名乗るのに、着物をたくし上げ歩いていくなど許されない・・・


やっと、沖田も土方も支度をし


葵の家紋が入った籠にそれぞれ乗り込む。



山崎は千夜の籠の横に着き、沖田の家に向かって歩み出した。



ユラユラ揺られ、ついたのは昼頃の事であった。


「ちぃ、平気か?」

その声に、籠の戸が開かれた。


「うん。大丈夫。」


と、千夜は、答え、山崎の手を取り籠から出た。まさか、徳川の籠が来るとは思っていない村の人達は何事だと人だかりを作る。


「ちぃ、ええな?今から徳川椿やで。」


「わかってます。」


こりゃ、心配は要らへんな。

と、山崎は、男二人に目を向けた。


「おいおい、人集まりすぎだろ?」


「徳川家が此処に来る時点でおかしいんですって!」


「お前の嫁だろ?なんなら、俺のにしようか?」


「バカなんですか?貴方は、渡しませんからね。」


「名前は?」


「つ、椿です。」


「・・・大丈夫かよ、お前・・」


ガチガチな沖田に、心配の目を向ける土方だった。そして、山崎もため息を吐いた。心配なのはあっちやな・・・と










































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