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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
最後の戦い
240/281

焦る気持ちと守りたい命

天狗党の乱


私は、詳しくは知らない。

だが、投降した天狗党の扱いは酷いモノだった・・・


永原は、投降した天狗党員を諸寺院に収容し、かなりの厚遇をもって処した。しかし、田沼意尊率いる幕府軍が敦賀に到着すると状況は一変する。


関東において天狗党がもたらした惨禍を目の当たりにしていた意尊らはこの光景に激怒し、加賀藩から引渡しを受けるとただちに天狗党員を鰊倉(鰊粕の貯蔵施設)の中に放り込んで厳重に監禁した。


小四郎ら一部の幹部達を除く者共には手枷足枷をはめ、衣服は下帯一本に限り、一日あたり握飯一つと湯水一杯のみを与えることとした。


腐敗した魚と用便用の桶が発する異臭が籠る狭い鰊倉の中に大人数が押し込められたために衛生状態は最悪であり、また折からの厳寒も相まって病に倒れる者が続出し20名以上が死亡した。


この時捕らえれた天狗党員828名のうち、352名が処刑された。


元治2年2月4日、武田耕雲斎ら幹部24名が来迎寺境内において斬首されたのを最初に、

12日に135名、

13日に102名、

16日に75名、

20日に16名と、

2月23日までに斬首を終え、


他は遠島・追放などの処分を科された。


武田耕雲斎の遺族は皆処刑され、三歳の幼い命さえ奪われた。


攘夷は、徳川幕府を守る為にある。

徳川家康が掲げた尊王攘夷


それを守る為に・・・



天狗党は、徳川家の被害者だ。

だったら、手を下すのは、子孫である私の役目


開国をし同盟国にしたのは————私だ。


例え、未来にそうなったのだとしても、早めたのは自分なのだ。


刀を振るい、赤を纏いながら斬り続ける。


「ちぃ、交代だっ!」


気づけば夕方で、気づけばまわりに人が沢山倒れていた。


倒れた人に手を合わせることしか出来ない。



同じ水戸の人間。


国を愛しているのは変わらない。なのに斬らねばならない。助けたいと思ってはならない。


彼らの貫く誠は、攘夷・・・。



開国しても、日本は無くならないのに、そう唱えても、彼らの意思を変える事は出来なかった


クッ


「泣くな。」


頭を撫でる土方・・・


「あいつらは、戦って死んだんだ。自分の信念を貫いたんだ。まだ終わりじゃねぇ。

————泣くんじゃねぇよ。」



赤く染まった体を抱きしめる




京意外から来た攘夷派までもが 、天狗党に加勢してしまい3,000もの兵力になった。


倒しても、倒しても、湧き上がる兵達。


家茂が死ぬ日が近づくにつれ、千夜から余裕が無くなっていった————。




「敵陣を吹き飛ばす? !」

「ちぃちゃん、何、考えてんの!」


「敵陣は一つは制圧したが、残りは四つもあるんだぞ! !」


「これ以上争いを長引かせる訳にはいきません。兵も隊士も疲れが取れない。


まだ、岩倉らも何処に潜んでるかわかりません。いつ攻撃されるのかわからないんですよ?

天狗党を倒して油断してるところを狙ってくるかもしれない!ならば、天狗党だけでも先に・・・————潰します。」



「何をあせってんねん、ちぃ。」


その場に居た山崎が声を出した。


「焦ってなんてない!」


「お前は、普通の時は、潰す、殺すは言えん。

それとも、また、媚薬飲んどんのか?」


ビクッと体が反応する・・・


私のバカっ!


「薬はもう無いし、薬なんか飲んでない。」

「だったら、何、焦ってる?」


「焦ってないよ!」


しつこい・・・


「じゃあ、沖田さんは知ってるんやな?」


総ちゃんを見れば、挙動不審・・・


バレバレだよ?はぁ・・・


「わかった。話す。」


幸いにもというべきか、将軍も慶喜も居ない。


龍馬と、中岡はずっと、いえもち君の護衛に

長州の四人は天皇の護衛をしている。


千夜は、口を開いた。

七月二十日に亡くなるのだと・・・


「将軍が・・・亡くなる。」


近藤さんの顔が強張った。


「お願いします。いえもち君を助けたいんです。もう、日がありません。

兵力を落とし、士気を下げれば・・・」


「ダメだっ! !」


声を荒げる土方。爆弾を落としたとしても

危険な事には変わりない。


「一人で行かないと言えば、許可を出してくれますか?」


千夜とて、引く気もない。兵が疲れてるのは事実。長引く戦、減っていく兵。負傷者は後を絶たないのが現状だ。


早く終止符を打ちたいのは皆同じ。


ガシガシ頭を掻く土方


真剣な千夜の目が土方をとらえたまま、


その目は苦手なんだよ・・・


心の中で悪態をつく。


「歳、俺はいいと思うがな。」

「私もです。」


近藤に続き、山南までもが敵陣に爆弾を落とすのを賛成した。


「俺は、別にそれ自体がダメだと言ったわけじゃねぇ。四ヶ所一遍にやるのが反対なんだよ!」


「誰も一遍に、吹き飛ばすなんて言ってないよ?攘夷派もいるし・・」


「千夜、お前まだ捕縛する気か?」

「そうだよ。ダメなの?」


また、問いを問いで返す千夜


「総司!お前の嫁だろ?どうにかしろよ!」

「えっ?」


突然振られて対応に困る沖田。困った沖田はスルした。


「一遍に吹き飛ばさなきゃいいと言うことですね?」


「ああ。山崎、お前がついてけ。観察が行った方が足がつかない。」


「御意。」


夜になり山崎と敵陣へと向かった。

木に千夜の念じた紙をペタペタと貼っていく


「何してんや?」

「まぁ、見てればわかるよ。」



『天狗党並びに、攘夷派のモノに告ぐ。————直ちに降伏せよ。』



千夜の声が貼った紙から、再生され、まるでスピーカーの様に大きな声に変換された・・・


その声に慌てふためく天狗党達


声がする方に銃を放つが、それらが千夜や山崎に当たることはない。


止まらない攻撃・・・


「ちぃ、捕縛は、無理や。」


そう判断するしかなかった。


クッ


手に持った爆弾に火をつける


死んでいい人なんか、居ないのに。

私は、結局殺すことしか出来ない・・・。



そして、敵陣へと爆弾を投下した・・・



ドーーーーンッッッ! ! !


爆風が千夜と山崎の体を凄まじい速さで吹き抜ける。


「ちぃっ!引くでぇ!」


燃やしていく。赤と煙に覆われた敵陣を千夜は悲しそうに見つめ、山崎とその場を後にした。


一晩で2箇所を爆破し、御所に帰る。



足取りは、酷く重いモノだった。


自分で言い出した事だ。


だけどこんなの、殺戮と何が違う・・・?


同じだ。私がしてる事は 、殺戮・・・



泣かない。自分がした事だ。泣いても死んだ人は戻らない。


月を見上げただ願う。死んでいった者たちの冥福を・・・


そんなものは望まれないのを知りながら、それしかできないんだ。私には————。




次の日、千夜は、天皇に会いに行った。

そして、突然、頭を下げた。


「お願いします。錦の御旗を作っていただきたいっ!」


目を丸くする天皇並びに家臣達


そして、天皇を護衛している長州四天王までも、口をポカーンと開けたまま固まった。


「錦の御旗っっっ!」


「お願いします。被害をこれ以上大きくしたくありません。

錦の御旗は、此方の士気も上げます。

どうか、お考えいただきたい。」


畳に頭を擦りつけるように、千夜は、頭を下げ続ける。


「わかった。家茂と慶喜に話してから検討する。」


「ありがとうございます。」


ぎゅっと唇を噛みしめる。家茂の名前を聞くたびに、不安ばかりが押し寄せた————。





















































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