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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
最後の戦い
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椿と千夜

千夜を御所に連れて行き、布団に寝かせる。

沖田の着物は、赤く染まっているが、今は、それどころじゃない。


はぁはぁと、息を荒くする千夜。


「ちぃちゃん・・斬られて無いよね?」


意識はある千夜は、コクコクと頷くだけで言葉を発し様とは、しなかった。


「なんで千夜が苦しんでんのっ?」


慌てて駆けつけた長州の三人が声を荒げる。


そんな事を言われても、新選組幹部がわかるわけない・・・。


慶喜も、慌てた様子でやって来た。


「椿っ!」


しかし、彼は、そう言った後、ピタリと足を止めてしまった。

ジッと、千夜を見た後、慶喜が刀を引き抜き、それを千夜に突きつけた。


「一橋公っ!」


妹である千夜に刀を突きつけた事などない・・・何がどうなっているのか?


「俺の目は、欺けないっ!沖田、お前自分の妻も見分けれないのかっ!」


怒鳴られた沖田・・・


だが、目の前に居るのは、桜色の髪の自分の愛した女で間違いは無いはず・・・


布団に座る形で、慶喜から目を逸らした千夜は、沖田の胸に寄りかかった。まるで、甘えるように・・・


「総ちゃん。」


沖田総司は、女が嫌い。千夜以外の女には・・・


ぞわぞわっと感じる寒気。


「————君、誰?ちぃちゃんはっ!」


沖田は、咄嗟に、腕の中の女を突き飛ばした。


「総司が、ちぃを突き飛ばした・・・?」


目の前の光景を解説する藤堂。


「何がどうなって・・・」


皆が困惑する中、女が声を高らかに笑い出した。


「クククッ。アハハハッ。


あーあ。折角、大人の姿になれたのに、まさか、バレるとはね。」


ゆっくり立ちあがる桜色の髪の女。


「椿を何処へやったっ!」


「さぁ?手当てしていた男達に連れさらわれたんじゃない?」


「何がどうなってんの?」


原田が永倉にたずねるが


「俺に振るんじゃねぇよ!」


わからないのは、永倉とて同じな訳で、怒鳴るしかない。


「あれが、ちぃじゃねぇのは確かだ!」


藤堂も刀を構えた。


「クククッ。殺す?私を・・・」


千夜と全く同じ姿の女・・・慶喜の向けた刀に近づいていく。


クッと男達は歯を噛み締める



「アレは、私の人形なんだよ・・?


折角、この世界に飛ばしてあげたのに、あの子は弱くなるばかり・・・


私を助けようとしたんだよ?

笑える。そんな事したら、自分が消えちゃうのに・・・ねぇ?


過去に、一橋家によって封印された私をあの子は解放したんだよ。バカだよね。まぁ、記憶がなかったからねぇ。」


千夜の姿をしていようと、全く性格の違う女の姿に男達はどうしていいかわからない・・・。


「テメェはわ誰だっ!」


「私?私は、椿・・・徳川椿。ねぇ、兄上。」


ニヤリ笑う女・・・


「お前の兄上では無いっ!」


刀を振り上げ力任せに振り下ろす。

「ケイキ。」


ピタッと止まる刀・・・


中身が違っても姿形は、千夜と同じ。斬れる訳がない・・・


「クソッ」


「あれ?あれ?

ケイキ、此処を刺せば死ぬよ?」


自分の心臓にケイキの刀を導く・・・


「刺さないの?」


刺せないのをわかっていて挑発する女


「刺せもしないのに、刀なんか抜くなよ・・・」


低い声が部屋に響き、すぐにドスッと鈍い音がして慶喜が倒れた。


「一橋公!」


「ツッ・・・」

口の端から流れる赤。

それを慶喜は、ペッと畳に吐き出す。



「へー。意外に強いんだ。」


自分の体を確かめるように手を動かしたりする女・・・



「・・・ちぃちゃんを何処にやった! ! !」


「知らないね。」


冷たく言い放った女


「どっちみち、あなた達に私は、斬れない。 」


「それはどうやろな。」


屋根裏から現れた黒装束の山崎の姿。女が一歩後退する。明らかに先ほど迄の余裕のあった態度では無い・・・


「山崎、椿は?」


「無事です。」


ホッとした慶喜。他の人達も例外では無い。


「どないした?自分は、斬れないと随分、強気な事言っとったけど?急に大人しなって・・・」


鋭い視線を女に向ける山崎。


「チッ、山崎・・・」

「何?何で急に態度が変わったの?」

「山崎が怖いのか?」

「なんで俺に聞くの?」


三バカによる疑問ばかりの言葉が部屋の中に響く。山崎が一歩近づけば女は半歩程後退する。


「俺が怖いん違うわ。こいつは俺の持ってる札が怖いんや。」


「札っ?」

「封じられてた札や。」


ニヤリ笑った山崎。女の顔は、強張った・・・



「千夜さん、治療が先です!」


「何で、着物迄取られなきゃいけないの!」


「千夜さんっ!下着みたいな格好で暴れないで下さいってばっ!」


下着みたいって、キャミと短パンだよ・・

わかるわけないか


「あんまり騒がないで下さい。平隊士にこの姿を見せる訳いかないんですから・・・」


ブスッとする千夜


「何があったんですか?この傷・・・」


千夜の腹に刺された傷があったそれを指差しながら中村は聞く。


「攘夷派の手当てをして、元の場所に戻った。

だけど、新選組は何処なのか、話らなくなって、とりあえず、捕縛を繰り返して居たら、

救護しようと幕府軍から離れた瞬間、刺されたんだよ・・・」


「で、気失って着物を取られたと?」


「そう。」


「なんで、貴方は自分狙われるとわかっていて、単独行動をするんですか?心配するこっちの身にもなってくださいよ。山崎さんが見つけてなかったら、出血が多すぎて死んでましたよ?わかってます?大体、千夜さんはね・・・」


中村小姑が現れた・・・


はぁ


「ちゃんと聞いてください!」


こんな場所で、中村の説教を受けている場合では無い・・・


しかも、平隊士が引き返してきてる為に新選組に与えられた部屋へは行けない。


今、いる場所は多分、物置・・・屯所の部屋より広いが・・・


そんな場所に何故、居るのか?私の格好の所為なのか?考えてもわかんないんだけど・・・


場所が場所だけに着替えなんか無い訳で、

まだ3月入ったばかりで、寒くて堪らない・・・


当たり前だよね。キャミと短パンだけしか着てない訳だし、案の定とでも言うべきか、説教中にブルリと身体が震えた。


「はぁ・・・すいません、寒いですよね?」


「寒い。物置に着物なんか無いよね?」


腕を摩りながら、物置を物色する千夜に中村は、懐に入れてあった羽織を千夜の肩にかけてやった。


「えっ?何で羽織持ってるの?」


新選組の羽織は、今回は着用しない。

皆、腕に腕章を巻きつける事になっていた。

だから、誰も羽織を持ってきてる隊士は居ない筈だ・・・



「これは、俺のじゃないですよ。

千夜さんなら分かるんじゃないですか?


連れて来たかったんですよ。新選組の土台を作ってくれた、あの人を・・・」


「・・・芹沢鴨。」


羽織をぎゅっと抱きしめる


「正解です。」

「ありがとう。中村。」

「千夜さんの父上ですから。」


そう言ったら千夜さんは笑った。嬉しそうに涙を流して・・・


























































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