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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
下関戦争
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祝言

水戸藩が藩政を正してくれる約束をし、翌日、水戸をたった・・・。


そして、また、船で揺られ大阪まで下る。

千夜の船酔いは相変わらず健在。

3日でなんとか、大阪に着いた・・・。


「総司、ちぃを支えとけよ!」

「わかってますってばっ!」


二人の言い争う声が聞こるが、千夜は、それどころじゃ無い。吐き気との戦いだ。


大阪から、屯所まで馬でかける。そして、ようやく屯所に帰ってこれた。


約三週間の出来事。


同盟を組み、連合国になった。


両親との再会。しかしながら、千夜は思い出せないまま、水戸藩を後にした。

口では父上、母上と言うが、全く思い出せないでいた。


幼い時の記憶だから仕方がない。


慶喜は、そう言った。だが、違う気がしてならない。


私は・・・一体なんなのか・・・?


水戸に行っても、答えなんか出なかった。


『私のお人形。』


そう言った小さな千夜の言葉が、怖くて、怖くて、堪らなかった。


京に帰ってきても、千夜に休みなど無い。


屯所を留守にした期間、

京の出来事の報告を山崎から受ける。


指名手配書を持ち、襲撃してきた人が居たらしい・・・。


「指名手配書、伊東がやったんじゃねぇの?」


原田の声


「左之さん、違うよ。この指名手配書、間違ってるの気付かなかった?」


「へ?」


前に置かれた紙に目を向ける男達



「あっ!総長・・・」


紙に書かれた文字を指差す藤堂


「そう。この組に、もう総長は居ない。

新選組の中を知らない人物が作ったんだろうね。だから伊東じゃない。」


「でも、わざとかも————」


「一時期、総長を名乗ってた伊東だよ?


今は、名乗って無くても、自分が狙われるような事は、あの人はしない。」


そう言われたら、その通り・・・



「しかも、これ、生け捕りにして欲しいみたいだしね。」


首を取ったら一両。捕まえたら三両。


「新選組の組長。捕まえて何すんだよ・・

しかも、町人使うから、誰が狙ってくるかわからねぇ。」


・・・そこが厄介なんだよね。


「どっちみち、天狗党も何処に潜んでいつ襲ってくるかわからないから警戒は解かないでね。」



「ああ。」


そして、天皇と将軍に報告をする為に、御所に将軍を呼び出し二人一緒に報告を済ませた。


「連合国になったのは、いつ民に知らせますか?」


「報を出すと、攘夷が動く・・・。昨日、横浜から帰ったばかりだ。兵達を休ませたい。その後、天皇から報を出す。」


戦が始まってしまうんだ。この報で・・・



「椿、祝言を挙げるのだろう?沖田と。」


ビクッと沖田が反応する


言ったのは天皇だ。元許嫁・・・


「はい。」

「場所を提供するよ。」


サラッと言ったが


「ご、御所で祝言ですか?」


近藤さん驚きすぎですから・・・



「椿は、吉子女王は宮家出身だ。有栖川宮織仁親王の末娘にあたる。


その子供が御所で祝言をしても、なんの問題もない。水戸藩には挨拶したんだろ?」


「はい。」


しましたけど、反対もされなかったけど・・・



どんどん進められる話に頭が追いつかない千夜

沖田とて例外ではないだろう。



「・・・ケイキ、戦になる前に、私達をくっつける気でしょ?」



「ああ。父上も体がよわってるからな。それに、戦になればお前は、敵に突っ込んでいくのは目に見えてわかっている。」


だからって・・


「私、死ぬ気はサラサラ無いんだけど。」


ジトッと新選組のみんなに睨まれた・・・。



一週間後、御所で沖田総司と千夜の祝言が行われた。



斉昭も病の身体で駆けつけた。



千夜は着付けをして貰って、呼ばれるのを待っていた。


「・・・すすむ。」

「なんや?」


上から現れる山崎に流石にため息をついた。


「正装してんだから、屋根裏はないでしょ?」


山崎は紋付袴姿。白無垢を着た千夜は綺麗で


「綺麗やな。」


そう口にする山崎。もう何年見守ってたかわからない自分が愛した女・・・


「ありがとう。ずっと私を守ってくれて。」


その言葉を聞いて山崎の顔は、真っ赤に染まる。


「な、何言うてんねん。そう言うのは、父上に言うもんやろ?」


首を振った千夜


「すすむが居なければ、笑って居られなかった。


新選組に出会えなかった。

いつも、目を覚まさせてくれたのは、山崎烝、あなただった。————ありがとう。」


「・・・やっぱ、俺お前が好きや。」


そっと頬に触れる。

白無垢姿が自分の為ならどんなに良かったか・・・


「好きだよ。烝も。新選組も。」


苦笑いする山崎。


「沖田さんに取られてしもたわ。」



「私は変わらないよ。私には、烝も必要。」

「欲張りな女やな。」

「ワガママって言ってよ。全く綺麗な女じゃないのに、真っ白の白無垢なんか着ていいのかな?」


「真っ黒やったら白無垢じゃない。」


ごもっとも・・・


そっと抱きしめられる。

「俺の充電もできんくなる。」

「総ちゃんそんなの気にしないよ。」



ほんまわかってない・・・。あれは、独占欲の塊や。


そっと離れた山崎。


「ほら、もう、そろそろや。」


チュッと、山崎の頬に触れた温もり。


「どアホ!祝言挙げる女がなにしとんねん!」


「えー、挨拶しただけだよ~。」


ケラケラ笑いながら、部屋を出た千夜。

山崎は顔を赤く染め、ポリポリと頬を掻いた。


「ほんま、敵わんわ・・・」



そして、祝言は、始まった。


三々九度を済ませ、誓いの言葉をお互いに交わした。滞りなく式は終わった。


「本当に幸せ。」


ぎゅっと、千夜を抱き寄せる沖田。


「俺のちぃっ!」

「平助、まだ言ってやがる。玉砕したんだって何度言えばいいんだよ!」


原田が藤堂の頭を叩く。


「総司に泣かされたら言えよ?」

「う、うん。ありがとう。」


真剣に言うもんだから、つい、返事をしてしまった。


「ちぃちゃん!平助なんかに優しくしなくていいから!」


ギャーギャーと、沖田と藤堂が言い争いを初めてしまった。


フワッと暖かい温もりに、背筋を伸ばした千夜。


「晴れて夫婦か・・」


千夜を抱きしめ、シミジミ言う土方。


ゲシッ沖田の蹴りが炸裂する。


「僕の嫁です。何、自分が祝言あげたみたいに

言ってるんですかっ!

貴方も、いつ諦めるんですか!しつこいにも程があります!」


「お前には勿体ねぇ。」


「椿、沖田が死んだら、いつでもおいで。」


元許嫁の天皇にまで、からかわれる沖田。


「僕を勝手に殺さないでくださいよ!」



ゲラゲラ笑う新選組や家臣たち。

こんな平和が、ずっと続けばいいのに・・・




その日の夜

千夜と沖田は、思い出の宿で過ごした。

お風呂から見上げる星は、相変わらず綺麗。


「幸せだね。」

「うん。」


一緒にお風呂に入り、ごはんを食べた。

ボーっと、夜空を見上げる千夜。


「ちぃちゃん。怖い?」


そっと抱きしめられる体は、いつも以上に暖かく感じた。


「・・空が綺麗だなって。」

「そうだね。明後日、報を出すって。」


「うん。」



「死なないでね。

幸せな世を生きるんだよ。一緒に。」



「わかってるよ?私、死ぬ気なんてない。」



それでも、何処かに行ってしまいそうな千夜を沖田は強く抱きしめた。



そして、もうすぐ起きてしまうだろう戦への恐怖を忘れるかのように、二人はお互いを求め愛を確かめ合った。


歴史のうねりは確実に迫っていた————。

















































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