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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
下関戦争
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裏切りと間者

「平ちゃん、大丈夫?ごめんね、気付かなくて……。」



藤堂は、幸せだった。沖田に耳を思いっきり引張られたが、今は、千夜の膝の上。

突き刺さる視線が無ければ…。だが。


「ちぃ、俺の耳ってついてんの?」


痛くて感覚がない……。


「ちょっと、切れちゃってるけどついてるよ?」



「あー。あー。声が遠くに聞こえる。

ついてんなら良かった。引きちぎれたかと思った。」


「平助・・・」


「総ちゃん、平ちゃん虐めたらだめだからね。」


釘を刺されてしまった沖田は、藤堂を見て舌打ちをする。


「で、横浜は、誰が行くの?」


視線を近藤に向け、土方に流される。


「俺、山南さん後は、総司に平助。平隊士、中村。でいいと思うがな。

町に回ってる紙も気になる。署名だけなら、大人数はいらねぇ」


珍しく近藤さんを外した。よっちゃんが。


「ちぃ、後で副長室に来てくれ。」


チラッと近藤さんを見てから、千夜は、頷いた。


沖田は、巡察だから1人で副長室に入った。

相変わらず文机に向かっている土方に千夜は、お茶と茶請けを置いた。


「お、ありがとよ。」

「で?近藤さんがどうしたの?」

「やっぱ、わかったか…」


ガシガシ頭を掻く土方・・・


「よっちゃんが近藤さんを外すのが珍しくてね…」


「近藤さんがな、斎藤と接触してたからな・・・」


気になったんだよ。と、土方は言う。



「近藤さんなら、よっちゃんに報告————。」


「ねぇよ。何にもな。」


茶請けを食べお茶を飲む土方


「はじめと接触しますか?」


すぐに仕事の顔になった千夜。迷ってる様子の土方・・・。


はじめと近藤さん。必然的に、伊東が浮上する。


近藤さんが、伊東を新選組に入れた張本人だ。なら、君菊を知っててもおかしく無い。


幹部しか知り得ない情報を知っていた・・・

全て手に入ると言った伊東の言葉。



一番考えたくないが・・。


まぁ、口を滑らせたって簡単な理由も考えられるけど、


近藤さんならあり得る・・・

人が良いからね


はじめと接触・・・


「んー。はじめは間者だから別に心配ないと思うけどね、」


「まぁな。」


「そんな理由で近藤さんを外したの?」


ニヤリ笑う土方


「俺らが居ないと動きやすいだろ?観察方が。」


「何?近藤さんを疑ってんの?」


「違うけどな。最近、組の中でも武家みたいな態度でな。

隊士を部下みたいに扱ってるから、なんかあるんじゃねぇかと思ってな。」


・・・ふんぞり返った近藤さん。それは見た事ある。


永倉らが、会津藩まで行って意義を申し立てた・・・非行五カ条だ。


「よっちゃん、これ、私が調べる。多分、新八さんが絡む。悪いけど、横浜には、新八さんも連れて行くから。」


そう千夜は、そう言って副長室を後にした。


「おいっ!ちぃっっ!」


土方が部屋を出た時、もう、千夜の姿は無かった。



「・・はぁ。ったく、最後まで話を聞けよ・・」


俺が近藤さんを疑う訳ねぇだろ?


何のために、今迄やって来たと思ってんだよ。

最近の態度は気になるがな。俺が気にしてんのは別の事だよ・・

まぁ、たいしたことじゃないだろう。



「10日後か。仕事それまでに片付けねぇとな・・」


グーッと伸びをして、土方もまた、文机に向かった。




「・・さて、はじめちゃんは、何処に居るのかな?」


千夜の呑気な声。蔵の上から京の町を見渡す・・



伊東と岩倉はたまに接触しているみたいだが、住んでいる場所は別らしい。岩倉は、未だ行方不明だが・・・


伊東の場所は、斎藤から報告を受けていた。間者として潜り込んだのだから当たり前だが、斎藤は新選組を裏切ってない。


「みぃ~つけた。」


一人町中を歩く斎藤を発見。

まぁ、観察からはじめは、いつもこの通りを歩くと聞いていたんだけども・・・


さて、どうやって接触しようかな?観察もついてるな・・・


一番組の巡察だし、見つかるのは、めんどくさい・・・


「・・バケますかね。」


ニヤリと、千夜の口角が上がった。



京の町を歩く。


日課になったのは、伊東の近くに居るのは嫌だからだ。


何故、俺は、伊東なんかの言いなりに千夜に媚薬など盛ったのだろうか?ただ、伊東に言われた時、言う事を聞かねばならないと思ったのは確か・・・


お香を焚いていた伊東・・あれが原因なのか?でも、実行してしまった。————責任は、俺にある。


考え事をしていたからか、ドンッと人にぶつかってしまった。


ドサッっと地に腰をつけてしまった女。


「・・すまぬ。」


そう言って手を差し出した。



「こちらこそ、すいません。」


手を取りながらそう言った女。黒髪のその女が立ち上がったが着物を汚してしまっていた。



「悪い、詫びと言っては何だが、そこの甘味屋にでも・・」


「いえ、それは、悪いですので・・お気持ちだけで・・」


どこか千夜に似ている。だからなのか、斎藤は再び言葉をかけた。


「いや、やはり、俺の気がすまない。お茶だけでも・・・」


そう口にしていた。


そして、甘味屋へと二人で入れる。


「斎藤一さんって、仰るんですか?」

「ああ。」


へーっと頷いた女・・


「あっ、私は————」


名前を名乗ろうとしたが、


「お前の名は知っている。」


クスッと笑った女は、間違いなく、俺の知ってる女。


「まさか、お前と甘味屋に来るなんて思ってなかった。」


「斎藤さんが、誘ったんじゃないですか。


一人でウロウロして、大丈夫なんですか?お仕事は?何なさってるんです?」


知ってるだろう?とは言えない。観察が近くで聞いているのだから。


多分、女が誰かわかってないだろう。今日は、山崎じゃないからな・・・



「上の人間が、変わって考えがまるで違ってな、この前も、仲間を傷つけてしまった。

俺は、裏切り者と思われてるかもな・・・」


少し驚いた様な顔をして女はまた笑う。


「斎藤さん、貴方は裏切り者じゃありませんよ。私は、そう思ってます。」


斎藤の目が見開かれる。薬を盛ったのに・・


「そうか・・・そう思ってくれるなら

俺はもう少し頑張れる。」



「私、この前、新選組を見たんですよ。局長の近藤さんでしたっけ?」


女が斎藤の袖をぎゅっと握る

————一緒に何していたの?



「あぁ、たまたま会ってな、戻りたいと話しただけだ。」


「そうですか。」



そっと袖から手を離した


「すいません、私、用事がありますので。」



「ああ。お前に会えてよかった。」



女は、すれ違い様に


————はじめ、信じてるよ。


そう言った。



「強い女だな・・・」


フッと斎藤は笑った。


裏切り者だから間者にされたと思った。でも、それは違った。


過ちを犯したのは確か、でも、信じてくれるなら、————今、出来ることをしよう・・・

































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