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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
下関戦争
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西本願寺に偵察へ


以前、千夜の身分がバレた時があったが、留守番組の幹部隊士も居た為に、初めて知る幹部隊士達も居て、驚いた目で千夜を視界に映す。


「千夜って、どんだけ身分の高いお姫様なんだよ?」


「………。さぁ?ヒロ君とケイちゃん、シチマロとよく遊んだけどね。」

「あだ名で呼ばれてもわからねぇよ。」

「孝明天皇、容保、ケイキ。後、ねぇ。」


と、指折り数えながら話す千夜だが、男達は、すでに、間抜け面となっている。

「………」

「………」


すげぇ。人達と遊んでたのは確かだ————。


「でさ、行ってみる?水戸藩! !」


千夜は、プチ旅行気分で、土方に問う。


「天狗党の本拠地も水戸だろうが!ダメだ!危ねえってもんじゃねぇっ!」


「えー。じゃあ、御所行こう!」


妥協した場所が御所って

「………」

「お前な、ちょっと、呑みに行こう。みたいに言うんじゃねぇよ……。」

「え?ダメなの?」

「ダメに決まってるだろうが!天皇が居る場所だぞ?」


「私の仕事場所でもある。」

「二条城では仕事見たことあるけど、御所では何してるの?」

「孝明天皇の話し相手。」

「一日中一緒に居るの?元許嫁と?」

「別に、ずっと、一緒な訳じゃ無いよ?」


仕事にならないじゃないか……。というか、話が逸れつつある。軌道修正すべく、千夜は、話しを戻した。


「で、どうするの?西本願寺に攻め入る?」

「まだ、動けねぇ。」


「…まだって……!町中で人殺しても、動いたらダメなの?」

「幕臣になったんだ!」

そう言った土方に、千夜は、悲しそうな表情を浮かべて、負けじと口を開く。


「町の人達を助けなきゃ、京都守護職の意味がないでしょ?」


「人一人死んだ所で幕府が動くわけねぇ……。」


「なら、観察方として岩倉が何を企んでいるか

調べます。確証が有れば、動くんでしょ?」


「ちぃ、お前を狙ってんだ!お前を行かせる訳ねぇだろ!」


「————私が行きます!狙われた私だから行くんです。お願いします。私を行かせて下さい。」



頭を下げる千夜。


それを見ながら、ガシガシと頭を掻く土方。こう言い出したら、曲がらないのが千夜だ。


「————わかった。ただし、条件付きだ。深入りはするんじゃねぇ……。絶対にな。」


「御意。」

「山崎、お前も行け。ちぃだけじゃ、危ねぇ。」


「御意。」


部屋を出た二人の背を見送りながら、土方は、ため息を吐き出した。


「なんで、うちの姫様は、大人しく出来ねぇんだ?」


「町の人に助けられましたからね。それが無くとも、彼女は、いつも、自分の事は、後回しです。」


山南の言葉に苦笑いする一同であった。




そして、二人は、山崎の部屋に移り、筆を持った千夜は、西本願寺の間取りを思い出す。


この世界に飛ばされる前、しばらく住んで居た事がある西本願寺だ。大体の間取りならと、千夜が書く事になったのだが、書き進めて、しばらくして、ピタッと手が止まった。


「どないした?」


間取り図は書きかけのまま。筆を持ったまま固まった彼女に声を掛けた山崎だったが、その返事は、案外と早く返ってきた。


「……いや。何でもない。」


また、書き進めていく千夜と、西本願寺の間取りを見つめ、山崎は、再び声を掛けようとした時、


「大体こんなもんかな。」


と、筆を置いた千夜を見て、山崎は、話の内容を変えて口を開いた。


「で?ちぃが前、閉じ込められた場所は?」


間取り図の一箇所を指差す千夜その差された場所を見て、山崎は、心底嫌そうな顔をした。


「げっ!遺体安置場?」


「遺体は、なかったけどね。でも、これは私の記憶の中の見取り図だから、違う可能性もある。」


「大体わかれば、えぇんよ。行くなら夜や。

今のうちに寝ときぃ。な?ちぃ。」

「わかった。じゃあ、夜に…。」

「あぁ。」


山崎の部屋から出た千夜は、空を見上げた。まだ、日は傾いたばかりで、高い位置に太陽がある。あの時、何かが見えた。しかし、一瞬過ぎて、それがなんなのかさえ、わからなかった。

ただ、小さな手が、自分に伸ばされていた。


幼い時の記憶なのかもしれない。だが、千夜は、何か、引っかかったのだ。その記憶が、もしかしたら、自分が失踪する原因となったのではないか————と。


「辞めよう考えるの。今は、夜に備えて寝なきゃ。」


そう言って、千夜は、部屋へと戻ったのだった。


そして夜————。

その日の月は、半月で、綺麗な星空は、いつもと変わらない。

身支度を整えた千夜は、また短い丈の着物を着ていた。


「ちぃちゃん、気をつけてね。」

「うん。ありがとう総ちゃん。」


千夜から沖田の首に腕を回しキスをした。


「そんな事したら、離したくなくなるでしょ?」


えへへ。っと笑う千夜。


「愛してるよ。総ちゃん!行ってきます。」


「うん。僕も愛してる。本当に気をつけて……。」


沖田の言葉に、ニコッと返事の様に笑う千夜。


一緒に行きたい沖田。だが、観察方の仕事は出来ない。足手まといにしかならないからだ。


待つだけは、辛い。しかし、待つしかないのだ。


今日は、寝れそうにないや。隣の君の温もりがないから————。

















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