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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
下関戦争
211/281

岩倉具視現る

次の日、巡察の時間の少し前の事。


「ちぃ、昨日襲われたんだ。今日は、やめて、変わりを————。」

「だから行くんじゃない!岩倉具視が現れるかもでしょ?私を捕縛するって言ったんだよ?」


「ダメだ!連れ去られたら話にならねぇ……。」


「捕まったら、大きな花火でも打ち上げて、場所知らせるよ。」


「………。ちぃ、今回ばっかはダメだっ!」


土方に、ギロッと睨まれるが怖くない


「ふぅーん、岩倉具視が怖いですか?

将軍の首を狙ってるんですよ?幕臣になった新選組は、将軍のお飾りですか?」


「————なんだとっ!」

千夜の胸ぐらを掴み上げる土方。


「だったら、副長も一緒に巡察行きましょう?

何も今日、岩倉が出てくるって決まってないでしょ?」


確かにそうだが…………。


「さっさとしないと、巡察の時間になります。」


「わかった。俺も行く。」


ニヤリ笑った千夜。

「副長が、巡察…」


緊張の面持ちの零番組隊士達。


屯所の入り口で待って居たら、浅葱色の羽織を着た土方の姿。


「やっぱ、副長はカッコイイですね!」


————否定はしない。


池田屋以降、新選組は羽織を着なくなった。しかし、千夜は、この浅葱色の羽織が好きだから愛用している。


芹沢が残した大事な羽織だ。


洗濯が大変なんだけどね。だからか、隊士達も

浅葱色の羽織を着てくれる。


「副長、やっぱ似合いますね。浅葱色の羽織。」


「うるせぇ。とっとと行くぞ!」


千夜に言われて顔を赤くする土方に、千夜は、笑う。


そして、町中巡察中————。


ざわざわと、何だか騒がしい町。疑問に思い、千夜は、近くに居た町人に尋ねた。


「何があったの?」

「ーっ。殺しや!」


「新選組! !あの長屋に、男達が!」


駆け寄り、助けを求めてくる町人達。指さされた場所には、男性が倒れ血だまりがあった。


男性に駆け寄るが、既に息はない。


『止めて下さい!』


パシーンっと、乾いた音がする。


女の声がしたのだが、乾いた音は、多分殴られた音であろう。


「突入します。」ボソ


強く頷いた土方。


スパンッと戸を開くと、スッと刀が振り下ろされ、千夜の頬を掠めた。


パンッパンッと、二人の男の足を撃ち動けなくした千夜は、中へと押し入った。


「新選組だ!手向かうものは斬り捨てる!」


中に居たのは、二人の人物。襲われそうになったのだろう。女の目は涙が溜まり、着物は着崩れたまま。その女の上に、馬乗りになってる男が、こちらを向いた。


「————岩倉具視。」


「ほお、新選組は、こんな民家まで調べるのか?」


「お前バカなのか?家の前に死体があれば

普通調べるだろうが!」


「…ふっ……。せっかくの楽しみの時間を……」


「さっさと、女から離れろ。」

「代わりにお前が相手をしてくれるのか?

芹沢千夜。いや————徳川椿。」


「ごめんだね。」


千夜は、女から岩倉を引き剥がし、背に女を庇う形で男に立ちはだかった 。


「お前が欲しいと、伊東が言った意味がわかった。」


「無駄話ししてると————死ぬよ?」


岩倉の後ろには、新選組副長並びに零番組隊士達。


「共に来い!」

「嫌に決まってるだろ!」


クククッと笑う岩倉。囲まれてるのに、何故、笑ってる?


微かにする火薬の匂い。


「家から出て!早くっ!」


岩倉は窓から外に入り口は、一箇所。女の手を引き、入り口に走る。


ドーンっと小さな爆破が起こり、入り口の方に放り投げられる形になる。


「痛ぅっ。」


道端に寝転ぶ形になった千夜。

カチャと聞こえた音に、目を見開いた。


「————ちぃ!」


岩倉は、千夜を見下ろし刀を突きつけていた。

喉に突きつけられた刀。地べたに寝転んだままの千夜。その碧い瞳は、鋭いままに、岩倉へと向けられた。


「なんだ?その、挑発的な目はっ!」


ふっ…

「それで、勝ったつもり?岩倉具視さん。あんた、甘いよ。」


岩倉の足を蹴れば、身体は傾く。刀をクナイで押さえ、千夜は、飛び起きた。


「悪の中枢———岩倉具視。将軍も天皇も殺させない!錦の御旗も作らせない!坂本、中岡も殺させやしない!」


「悪の中枢は、どちらかな?天皇を将軍を意のままに動かしてるのは、お前だろうに!お前など地獄に堕ちる。」


「悪?なんとでも言え。はなっから、天に召されるなんて、思っちゃいないんでね。

堕ちるとこまで落ちてやるよ。


だけどね、何度でも這い上がる!日本の為に、幸せな新たな世の為に、私は戦う……。

己の欲望だけで動く、お前と一緒にするんじゃ無い!

お前のやろうとしてる事は、全てお見通しだ。

一つづつ、止めてやる。必ず!」


キラッと光った屋根の上。また……。


「物陰に隠れろ!上から撃ってくるよ!」


岩倉は隙を見て逃げ出した。


何人居る?屋根の上に……、


バンッバンッバンッバンッ


ゴロっと落ちた岩倉の手下。全部で5名の捕獲となった。


「大丈夫?じゃないよね…」


女の着物を直してやる千夜。


「ありがとうございます。あなた達が来なければ…私は……」


震える彼女を抱きしめてあげる事しか出来ない。彼女は、親戚の家に引き取られた。


長屋は、燃えてしまったから……。












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