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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
下関戦争
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見返り

なんで、町の人たちが、私を助けてくれるのか?刀を抜いた男達を目の前に、怖い筈なのに……。


「町の火を消してくれた、新選組だろ?あんた!」


「そう。だけど……?」


何が何だかわからない。


「娘を火事の中救ってくれた恩人を、目の前で殺されてたまるかよ!」


飛び出して来た男性が、千夜を庇うかの様に立ちはだかる。

————あの時の、赤子の父上?


ガキンッ。振り下ろされた刀を弾き飛ばす、また、違う男性の姿。


「あの時、あんたが助けてくれたから、今がある!」


龍馬を殺そうとした少年が刀を振るう。


「あん時は悪かったな!ねぇちゃん!」


よっちゃんを殺そうとした三人が、また、千夜の前に立った。


ガヤガヤと、集まる町人達。手当たり次第にモノを投げつけ、千夜を助けてくれる人達。


見返りなんて求めてなかった————。人を助けたのは、ただ、生きて欲しかったから。


「貸しは返す主義でね。」


貸し。か……。千夜は、刀を構える。


「……ありがとう……」

千夜は、震える手を押さえる。


……仲間を殺した罪悪感……


それでも、私は、刀を振るう。

あんた達のおかげで————震えは止まった。


見返りなんて求めてない。

だけど、彼らの勇気を無駄にしたらダメだ。


風が、その場を吹き抜ける。


新たな世の為に、私は戦う————。

そう決めた筈だ……。


『クソガキが……』


クスッ。本当に、その通りだ……。

地を蹴り、立ちはだかる者を斬りつける。


殺さない。武器を取り上げ戦えなくする。

————それが、私の戦い方っ!!


町の人が武器を持たない男達を縛り上げる。


「怪我無い?」


千夜が声を掛けた小さな男の子。その子は、千夜を見上げ、目に涙を溜めた。


「君は、本当強いよ。」


うわーん。と、泣き出した男の子。


「怖かったぁ~。」


だろうね。身長二倍の男の前に立ちはだかったのだから……。でも、この子が飛び出して来てくれたから、私は、助かったんだ。


「ありがとう。おかげで助かったよ。」

「お兄さん、怪我!」


「大丈夫。仲間が、もうすぐで来てくれるから……。あなた達も、ありがとう。」


「なぁーに、雇われただろうよ。俺たちは。」


ニカッと笑った三人

中村と共に近藤暗殺を命じられたその三人


「今は、町の悪い奴らをこらしめるのが俺らの仕事よ!」


「あの時、助けてくれた礼だ。」


顔を赤らめて言った少年は、龍馬を撃とうとした少年だ。


「千夜!」

「ちぃちゃん!」


走ってきた浅葱色の羽織を着た男達。永倉と沖田だ。


「……何が、どうなってんだ?」


椅子やら色んな物が散乱する道。


「町人に助けられた。山南さんは?」


「無事だ。」

……良かった……


「帰ろう。屯所に……」


もう一度礼を言おうとしたら、助けてくれた彼らの姿は、もう無かった————。


ありがとう。本当に……。おかげで、目が覚めた。




屯所に帰った、千夜と永倉と沖田。


「千夜さんっ!」


心配そうに山南さんが駆けてくる。


「山南さん、名指しで狙われたから、土方さんに屯所から出して貰えなかったんだよ。」


ボソっと新八さんが言う。


「怪我は!」


本当に掠っただけなんだけども…… 。


「とりあえず、落ち着いて下さい。

すいません……。なんかあった時の為に

服に仕掛けを……してまして……。怪我は、本当にかすり傷です。」


「………。千夜さん!どんだけ心配したと、思ってるんですか! 」


山南さんが怒鳴る程ですから、凄くだと思います。


「とりあえず、治療を!」




「何処が、かすり傷やて?言うてみぃ?ちぃ…」


グリグリと傷口を触る山崎。


「右脇腹ちゃんと撃ち抜かれとる。これが、かすり傷やて?はぁーん。」


メッチャ怖いです。烝さん。


そして、山南さんの眼鏡が光ってます。


「…すいません……。」


「山崎君!傷口を広げる様な事しないでください!後、早く処置して下さい!」


あまり肌を晒せたく無い沖田は、治療を急かした。



「烝さん、痛いです。」


「かすり傷言うたやろが。ああん?」


「ごめんなさい。嘘つきました。だから、グリグリしないでってば!」


「私を庇って、すいません……。」


「違いますよ。あれは、私を狙ってたんです。

弾が山南さんに、当たったらまずかったから、突き飛ばしちゃっただけですよ?」


ニコッと笑う千夜。


貴方は、いつも、そういう嘘は、平気なかおでつく————。






「ちぃちゃん、お風呂ダメだって言われたよね?」


着替えを取り出した千夜に、沖田は、すかさず、言葉を投げかけた。


「………」


お風呂入りたい!切実に……。夏だよ?汗かきまくりだし。


「体拭きに、お風呂行くだけだってば!」


撃たれたんだから、風呂に入れないのは当たり前。


「じゃ、僕も行く。」


同じく、風呂に入れない沖田。拉致されてだ時に、斬られたから。


嫌な予感しかしないのは、私だけでしょうか?



風呂場で

「はい、脱がせてあげるねぇー。」


「いいよ!自分で出来るって!」


千夜は、伸びてくる沖田の腕に顔を真っ赤にさせながら抵抗を試みる。


「だぁーめ。」


う………

しかし、その抵抗は、ささやかすぎる抵抗となるだけで、結局、スルリ、スルリと着物を脱がされていく。


は、恥ずかしい————。


「相変わらず、綺麗な身体。」


沖田の目に映る、千夜の白い肌。


「…………。サラッと、いやらしい言い方しないでってば!」


ニヤリ笑う沖田は、とっても楽しそうで


————恥ずかしいの?


と、耳元で囁かれる。


「ちぃちゃん、身体まで赤いよ?」


————恥ずかしいんだよ!どアホ!


「さっさと身体拭いて寝ようっと。」


「……ごめんって……。

背中は、届かないから拭いてあげるから、僕のも拭いてね?」


「いいよ。」


結局、沖田には、弱い千夜。


お互いに身体を拭いて、お風呂はお終い。の筈が……


「ちぃちゃん……。」

「総ちゃん、ダメだからね?傷口開く!二人共……。」


そんな間抜けはゴメンだ。


「……ケチ…」


口を尖らせて言っても、ダメなものはダメだ。


「キスだけね?」

「?」


チュッと唇を合わせ触れるだけのキスをした二人。千夜は、さっさと着物を羽織る。


「キス…接吻……」


沖田は、新たな単語を覚えた。


「ちぃちゃん。キス…もっと……。」


「ダメ!総ちゃん、それだけじゃ、おさまらないでしょうが!」


仰る通りです。


部屋に帰ってもなお、沖田は千夜から接吻をねだる。


「一回だけだからね?」


折れた千夜が悪かった。


唇を合わせ、すぐに離そうとしたら、

頭を固定されて、口の中を犯されてしまう。


「んー…んー…」


胸を叩くが逆効果で、


「千夜。愛してる。」


結局、愛を確かめ合ってしまった二人だった。



幸いにとも言うべきか、傷口が開かなかった事だけが救い。


ニコニコした男を睨みつける


「なぁに?まだ足りない?一回だけ。でしょ?」


確かにそうだけど、千夜が言ったのはキス一回である。


「知らない。おやすみ。」


不貞腐れてフイッと顔を背ける千夜だが、沖田からしたら可愛いだけである。


背を向けて寝る姿勢に入った千夜。


彼女、寝るのは早い。昔から。

スースーと裸のまま眠ってしまった。


「あーあ。寝ちゃった。本当、可愛い。」


ニヤニヤと、沖田の頬が緩む。


プニプニと、千夜の頬を指で突く。チュッとキスをして、彼女を抱き寄せて沖田も眠りについた。












































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