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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
下関戦争
206/281

御陵衛士

はぁー。

沖田の深いため息が部屋の緊張感を無くす。


「何だ?沖田……」


「伊東の欲しいモノは、長州のヒメ自身。

つまりは、ちぃちゃんなんですよ?」


「「「「はぁ?」」」」


面白い程の反応を見せる長州の方々。


「今までに誘拐が一回、襲われそうになった回数は、数えれないぐらいなんですよ?」


「ヤラれてません!」


皆「そういう問題じゃない!」


はぁ。

そんな事を言われても、千夜も好きで誘拐された訳では無い。彼女は、気を取り直し、毛利に視線を向けた。


「毛利、伊東は、将軍、徳川家茂の暗殺を匂わせる様な事を言ってきたよね?」


「………何で……」


やっぱりか。自分ならどう出るか。そう考えた時、暗殺という手段が出て来た。だから、何の確証もないが、毛利に、さも、知っているかの様に口にした千夜。


「稔麿、伊東と岩倉を甘く見るな。

岩倉は、長州を薩摩を飲み込み、坂本龍馬、中岡を暗殺する。

そして、奴の目的は、孝明天皇の暗殺をする事————。」


日本を自分のモノにする為に、天皇すら利用する、酷い男。

京で火付け、殺人、強盗、強姦を繰り返す。悪事の限りを尽くす、岩倉。

そんな人間が日本の政治に関われば、死ぬ人間が増える。自分の立場が良くなるように動き、岩倉が間違っていると言ったら人を殺す。

そうやって反対する人間は、殺していく————。


岩倉と伊東に力を貸すな。間者に送った者達が殺されるぞ。伊東と二人でつるんでるなら、これ以上最悪な組み合わせはない。

吉田稔麿、お前が伊藤俊輔の名を語るのはいい。だがな。お前も、利用されて殺される。」


見開いた目の男達。しかし、それが史実である。


長州藩に坂本も中岡も置いておけない。山南も藤堂も務めは、長州藩だ。かといって、伊東がいる新選組の屯所に置けない現状。


だったら————。



「千夜。君、突然、二条城に行くって、気は確か?」


千夜の提案は、長州藩で仕事をする四名を二条城に移動させる。というものであった。


「気は確かだし、薩摩には伊東が出入りするし

会津に頼むなら、その上に頼んだ方が確かでしょ?」


と、冷静に話す千夜に、高杉が問題点を口にする。

「………。だからって、俺らも入れてくれるとは限らねぇだろ?」


二条城に、長州や新選組が入れるのか?という高杉の疑問。だが、千夜にとっては、その問題は、些細なものであった。仲間の身のためであれば、嘘を吐いてでも二条城に置いてもらう他、考えが思い浮かばなかった。


藤堂と山南、坂本に中岡と長州の三人を連れ、二条城に向かう千夜。沖田も怪我してるのに着いてくる。


「総ちゃん、傷痛むでしょ?長州藩邸で待ってて?」


心配だから言った千夜だが、ハッキリ言って、今じゃ、長州藩邸すら危うい場所となっている。沖田が無理して、着いてきてるのなんかわかってた。案の定、二条城の門の前で、沖田の息は荒くなる。苦しそうに顔を歪める彼を見れば、どうにかしてあげたいのが、本心だ。


しかもーこれで、中に入れてくれなかったら————。と、考えながら、千夜は、二条城の門番達に視線を向けた。


「椿様?今日は、非番でしょう?如何なさいました?」

見慣れた門番達に、少なからず胸を撫で下ろした。


「いえもち君に会えないかな?ダメならケイキでもいいんだけど………。」


妥協で一橋公って………。と、男達は、呆れた様に千夜を見る。


「後ろの方達は?」


ゾロゾロと千夜の後ろの男達に、不信感を露わにした門番達。

「私の仲間なの。」

その言葉に、


「椿様の仲間でしたら、どうぞ……。」


納得は、していない様な門番達。だが、千夜が仲間と言えば、通さない訳にはならない。

門を通り抜けた千夜達。少し痛い視線をあびながらも、二条城へと入ることが出来た。


行く場所は決まって居るらしく、スタスタと二条城の中を歩く千夜。


後から続く男達は、周りを見渡しながら歩く。

何しろ、二条城なんて滅多に入れるモノでは無い。


二条城の部屋に入って、男達は唖然とした。煌びやかな襖に、煌びやかな装飾品達。家臣が二人、その部屋に控えていた。


その部屋からは外が見え、日本庭園の様な池もある。部屋は20畳と、広すぎる部屋。

しかし、場違いかの様に、書類やらが、部屋の隅に山になっていた。


「…何?この部屋……。」

「とりあえず、総ちゃんは寝てね。」



家臣「椿様の仕事部屋でございます。椿様、布団なら私が敷きますので…。」


と、部屋に敷いてくれた布団に沖田を横たえる。ケイキの家臣が部屋の隅の書類をまた山に丁寧に積み上げていく。その山を見上げ、千夜は、呟いた。


「……何?この嫌がらせ……。」

「椿、今日はまだ休みだろ?」


と、間を見計らったかの様に慶喜が現れる。


「ケイキ!この仕事の山は何な訳?」


「あはは、やだなぁー。

嫌がらせじゃ無くて、ちょっと、俺も立て込んでてね……。」


ケイキの仕事がそのまま回ってきたという意味だ。


「ケイキ、仕事があるなら後4、5人雇う気はない?」


「それぐらいの書類なら、椿一人で充分だろう?」


「………だったら、ケイキが一人でやるか?」


慶喜に脅しをかけた千夜だったが、慌てたのは、家臣の方であった。


家臣「椿様、それでは仕事が回りません!」


どうやったら、仕事が回らなくなるんだよ…。


とりあえず、吉田、山南、藤堂、坂本、中岡を二条城勤務に変更して貰った。


「構わないよ。理由は聞かないで置くよ。

椿、朝廷がね、新しい隊を作るって話を耳にしたんだ。」


「御陵衛士。」


御陵衛士ごりょうえじは、孝明天皇の陵(後月輪東山陵)を守るための組織。高台寺党とも(高台寺塔頭の月真院を屯所としたため)。


「そうだ。なんでも、一和同心。

日本国が心をひとつにして和するという意味で

国内皆兵・大開国大強国を基本とし、公議による政治活動をする為に……」


朝廷を中心に政治をしたいって事でしょうが。


「その提案は誰が?」

「…岩倉……と言っていたかな?」


なるほどね。伊東が動き出す。


「ケイキ、頼みがある。」


ニヤリと笑った千夜に、また、嫌な予感がすると男達はため息を吐くのであった————。
















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