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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
下関戦争
201/281

組長、連れ去り事件

厠に向かった沖田だったが、その途中で、千夜が縁側で夜空を見上げて居るのを見つけた。


いつもの様に、近づき後ろから抱きしめる。

「……ちぃちゃん…?こんな所に一人で居たら

危ないでしょ?」


「総ちゃんに襲われちゃうから?」


何で僕なのかな?


「まぁ、間違いではないけど、他にもいるでしょ?中にも外にも、ちぃちゃんを狙ってる人は沢山だよ?」


「私に敵は居ないよ。」


そう言って笑う彼女。どんなに酷いことをされても、伊東が嫌いでも、ムカついても、敵になって欲しくないと願っている。


僕は、刺し殺したいぐらいなのに————。


ちぃちゃんは、罪を憎んで人を憎まず。

そう言うんだよ……。



さっきだって、土方さんは下戸だから潰れたのに疲れて寝てないからって言ったんだ。


厠なんて嘘で、土方さんの様子を見に行って山崎君にもお酒をわけてたんだろう。


「敵が居なくても、戦わなきゃいけない……」

「隊士は、どれぐらい減っちゃうのかな?」


「わからない。ちぃちゃん、幕府が発表したら……御所に————。」

「私は此処に居るよ。」


また、決めたからという顔をする、ちぃちゃん。何故、彼女は、辛い道ばかり選択するのか————?


「私はね、もし、死ぬなら、みんながいる場所で死にたいから。」


「僕を置いていくのは、許さないからね……千夜…」


ふわっと笑う千夜。


人は、いつ死ぬかなんてわからない。一緒に死ぬなんて無理に決まってる。


————だけど、彼は、私は一人じゃないと、側にいるからと、不器用ながらそう伝えてくれる……。


「死なないよ……私は。」


ただの強がり。


もう、後には引けやしない。歴史は大きなうねりを起こす。


全て千夜が起こした軌跡————。


私は、命を賭けて、新選組を幕府を明治に残す!


この想いは、もう決して揺るがない千夜の強い意志であった。



(歴史は、大きな変化を遂げた。

もうすぐ、あと少しで、この小さな身体ともお別れ。あなたの望みを叶える。)


綺麗な空を見上げ、沖田と千夜の姿を映した碧い瞳。


(必ず、貴女に死を————。)


くすり。と笑う桜色の髪の少女。その姿に、千夜も沖田も気づく事は無かった。



6月に入り、中村に新入隊士2名の監視を続けてもらっていた。

理由は、切腹を阻止する為だ。

二人の新入隊士の名は、施山多喜人、石川三郎


二人は京に来て舞い上がり、人妻を襲う。


徳川幕府の法律で、不倫は死罪に値する重罪。

江戸から遥々京まで来て、新選組に入隊したのに女を襲って切腹なんて馬鹿げて居る。


それに、襲われる恐怖は、千夜は知っている。

だからこそ、人妻も隊士も守りたかった。


中村に頼む事しか出来ず、御所、二条城に行かなければならない日々が続いた。


6月半ばに千夜は三日の休みがやっと貰えた。

1日目は、総ちゃんと一緒に行った宿屋に行った。

仕事以外では、ゆっくりと出来る時間なんかなかった。気になる事、やらなければならない事なんてあり過ぎる。


だけど、二人の時間も大事にしたかったのは、本心であった。


付き合い出した記念だからと、二人は愛を確かめ合った。


ぎゅっと、沖田を離さない千夜。

「どうしたの?」

「離れたくないなって……。」

「離さないよ。大丈夫。」


抱きしめられる温もり……



嫌な予感がする。そんな事言えなくて、ただ、怖かった————。


次の日の昼前、屯所に二人で帰った。

沖田が巡察だったから、屯所で、沖田を見送った千夜。だが、胸が締め付けられる程に嫌な予感が千夜を襲う。


一番組に、何かあるの?

千夜の嫌な予感は、大きくなるばかりだ。


昼の巡察は、不逞浪士のイザコザが大半をしめる。


沖田の刀の腕前なら、心配する必要は無いはず。なのに……どうしても嫌な予感がしてならない。


「どうか、無事で————。」


そう願う事しかできない千夜が部屋に戻ろうとした時だった。


「中村っっ!!中村っ!」


叫び声に、千夜は、走った。


叫び声のする場所に着けば、中村が縄で縛られ

何度も殴られた様な姿に、何が起こったのかわからないまま、千夜は、中村に歩み寄った。


「千…夜さん……」

「中村、何が……」


永倉、藤堂が見つけたらしいが、縄を切って居たり、周りを気にして居たりで、中村自身に目を向けてはいなかった。とりあえず、怪我の具合を見なければ…と、そう思った。


「Okita is critical …

I am all right. Go!


(オキタさんが危ない…

俺は大丈夫です。行って!)」


『仲間を次々に……殺す…手始めに誰がいいですか?』


伊東だ……


「二人共、中村を頼みます!」


そう言いながら走り出した千夜。


「中村、お前、ちぃに何を!」


異国語なんか、わからない二人は、中村を問い詰める。


「……言いませんよ。」

誰が殴ったか、何を言ったか、中村が口を割ることはなかった。


俺の行く道を作ってくれる人の願いなら同じ隊士を切腹させる様な事、俺がするわけないでしょ……?


……それが、例え伊東派の仕業でも…。





馬に乗り町を走る。


一番組は見つかった。傷だらけで……。


だが、そこに、沖田の姿がない。


「千夜さん!」


一番組の隊士が声を出した


「…何が……」


とりあえず、止血をし手当てをした。道に落ちた竹筒は、2つ。


中から溢れ落ちる水。

指にすくってペロッと舐めた……それは……媚薬……?


「組長が、沖田組長が伊東派に連れ去られました!」


「沖田組長は、腹を刺され重症です!」


道を赤黒いものが……水溜りの様になっている。


中村を殴ったのは、見張りをさせていた二人だとしたら…?


「やったのは、酒井か?」


驚いた一番組隊士達


「そうです。」


だったら行く場所は、酒井の故郷、摂津住吉っ!


何故?どうして?酒井は、池田屋以前より居た古参隊士なのに……


「お前ら、自力で屯所に帰れるな?」

「……はい。」


「帰ったら、副長に摂津住吉に応援が欲しいと伝えろ!


後、伊東派に気をつけろとっ!私は、御所に行ったことに……」


頭の中が整理出来ないまま言葉にする千夜だったが、

「摂津住吉に行くのに、御所に行ったと言えばいいんですか?」


理解できてない一番組隊士。


「副長だけに私の行き先を伝えろ!

他の者には、私は、御所に行ったと言え!私は、摂津住吉に向かう!沖田組長を奪い返しに! !」


「わかりました!」


駆け出した馬に乗った千夜。


総ちゃん…どうか……無事で居て……
























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