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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
下関戦争
199/281

副長と酒

誘拐だったと聞いた時は、ショックだった。

でも、誘拐されなければ、みんなに出会えなかった。————絶対に。


それが例え、芹沢の仕業だったとしても

恨みはしない。

だって、壬生浪士組に出会えた。新選組に出会えた。なにより、試衛館の仲間に出会えたのが、千夜には大きかったのだ。


姫として暮らすより幸せだったんだと

千夜は、自分自身に言い聞かせたのだった。



四月七日。年号が慶応元年となった。


五月半ば、新入隊士80名を引き連れ、江戸より伊東らが京に帰ってきた。


史実では、53名だったのに、数が膨れ上がっていた。


山崎も、千夜も身元調査でバタバタし、他にも観察方もいるのだが、全て二人で行われた。こればかりは、副長の命によるものだ。組にも関わる重要な事である為、放棄など、出来なかった。


千夜も山崎も寝る時間が欲しいほど忙しかった。しかも、千夜は、長州へも出向かなければならないし御所、二条城と、仕事は、山の様な状態で、休みなんかない。


この日は、少しの間を見つけて、縁側に沖田と一緒に居たのだが、いつしか彼女は、夢の中へと旅立ってしまっていた。


そこへ、


「ちぃ!」


声を荒げて、近づいて来る土方に、苛立ちを見せたのは、恋仲である沖田であった。

「土方さん、ちょっとは、ちぃちゃんを休ませてくださいよ!」


沖田の膝の上で縁側で眠る千夜。

手には、新入隊士の資料片手に眠っている。


「そうは言われてもな、

頼れるのは、ちぃと山崎しか居ないんだ。」


絶対の信用を寄せている二人だから、土方も頼るのは、重々承知だが、千夜の姿を見ると、休ませてあげたいのが正直な気持ちだ。


「この時期は、喘息も出やすいんです。倒れる前に休みを……。」


クマが出来てる寝顔を見てしまえば、


「今日と明日しか休みはやれない。明後日は二条城だ…」


土方が折れるしかない。倒れられたら、それ以上の休みが必要となる。だったら、休ませるのが最善の策だと、そう言葉にした。


はぁ

「ありがとうございます。」


そんなんじゃ、疲れなんかとれやしない。それでも、休ませてあげたかった。


千夜の頭をそっと、撫でる。沖田。


「働き過ぎなんだよ?ちぃちゃんは…」


二人の時間すらそんなにとれない。伊東も動向も気になる。静か過ぎるのだ。


——嵐の前の静けさじゃなきゃいいけど——



そう思う沖田だった。


そして、新選組は、300人近くの大きな組織になり、組織編成がなされた。


局長、近藤勇

総長、伊東甲子太郎

副長、土方歳三


副長助勤兼観察方

山崎丞、吉村韓一郎、 尾形俊太郎


諸士調役兼観察

柴原秦之助、新井忠雄、服部武雄

芦屋昇


勘定方

河合耆三郎


組長

零番組兼観察方 芹沢千夜

一番組 沖田総司

二番組 永倉新八

三番組 斎藤一

四番組 松原忠司

五番組 武田観柳斎

六番組 井上源三郎

七番組 谷 三十郎

八番組 藤堂平助

九番組 三木三郎

十番組 原田左之助


伍長 30名


平隊士 200名



となった。

もちろん、山南敬助は参謀としては扱わるが

隊士達が目の触れる書物等には、書かれなかった。


そして、


撃剣師範


沖田総司、池田小三郎

永倉新八、田中寅三

新井忠雄、吉村貫一郎、斎藤一


柔軟師範


柴原秦之助、柳田三二郎

松原忠司


文学師範


伊東甲子太郎、武田観柳斎

司馬良作、尾形俊太郎

毛内有之助


砲術師範


芹沢千夜、清原清、阿部十郎


馬術師範 安富才輔


槍術師範 谷三十郎



と、様々な分野の得意な師範も決められた。


第一次長州征伐は行われなかった。だからもちろん、第二次長州征伐も行われない。

新選組も行われていたら三カ月は大阪に屯所を構えたのだが、歴史が、変わった今、必要がなくなった。


松本良順先生による、隊士の健康診断が行われたが、千夜が救護を得意としてるために隊士の体調は良いものであったが、

千夜は、過労だと言われてしまった。


隊士達のカルテも、千夜が作成していたので

松本良順先生も安心したようだったが、千夜が手をつけない平隊士の部屋などは掃除するように言いつけられたのだった。


「だから掃除は、大事ってあんなにいったのに!」


う……


土方は、何も言えやしない。掃除なんて汚れややればいい。それが男な訳で、汚れても面倒くさくなって結局やらないで居たのが、ツケとして回って来てしまったのだ。


隊士の健康がかかっているならと大掃除に発展した————。


「ちぃちゃんはやらなくていいよ。過労って言われたんだから休む。いいね?」


「う、うん……」


いいのだろうか?

私だけ休んでいて…。ってか、大丈夫なんだろうか……?


色々気になって部屋を出てみる。


よっちゃんが、木刀持って立っているからか……大掃除に専念する平隊士や幹部隊士達


「何で、平隊士の部屋の掃除を俺たち幹部までが手伝う訳?」


藤堂も原田も永倉も手を動かしてはいるが文句を言いたくなる。


「…まぁ、そう言うな。頑張ったら呑ませてくれるって土方さんが…」



……なるほどね。酒で釣ったのか……

で、自分は立って怒鳴る……


卑怯な土方

まぁ、おかげで屯所が綺麗になったんだけど。




編成に伴い、導入された死番。


京は狭い路地が沢山あって、その中に潜んでいる敵も多い。突入していくのに、一遍にというのは不可能で、平ちゃんみたいに魁先生みたいに勇士ばかりではない。


四人一組になり、先に突入するのが死番である。


次の日は、二番目が死番と回っていくローテーションシステム。


度胸が無きゃ、新選組には置いてもらえない。

入隊してすぐ隊士は、隊で局中法度を破ったものの介錯をさせられる。


人を斬る事を覚えさせようとするものだが、

切腹になる隊士はほとんど居なかった。

千夜が歴史を覚えているため、未然に食い止めようとはするが、全部が全部止められるものではなかった。


まぁ、大掃除の褒美で、夜は、屯所で宴会となった。広くなった屯所前川邸だが、


平隊士も入れても大丈夫なくらい広い広間で酒が振る舞われた。


女中はいないし、出来合いのモノを買ってきたり頼んだりで、結構豪華な宴となった。


千夜が過労と言われたら、働かせるのはマズイからそうなったらしい。


「ちぃちゃんは、呑みすぎないでね?」


呑む前に釘を刺される。


「私、お酌しようか?」

「いいって、千夜は座ってろ。」


新八さんが優しく言ってくれるが

……なんか…いいのかな……?


私の代わりではないが、平隊士達が幹部隊士達や局長らにお酌をしながら話しをしている。


まぁ、これで話す機会がふえるのはいい事だと千夜もチビチビとお酒を呑み出した。


ただ、突き刺さる伊東の視線。


私の隣は総ちゃんに反対には

何故か新八さん……いつもなら平ちゃんなのに……。別に誰でもいいんだけとも…。


零番組の隊士達がお酌をしに来てくれて、野口とも酒を呑んだ。


別にお酒に弱いわけでもない。

「ちぃちゃん。」

「何?」

「酔ってないよね?」


たまに確認をされるのは何故だ?

これで3度目になる……。


「大丈夫だよ?まだ、そんなに呑んでないし…」


そっか、っと言って、自分も呑みだす総ちゃん。

千夜は、首を傾げ、舐める様に酒を口にした。


「ねぇ、総ちゃん、よっちゃん赤くない?」


周りには平隊士達がお酌してる姿。


これはマズイと、千夜は立ち上がる。


「ごめんね、はじめと左之さんにお酌してあげてくれるかな?」

「…いいですよ?」


土方を囲んでた平隊士達が散っていく……。


目が座る土方……完璧酔ってるわ。


こうなると、面倒臭いんです。この方……。


「近藤さんも、伊東さんも少し離れた方が。命が欲しかったらデスが。」


そんな事言われたら下がるしかない。


「総司、お前は鬼か悪魔なのか?千夜に行かせなくてもいいだろ?」


と、原田が、モグモグとツマミを食べる沖田に話しかけた。


「土方さんの酒乱は、ちぃちゃんしか止めれませんからね。昔からそうでしょうが……」


土方の酒乱。

昔から、それを止めるのは、決まって千夜と決まって居た。

「よっちゃん、水飲もう?」


「いらねぇ……ヒックッ酒を呑む!酒!今日は呑むぞ!」


もう呑んでるだろうが!


はぁ。


ぐびぐびと、徳利ごと煽り出した土方を見て、ため息を吐く千夜。

























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