伊東と媚薬
どうでもいい会話をスルーし野口の話を聞く千夜。
「で、連れ去って、伊東派だと思わせた。私の為って言ったけど、それは?」
「あの人は本気で千夜さんを狙ってます。
藤堂さんらが寺に火を放った時に、寺に放置してあった遺体を俺に見せかけようと焼きました。煙を大量に見せるために、煙幕やら使って
かなり燃えてるように見せ、山南さんが部屋に入って行って千夜さんを助け出すところを見届け、とりあえず、そこから逃げました。
だけど、伊東に見つかり、遺体は山南さんのものだと言われて…
新選組を襲うように言われました。
不逞浪士の寄せ集めで人を斬る事しか出来ない人ばかりを選び10番組を襲い、
自分は、伊東派だと…思わせるしか無かったんです……
伊東の近くにいれば、千夜さんが捕まった時に逃がせれるじゃないですか!」
捕まる前提なんだね……
「伊東は、千夜さんに呑ませた媚薬よりもっと強い媚薬を持ってます。
千夜さんが持ってる回毒薬も効かないぐらいの媚薬を……
千夜さんが手に入れられなければ、沖田さんあたりが狙われますよ……きっと……」
ザシュッっと畳に沖田の刀が突き刺さる
「気持ち悪い事言わないでくれる?刺し殺すよ?」
「身体じゃないですよ!千夜さんが傷つくように女を仕向けるとか、色々あるじゃないですか!絶対、身体の関係を想像しましたよね?」
「ち、違うよ。大体、ちぃちゃん以外女は嫌いだし」
「媚薬を盛られたら?」
「…………」
「あー、そういえば、伊東が総ちゃんに見えた……」
飲んだ本人がそう言う…
「………千夜さん、抱くなら抱けばいいって言いましたもんね……」
「ちぃちゃん!」
「いやいや、抱かれてもお前の言う通りにはならないって言ったし!腕縛られてたんだよ?
抵抗なんかそんなできないからね?
やられてみなよ!クソ腹立つから!」
男にそんな事しても気持ち悪いだけだ。ちぃ。
「…聞かなかったけど、まさか、やられてないよね?」
「………今?今聞く?」
「…だって……聞けないでしょ?」
口を尖らせて言われても
「接吻はされた。」
「…………」
「着物を左右にはだけられた…」
「…………」
「水も口移しだった…」
頭を抱えてしまった沖田
「野口、今すぐ伊東のかわりに殺してあげるよ!」
「でもしてないよ?
やばかったから、行灯倒したんだから……」
「あの後どうするつもりだったんですか?山南さんと藤堂さんが来なかったら死んでましたよ?」
「いや、クナイは持ってたし、火薬もあったから、抱かれるぐらいなら木っ端微塵に粉砕しようとしただけだよ?」
なんて事を言ってるんだ!この子は……
「え?なんで?嫌なものはイヤだし。」
それはそうだが、木っ端微塵に粉砕って。
「自分だって死ぬかもだろうが!よく、火薬に火がつかなかったな!火事の時も思ったが…」
「薬の包み紙が特殊なんだよね。燃えにくい紙で包んであるんだよ?」
懐から薬のように包まれた火薬を取り出す
「その量で人1人吹き飛ばせる。」
手に取ろうとした土方の手が固まった。
「幾つもってんだ?」
「5、6個かな……?」
「それ全部西本願寺で、火がついてたら?」
「全部吹き飛ぶかもね。やり方次第だけど。」
ふと、些細な疑問が頭をよぎり、野口は、それを口にした。
「……千夜さん、もし、もしですよ?
沖田さんが浮気したら?」
ニコニコしてる千夜が逆に怖い
「野口、それ聞かなくていい…」
沖田は、千夜に嫉妬を教えた時に
される方は嬉しいけど、する方は殺しちゃいそうになるね。
それは僕を殺すって事?と尋ねたら、
世の中知らない方がいい事もあると
言われたと話した。
「完璧、殺されるな。最中にでも部屋に入ってくるからな。こいつ……」
「は?」
「いや、前に島原で不逞浪士の情報が入ったんだが、なかなか、現れないから女を抱いてたら、ちぃが入ってきて”仕事です!”って……」
「最低すぎですね…」
「だろ?」
「土方さんがですよ!仕事中になにしてんですか!ちぃちゃんに汚らわしいモノを見せないでくださいよ!」
汚らわしいモノって……
「……媚薬……媚薬か……総ちゃんに媚薬飲ませてみる。とか?
伊東ならやりかねない。え?伊東って男色じゃなかった?ってことは、浮気相手は伊東?
気持ち悪い……」
千夜の独り言がおぞましい。
「ちぃちゃん……。やめて?嫌でも想像しちゃったし。」
本当に顔色が悪い沖田
「媚薬って味がしないし、何かに混ぜられたらわからないかもね。
信用できる人以外から何か貰っても、食べたり、飲まなきゃ……大丈夫だとは思うよ?」
「千夜さんが、異常なんですよ?薬があまり効かなかったから、助かっただけで、普通なら
ヤられてますからね?」
ザシュッ畳にまた刀が刺さる。
「連れ去った張本人が何言ってるのさ、
ちぃちゃんが無事じゃなかったら、本当に殺してたからね……」
「……すいません…」
「いちいち、畳に刀を刺すな!張り替えなきゃいけなくなるだろうが!」
まぁ、そうだけども……
「よっちゃんも警戒した方がいいよ?伊東の好みらしいし……」
ぞわぞわと鳥肌が立った土方
「ちぃ、頼むやめてくれ。鳥肌が立った。」
「あー、ごめん。」
最近、動きが無かったら隊士達を狙うし、本当に用心しなきゃいけないな。
伊東に、接触してみるかな。かなり危険だけども……。




