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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
下関戦争
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江戸へ。隊士募集

あの、総司が頭を下げている……。

その光景を土方は、信じられないと言った表情で、沖田を視界に入れる。


京に来る時、近藤が芹沢に頭を下げた時、怒りを露わにした沖田。土下座なんて、武士がやる事ではない。そうも漏らした彼が、今まさに、目の前で頭を下げているのだから、土方が驚くのも無理はない。


不意に、入り口に影が出来、誰か来たのか?と、土方がそちらに視線を向けようとした時、声が、聞こえた。


「格好悪いね。はぁ。総ちゃん……。」


はぁはぁ。と、息を切らした千夜の声に、皆がそちらに視線を向けた。寝巻きのまま、苦しそうに眉を寄せる千夜の姿

「ちぃちゃん……?」


ずっと目を覚まさなかった彼女が、局長室の入り口に、柱にもたれかかり立って居た


「ちぃ!寝とらな !」


と、慌てた様子で追いかけてきた山崎は、部屋の中を見て、ペコッと頭を下げた。


「何いってんの?頭使い過ぎただけだって。言ったじゃん。」


確かに、山崎はそう言ったが、息を切らしている彼女が心配なのか、手を伸ばし支えようとした。


「総ちゃん、頭を下げなくていい。あいつは、新選組に入隊させる。」


彼女が、伊東の話しをした時、言葉に詰まるほどだった事は、沖田も覚えていた。


「なんで?ちぃちゃんを傷つけた人でしょ?

そんな、危険な事———。「総ちゃん。」


出来るはずないじゃない!そう、言おうとしたのに、沖田の言葉を遮った千夜は、ニッコリと笑った。


「伊東甲子太郎は、頭がキレる。危険人物だからこそ、手元に置いて置いておきたいの。」


そう言いながら土方を見る千夜。ちょうど、視線はぶつかり合い、鬼の仮面を被った彼は、深く頷いた。


どうやら鬼とは、同じ考えらしい。


「土方さん!」


「総ちゃん。伊東甲子太郎は、すでに、薩摩に接触している。動向がわからないと、動きようが無いの。なら、危険でも、此処に置いて置いた方がいい。」


自らの危険より、君はまた、皆の危険を回避したいと言うの?

千夜の真剣な眼差しに、沖田が、折れるしか無い————。


山崎が、一通の文を近藤に手渡した。

それを読み進める近藤の顔は険しく、土方も、隣から覗く様に文を読み進める。


そこには、薩摩は、伊東を危険視している。関わるな。と、いった内容が書かれていた。


千夜に視線を戻せば、彼女は、先に言葉を発した。



「あいつが、私の知ってる伊東ならば、地獄よりさらに深い場所に、葬り去る。二度と這い上がれないほどの恐怖を。新選組を脅かした屈辱を————。

伊東甲子太郎の入隊を許可頂きたい。」


沖田の隣で、頭を下げる千夜。


「いいんじゃありませんか?危ないモノは、近くに置いておく。私も、千夜の意見には賛成です。ですから、私も微力ながら力を貸しましょう。」


山南の言葉に、思わず顔を上げた千夜。山南は、それを見て微笑んだ。


「貴女には、本当、驚かされてばかりだ。」


その言葉に、キョトンとする千夜



「全くや。まだ熱もさがっとらんに、いつも、いつも、一人で突っ走りよって。俺もおる事忘れてへん?」


「知恵熱って言ったのは烝でしょうが…」


「そこ、ちゃうわ!俺かて、力貸す言う意味や!」


そんな言葉、言ってなかったじゃん……。


「私も、力を貸すよ。千夜君は、頑張り過ぎだ。少しは、身体を休めなさい。」


「源さん……」

「決まりだな。近藤さん。」


そう言って近藤を見る土方。

「あぁ。皆で注意すればいい。伊東甲子太郎の入隊を許可する。」


千夜の目は、見開かれた。みんなが、力を貸してくれる。


「ありがとうございます。」


こんなに嬉しい事はない。


伊東甲子太郎、あいつが新選組を潰そうとすれば、地獄よりもさらに深い場所に叩き落す——


千夜は、沖田を見て、


「総ちゃん……。ありがとう。

格好悪いなんて嘘。格好よかったよ。それに、嬉しかった。沖田総司は、誠の武士だね。」


ヘラっと笑う千夜


「本当、どんだけ心配したと思ってるの?

目が覚めてよかった。無理しないでよ……」


お願いだから————。そう言って、ぎゅっと、抱き寄せる沖田。

まだ、身体は熱いのに、彼女は、泣き言すら言わない。


「起きないかと思った……。」

「それじゃ、死んじゃうじゃん。一緒にいきるんでしょ?」

「当たり前でしょう?」


皆を動かす、不思議な力を彼女は、持っている。本当、君は強いよ————。



江戸に向かったのは、近藤、斎藤、永倉、沖田の四人。例え、藤堂の師匠だろうが、彼を行かせるわけはない。


本当なら千夜が行きたかっただが、過度の疲労の上に、まだ熱も下がってない。


幕府からの呼び出しも急にあるかもしれない。

江戸では千夜が死んだ事になっているし、行けるはずがなかった。


「…行きたかったな……」


不満しか出てこない 。


「ダメや言うてるやろが!死人が急に出てきたら、皆んな腰抜かしてまうわ!」


そうだけども、私、生きてるしさ。


総ちゃん居ないし~。つまらない。だからって、伏せってるほど、暇でもない。

屯所に女がいるのなんかすぐにバレる。右目にカラーコンタクトをつけ包帯を巻く。片目が見えず、身寄りがない。芹沢鴨の隠し子……


そう理由づけ、前川邸に部屋を用意した。零番組は、山崎に任せ、嫌いな女の着物を身に纏う。


「…両側、切り込み入れたい。」


着物にスリットとか、意外に可愛いかもよ?

袖切って腕にリボンで結ぶとかw


「ダメに決まっとるやろが!」


動きにくいにも程がある。島原すら行けやしない。女らしく……出来るわけないのに、

なぜ、よっちゃんはこの案を提案したのだろうか?


山南さんと平ちゃんは、御所に移動させた。

接触させたくないから。御所では、山のような仕事が、彼らを待っている。


私が、用事がある時は、山崎が動いてくれる。だが、山崎も新選組の幹部だ。


この時の為に、以蔵を呼び寄せた。


坂本についていた以蔵は、捕まることなく、未だ生きていた。


長州は敵。そう周りには、思い込ませる。

屯所の出入りは自由なのに…


伊東が来ても、私、新選組隊士でもいいじゃん?

晒しをしてると、目が見にくいし。


伊東甲子太郎。私の知ってる伊東なのか、それとも違うのか。京に到着するのは、早くて……9月半ばかな。


イヤだな。どうしても過去の記憶が蘇る。


伊東甲子太郎。参謀職を用意されており、破格の扱いで迎えられた。伊東の新選組入りは目論みがあっての事であった。


「新選組の参謀の地位を利用し、遅れてきた志士の汚名を雪ぎ、組を手土産に薩長に取り入る」


胸勘定だったのである。同門の藤堂を使い山南を利用する。そのつもりであった。しかしながら、感情の起伏の激しい山南に自分の野望を露見されるのを恐れて断念。隊務放棄の山南はさらに孤立し、人間不信のまま自害する。 入隊当初から、近藤勇の暗殺を企てていたなのに、何故、新選組に入隊したのか?


そして、史実では死んだ遺体の懐から開国したい。というような文が出てきたらしい。


私は平ちゃんが亡くなった事で、訳がわからず、その事は、かなり後に知ったのだが……。


どうしてもわからない。

薩長に入隊すればよかったはずなのに、

道場を開く程の腕前。神道無念流も習っていた伊東。


何が目的なのか、どうして新選組なのか……。全ては謎……。
















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