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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
半年ぶりに帰った屯所
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血判状

千夜と慶喜は、お偉方が居る部屋に戻り、

また、屯所の話となった。

「屯所が、狭いのはわかった。」

そう、慶喜が納得したように声を出した。

「でしょ?増築って、いい案だと思うんだよね。」

確かにいい案だが、先立つモノがないのは、確か。

「狭いのは、わかってるが、前川邸を買い取れるかもわからないのに、増築の話をしてもな…」

全くもって、その通り。


「馬小屋、建てなきゃだよ?」

頂けるなら、馬は大事。しかも10頭だ。


「屯所に、場所ねぇし…。」

「じゃあ、土地は、必要だよね?」

馬の数は、別に、どうでもいいのだ。

多ければ、多いほど、馬の置ける場所が無くなる。千夜の狙いは、そこにある。前川邸の横の広い空き地。そこを手に入れ、馬小屋を建てる。それが、ケイキや松平が、贈った物ならば、新選組は、手放さない。


贈ってくれなくても、千夜が、勝手に建てて、

名前だけ借りてしまえばいい。そうすれば、

————屯所移転は、しなくなる。


八木邸、前川邸、広い空き地。

その三つでも、西本願寺の土地よりは狭いが

隊士が暮らす分には、申し分はない広さが確保できる。


ついでに、馬も手に入れば、幹部隊士が乗れるし、新選組には、いい事尽くし。


前川邸が、買えなくても、今、住み着いてるんだから、後々に手に入れたって、いい事だし、

繋げれるように建てちゃえばいいだけ。


「まぁ、頂けるなら、馬小屋は無いとなぁ。」


困るに決まっている。馬を野晒しにする訳にはいかない。


「俺が出すよ。土地と馬小屋。両方引き受けた。」


ニコッと、笑った千夜


「いや、俺も出します。新選組は会津お預かりだからね。」


ケイキは、ともかく容保まで出してくれるとは……。


「ありがとうございます。」


頭を下げるしかない。

これで、屯所移転問題を起こさずに済む。山南さんは、追い込まれない。伊東甲子太郎が、来たとしても…————大丈夫。


どんなことがあっても、誰一人、失しないたくない……。ただの、ワガママと、言われても、手段なんか、選んでいられない。

山南さんも、平ちゃんも、新選組には、いや。私自身もにとっても、 必要な人たちだから。


伊東甲子太郎。この世界のあいつも、同じなのだろうか?男を思い出し、ブルッと身震いした。考えないどこう。まだ、その時じゃない。



「でさ、みんな揃って、来る必要あったのかな?」


今頃、そんな事を聞く千夜に、皆呆れ顏を見せる。

「本当、礼儀正しい娘だな。」

ジロッと、土方を見るケイキ。


「褒めても何もでないよ?」


はぁーっと、男達が、ため息をつく。

嫌味だよ!嫌味!誰か、教えてやれと皆が思った。


「初めに言っただろ?お前に、政をやらせたいと。」

「でも、みんなで来る必要は……?」


ないよね?


「長州は、君に力を貸すっていったよね?」

「言ったけど、あれは、京に火をつけないって事だけでしょ?」


「はぁ、君さ藩主が、日本を一つにする。って言ったんだよ?そんな事を、命懸けでやってる人は、日本に、一人しか居ないでしょ?」


「………誰?」

この子、本当はバカなんじゃない?

「千夜、君だよ!」


別に、命はかけては、ないと思うけど…?


「長州はね、正式に君に力を貸すよ。全力でね。」

「藩ごとって事?力、貸してくれるの?」

びっくりし過ぎて、信じられないんだけど!


「血判状でも作る?長州は、本気だし、俺も、そうしたい。」


「私、個人と?」

「そうだね。新選組と同盟でも構わないけど、個人のがいいかな…」

私個人と……血判状……


「何故、個人なのですか?」


山南が、疑問に思い桂に尋ねた


「決まってるでしょ?千夜を、死なせない様にする為だよ。


この子、何でも、突っ込んで行くからね。自分の命は、二の次だし、新選組を信じてない訳じゃないけど、そちらにも、有効に働くかと…」


千夜の行動を見れば、近藤、山南、土方も頷けた。


「では、他の方も千夜と?」

「薩摩も力を貸す。」

「俺も力貸すきに。」


西郷と坂本までも千夜に力を貸すと言ってくれる。

こんなに、嬉しい事はない。流れた涙は、嬉し涙。


その後、長州、薩摩、坂本龍馬と血判状を結んだ。


「これで、千夜は死ねない。」

「死ぬつもりは、ないんだけど?」

「君ね、戦地に何も考えずに、いつも突っ込んでいくでしょうが!池田屋だってそうだったでしょ?見てるコッチの身になってよ!」


桂に、怒られたし…


千夜は、ケイキを見てニコッと笑った。


「私は、貴方方の力は、まだ、借りる資格がありません。」


ここで、一緒に血判状を貰えれば、国は一つ……だけど、それは違う。


「椿、君は、まだ幕府を恨んでるの?」

「いいえ。恨んだ事は無いとは、言えない。

だけど、今、血判状を貰っても、私は嬉しくとも、何ともない。」


「ちぃ、何で、だって、あんなに日本を一つにしたがってただろ?幕府を味方に出来れば、それこそ、無敵じゃねぇのか?」


「ケイキとケイちゃんが、認めてるのは、徳川椿の血であって、日本を一つにしたいと願う芹沢千夜を認めた訳じゃない。

それは、血縁だけの情けで、今、結んだ血判状と、天と地との差があるんだよ。」


「椿……。」


「今、血判したら楽だよ。とってもね、だけど、それじゃあ、私を認めてくれた人に対して、失礼じゃない?


認められるかなんてわからない。認められる自信なんか無い。でも、私はね、芹沢千夜だから。血縁だけの情けは、欲しくないんだよ。」


それは、きっと、誰も選ばない選択。


楽な方が、いいに決まっている。騙そうが、今、血判状をもらった方が動きやすい。だけど、千夜は、それをしない。



認めてくれるか、なんて、わからない。それでも、芹沢千夜じゃなくとも日本を一つにしたいと、思ってくれなきゃ意味が無いと、そう、考えているから。






































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