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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
半年ぶりに帰った屯所
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逢引——弐

「ちぃちゃんは、ただでさえ、モテるんだから、僕だって、嫉妬ばっかだよ」


「嫉妬……?」

「……………。まさか、嫉妬を知らないとか言わないよね?」


「言葉は、知ってるけど?」


………。知らないって事じゃん。


んーっと、沖田は考える。


「土方さんが、女の人とお付き合いしてたら?」


「別に、よっちゃんが幸せなら構わないよ。」


質問が、悪かった。


「じゃあ、僕が、違う女のコと一緒に居たら?」


「………総ちゃんが幸せなら…。」


構わないとは、言えない。


「でも、そうなっても、仲間でしょ?」


「仲間でも、こうして、二人で出掛ける事も、抱きしめる事も、もし、ちぃちゃん以外の女の子を好きになって、恋仲になったらしないよ。」


………それは…嫌だ……


黙ってしまった千夜。その表情は、てても悲しそうだった。

嫉妬を教える為に、少し意地悪く言ってしまった。まだ、心の傷は癒えてるようで、癒えてはいない。

ぎゅーっと、不安そうな顔をした彼女を抱きしめる。


「ごめん、少し意地悪した。こんなに、落ち込むと思わなかったから。

僕が、ちぃちゃん以外を好きになるなんてあり得ないから、大丈夫だよ。」


「……嘘?」


嘘でもないんだけども。


「でも、ちょっと嬉しい。」


えっと、全く、何を言ってるのか理解出来ないんですが……?


「ちぃちゃんが、僕の事、傷ついちゃうぐらい好きって事でしょ?」


好きだけど、どこらへんで喜んだのかが、わからない。


「好きだよ。好きだけど、結局、嫉妬って何な訳?」


「んー?自分より優れた人をねたむこと。

自分が、愛する人の愛情が、自分以外の人に向けられるのを恨み憎むこと。

自分にとって重要な人やものが他者に奪われる不安、恐怖により引き起こされる感情。

それが”嫉妬”」


「じゃあ、今、私、嫉妬してたの?」

「聞く事じゃないけど、そうなるね。」

「嫉妬って怖いね。」

「なんで?僕は嬉しかったよ。」


「嫉妬される側はね、そうかもだけど

する側は、相手殺しちゃいそうじゃん。」


「ちぃちゃん?まさか、僕殺そうとしてないよね?」


「………。嫉妬って怖い。」

「答えてよ!」

「世の中、知らない方がいいこともあるよ?」


絶対、さっき、僕を抹殺しようとしたよね?この子……。


ちぃちゃんに、嫉妬を覚えさせるのは早かった。うん。


で、多分僕、遊女なんか買ったら、即、死ねる。


覚えておこう。


「ここね、なんとなく、多摩川に似てると思ってね、ちぃちゃんを連れてきたかったんだ。」


まさか、一度来てたなんて思わなかったけど。

と、沖田は、川を見ながら言った。


「あの時は、全く見えなかった。川だとわかったけど、こんなに、綺麗な場所だったなんて知らなかったよ。」


ありがとう。


フワっと、笑う彼女。


そんな、綺麗な笑顔を見せられたら、

抱きしめられずには居られず、再度、腕に力を入れ抱きしめ直した。


閉じ込めてしまいたいぐらい、


————愛おしい




その後、また二人で町をブラブラする。

総ちゃん、どこ行きたいんだろう?


色々回ったし、小物屋さんだったり、古着屋さんだったり京で暮らしてたけど、こんなにゆっくり、町を見て回った事はない。


何気無く、歩く砂利を見ながら、砂利道ですら、平成では、珍しい。全部、コンクリートで固められてしまっているから。


古いものは、新しく、それは、全ていい事では無い。日本の良き文化は、残すべき……。


「……ねぇ、ちぃちゃん?」


いけない。また、ボーっとしてしまった。


「総ちゃん、どうしたの?」


立ち止まって、何処かを見ながら話す沖田に、首をかしげる。


「僕ね、気になるものを、見つけちゃった。」


何が?と沖田の見つめる方向を見たら、


男が、三歩歩いては、方向を変え、また三歩歩いての繰り返し。行ったり来たり。その言葉がピッタリだ。


「………。何してんの?あの人。」


呆れた沖田の声。


「さぁ?」


立ち止まってしまったのは、知ってる人だからだけども、声をかけるべきだろうか?と、躊躇する二人。


何してるかなんか、私に、わかるわけない。見てしまった以上、放置は出来ず、


「桂、君こんなとこで、何、ウロウロしてるの?斬られるよ?」僕に……ボソ。


どうにも気になったらしい沖田が声をかけた。


最後ボソっと言った言葉は、千夜には聞こえなかったが、行ったり来たりした人物がこちらを向いた。


「千夜!ちょうどいいところに!」

「………。僕は無視なわけ?」

「あぁ、沖田、とりあえず一緒に来て。」

「「はぁ? ! !」」

焦った桂に、ズルズル引きずられ、ついた先は、


「…長州藩邸……」


客間に通され、お茶まで出されたが、何事?


わけがわからない。


「逢引の最中に、邪魔するなんて、信じられない。」と、沖田。


「ごめん、ごめん。ちょっと問題があってね。

どうしようか、迷ってたんだよ。」


桂も、千夜の病が酷かったのは知っていたから

伝えるかどうか、あんな道端で、悩んでたらしい。かなり目立ってたのは、本人は、気付いていないのだろう。


「桂、何があった?」

「千夜が言ってた、禁門の変が、

————起こってしまうかもしれない。」


















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