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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
半年ぶりに帰った屯所
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逢引


沖田は、千夜を見て、視線を泳がせ、前を向く。なんだか、隣に居る人が、知らない人みたいで、ソワソワしてしまう。

ちぃちゃんだとは、わかってるんだけど。


総ちゃんは、白粉とかの匂いが嫌い……化粧しない方がよかったかな?


隣で、ソワソワする沖田を見て、千夜は、足を止めた。



「総ちゃん……。やっぱ、嫌?」


沖田が、ソワソワしてるのは、千夜の女姿を見慣れてないから。なのに、少し俯いてしまった彼女は、不安になって、沖田にたずねた。


「嫌じゃないよ!イヤな訳ないでしょ?

ただ、ちぃちゃんが綺麗で、緊張してる。」


それだけだよ?と、沖田は、千夜の目を見て話した


「……えっと……?」


ドキドキドキドキ。ふいっと、沖田から視線を逸らす千夜の頬は、赤く染まり、俯いてしまった。


それに気づくと、ニヤっと、沖田は、口角を上げる。

覗き込むようにして、マジマジと千夜の顔を見る沖田は、悪戯っ子の様な顔をしていた。


必死に、目を背けてるのに、ジッと見つめる彼

そんな見られたら、恥ずかしいんだけど?

と、文句も言えない。


「アレ?ちぃちゃん。耳まで真っ赤だよ?」


耳元で、囁かれて、バクバクと、心臓がうるさいのに、私の心臓、止める気ですか?


こうなると、沖田は、楽しくて仕方ない。


「ちぃちゃん。」


ふぅーっと、耳に息を吹きかけられる。


ピクンと反応すると、ニヤニヤと沖田の笑みが、増した。


何処のいじめっ子?と、聞きたくなる。


さっきまで、ソワソワしてたのは、何処の、どなたでした?


千夜の中では、沖田に、質問攻めだが、声に出せない。



「かわいい。」っと、千夜の耳元で言う沖田

一度、豆腐の角に頭をぶつけて……と、物騒な事を考えてしまった。


「総ちゃん、甘味屋さん行こう。」


とにかく、この状況から、一刻も早く脱したかった。


町の真ん中で、かなりの注目を浴びている。今もまだ、周りの人達の視線が痛すぎた。


千夜も顔が、真っ赤だし、近くに甘味屋さんを目にして提案した。


「せっかく、楽しかったのに……。」


と、口を尖らせるが、楽しかったのは、沖田だけだ。


「じゃあ、総ちゃんは、行かないんだね?」


と、甘味屋へと、先に足を向けてしまう千夜。

慌てた様に、沖田は、後を追いかけながら


「行きますよー。」

と、口を尖らせながらも、


「あそこのお店は、大福が美味しいんだよ。

ちぃちゃんは、食べた?」


甘味の情報をくれた沖田。

本当、甘味には目がないんだから。


「食べた事ないよ。」


大福は、食べては無いが、行ったことはあったんだ。平ちゃんと、みたらしを食べた甘味屋だったから。



「じゃあ、早く行こう。」


手をとられ、少し早足で店に入った。

甘味屋さんに入ったものの……沖田の座った位置に、千夜は、首を傾げた。


普通、向かい合って座るよね?


二人なら、さ。


何で、総ちゃんは、私の隣に、座っているのかな?


注文した、大福とお茶を前に、少し戸惑う千夜。


「ちぃちゃん。」


ニコニコと、笑みを見せる沖田。


「なに?」

「手見せて?」


手?右手だよね?


池田屋の時に、負傷した傷だ。


まだ、晒しは、巻いてある右手。

見た目も、ちょっと、よろしくないから、晒しをしてるだけで、痛みはない。


そっと、晒しをとって傷をみた沖田は、取った晒しを自分の懐にしまった。


「ちぃちゃんに、贈り物。」


そう言って、真新しい桜色の手拭いを手に巻きつけてくれた。


贈り物って、なんか今日は、特別な日だっただろうか?


ジッと、綺麗な桜色の手拭いを見て考えてみるが、思い当たる節はない。


沖田の顔を見て、少し戸惑いながら


「ありがとう。」


贈り物の意味は、わからないけど嬉しかった。


「どういたしまして。」


にっこり笑った沖田。

大福にかぶりつく姿は、本当、大きな子供


だけど、それすら愛おしい————…。


「ちぃちゃん、そんな見られたら、穴が開いちゃう。」


さっき、私を散々見といて、そのセリフはどうなの?


口の端に餡子をつけてるし、そっと、彼の唇の端から餡子を取って食べたら


ボンッと、総ちゃんが、赤くなった。


「かわいいね、総ちゃんは。」

「かわいいって、僕は、男だよ?」


ダメなのかな?男の人に、かわいいって…

千夜も、大福を食べるが、大きい大福。

少食の千夜は、食べきれないに決まってる。


「総ちゃん、食べて……」


食べかけで、申し訳ないけども…。

ヒョイっと、総ちゃんの前に大福を持っていく。返事も聞かないで。


「そこまでしたら、食べないとだよね?」


ちょっと、呆れた様に言われたが、パクっと、食べてくれた。



甘味屋を出てから、ぶらぶらと、行き先すら知らないけど、総ちゃんと一緒にお出かけは楽しい。


そして、しばらくして、二人の姿は、川辺にあった。ザッザッと、二人の足音。水が流れる音が聞こえてくる。いつだか来た川に、連れて来てくれた。


あの時は、真っ暗で一人だった。


今は、違う。キラキラと川が日に照らされて

周りには植物がたくさんあって、立派な木まである。

そして、隣には、手を繋いでくれる愛しい人の姿。


「ここ、こんなに、綺麗だったんだね。」

「え?ちぃちゃんココ来た事あるの?」

「前に、新選組なんて捨ててしまえばいいって言った時、ココに来た。」


ああ、あの時ね。と、沖田は、納得した様に、うなづいた。


「でもさ、何で、茶屋に居たの?」


今頃ながら、思い出して気になった沖田


「……んー。わかんない。橋の下で、寝ちゃって、気付いたら、稔麿と布団に入ってたんだよね。」


「は?高杉と桂は?」


「後から来たよ?総ちゃん達が踏み込む、ちょっと前に……。」



頭を抱えた沖田


「えっと…?…総ちゃん?」

「今更、後悔の真っ最中です。」

「なんで?」

「僕だって、行ったことないのに!

ちぃちゃんはね、危機感ってものを持って?」


悲願されても……。行った事ないって、何処へ?


「えっと…。ごめんなさい?」


はぁ。ため息を吐かれてしまった。























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