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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
半年ぶりに帰った屯所
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悲しげな笑み

開けっ放しの襖から、「総司。」と、声をかけた。


部屋の隅に頭を抱え座り込んだ沖田は、視線だけ、土方に向けた。


「なんです?土方さん。笑いにでも、来たんですか?」

全くもって会いたくない人物に、不機嫌丸出しで、声を出した沖田。


コッチも、不貞腐れかよ。

はぁ。何度、ため息するんだよ、俺は………。


「ちぃなら、俺の部屋だぞ。何があった?」

「ちぃちゃんに、聞けばいいじゃないですか。」


僕に、聞かないでくださいよ。

「話さないから、お前のトコに来たんだろうが!」

「ほっといて下さいよ。」

「ほっといたら、仲直りできんだな?」


土方の言い方に、沖田は、眉間にシワを寄せた。

「嫌な人ですね。」

「俺は、ただ、聞いただけだろうが!」

「…………できません。僕、間違ってないですし。」


二人揃って、同じ事、言ってやがる。


「あのな、俺だって、忙しいんだよ。なんで、恋敵のお前の仲直りなんか、手伝わなきゃ行けねぇんだよ!」


「仕事したらいいじゃないですか。」


どんだけ、こいつら似てんだよ……。


「じゃあ、俺が、ちぃと寝るからな。」


そう言って、土方は、沖田の部屋を出ようとする。


「だ、ダメです。」


喧嘩してようが、それだけは、嫌な沖田は、土方の思惑どうりに、彼を呼び止めてしまった。


「だったら、話せ。」


う……はぁ。


沖田から聞こえた、ため息に、ため息吐きたいのはコッチだ!と、土方は思う。


沖田は、本を見せながら、土方に、千夜が、下関戦争に行くつもりだ。と、話した。


幕府も、どうやら行くらしく、新選組も出動要請が出る手筈だ。という事を話し、千夜が、殺して。と言った事も、自分が、殴った事も、話した。

土方は、少し考えながら、


「まぁ、ちぃの言い分も、わかるがな。」



「なんで、わかるんですか!殺してって、言ったんですよ?」


「あのな、言葉を選ばなかった、ちぃも悪いが、あいつが、幕府の人間も、俺らも、巻き込むのと同じなんだろ?」


土方も言葉を選んでいない。


「………。巻き込むって…。まぁ、そうなりますね。」


「そこで、誰かが死ぬかもしれない。それは、ちぃにだって、わからねぇ訳だ。一緒に行こうと、行かまいと、それは、変わらない。


それでも、行って、誰か、死ぬのと、行かないで、誰か、死ぬのじゃ、全く違う。

お前、近藤さんが、もし、もしだぞ、自分の居ない所で、死んだとしたら、どう思う?」


やたらと、もし。と言う、土方。


「自分が居れば、守れたんじゃないか?」


と、誰もが思う。強い人ならば尚更、そう、思ってしまうもの。


「ちぃだって、同じだって事だ。」

「でも、ちぃちゃんは、病気で————」


「病んでるのは、心で、身体じゃねぇだろ?

ちぃの性格なん、今に始まった事じゃねぇだろ…

あいつは、言い出したら、曲がらねぇ。誰が、なんて言ってもな。」


「土方さんは、知らないから、ちぃちゃんが、部屋に戻ったら、倒れるように寝るんですよ?」


「だったら、テメェが、ちぃを曲げるか、下関戦争に連れて行って、自分で守るか、どっちかしかねぇだろ! ?」


「守るって、無茶も、大概に言って下さいよ。」


「無茶か、やってみてから言え。お前、そんなに、弱えのか?」


弱いとか、そういう問題じゃない。

「ちぃちゃんは、オナゴなんですよ?」


「都合のいい時だけ、女にしてんじゃねぇよ。

テメェは、ちぃに勝ちたくて、ずっと、その背を追っかけてたんだろうが!

それとも、なにか?ちぃは、お前と恋仲になったから弱くなったのか?」


「……そうじゃないです。」


「あいつは、わかってんだよ。お前が、心配してるのなんか…。今まで、あいつは、どんなに、キツイ事言われても、絶対、部屋から出てく事なんか無かった。

あいつは、自分が、間違ってるなんて、もう、わかってんだよ。お前も、そうだろ?総司。」


「……僕は、間違って無い。」


「だったら、何で手を出した?自分の思い通りに、ならねぇからだろ!

そんな事で、いう事聞く女じゃねぇぞ、ちぃは

そんな女がいいなら他へ行け。」


「…………」


「まぁ、俺は、ちぃが、行きてぇなら連れてくがな……」


「どうしてっ!」


沖田の問いに、土方は、ニヤリと笑う。


「手元に置いといた方が、安心だからだよ。

置いていって、勝手な行動されるより、連れて行った方が、いいに決まってるだろ!」


どんだけ、過保護なんですか?

……この人……


「下関の事、考えてるなら、あいつは、自分の身体の事も、考えてるだろうよ。

ついて行くと言って、足引っ張るほど、ちぃは、バカじゃねぇ。

少しは、信じてやったらどうだ?」


……信じて……


『ちぃは、必ず、かえってくる。』


山崎君も、言ってた……。


『自分の身体の事なんか、知ってるよ』


ちぃちゃんは、自分の身体の事を知ってた。


『ちぃは、薬持ってる』

『足引っ張るほど、バカじゃねぇ』



ちぃちゃんは、もう、病と向き合ってる。


僕が、知らなかっただけで……

ちぃちゃんは、もう戦っている。自分の病と……


土方が、部屋から去り、しばらく考える沖田。


土方さんの所で、寝て欲しくないし、ちぃちゃん心配だし、結局、僕が折れなきゃいけない。


信じて……。って、別に、ちぃちゃんを

信じてない訳じゃない 。


みんな、僕より、ちぃちゃんをわかってあげてるから、焦るし……ムカつく……


大体、土方さんが何か言うと、屁理屈にしか、聞こえないんだよ。

ブツブツと、文句を言いながらも、土方の部屋に、千夜を迎えに行く沖田。


部屋の前まで来ると、立ち止まってしまう。


はぁ。この部屋、どうやって入ってたっけ?


気まずいからか、部屋の入り方すら忘れる沖田。


スッと、普通に入ったら、土方に、驚いた表情で見られてしまう。


「なんなんですか?失礼にも、程がありますよ。」


いや、何も言わずに、入って来て言う台詞がそれ?


まだ、スパーンッと、入ってくれた方が…いい……のか?ん…?


まぁ、いいや。

千夜は、壁に寄りかかって、窓の外を見ていた。ボーっとして、微動だにしない。


千夜の病は、夜が一番酷い。


沖田が、近くに歩み寄る。

「ちぃちゃん?」


「…ん?」

声に反応して、視線を沖田に向けた千夜

「あ、総ちゃん。」


そう言って笑う。少し寂しそうに、沖田は、悲しげな笑みを浮かべる。

「部屋、帰ろうか?」

「うん。」


彼女の手をとり、


「土方さん、ありがとうございました。」


頭を下げた沖田。少し驚いた土方だったが「ああ。」と、一言だけ返した。


それを聞いて、沖田と千夜は、土方の部屋を後にした。






























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