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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
半年ぶりに帰った屯所
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千夜の過去

ちぃちゃんに、そう告げた後、隊士達が通る場所に、ずっと、いる訳にはいかず、沖田は、自分の部屋に、彼女の手を引いて戻った。


少しだけど、痩せた彼女。

僕は、決めた。

ちぃちゃんの過去も、未来も、一緒に背負うと。いい事も、悪い事も全部————。


自室につき、畳に座ると、立ったままの彼女に、手を伸ばした。


「おいで。」


と言えば 、クタッと僕の胸に倒れ込むみたいに身体全てを預け、座り込む。


外では、本当に気を張って、平隊士に、病だと気づかれないように務める彼女。これも、組の為にやってる事だ。辛い、苦しいとは、言わない事を、僕は知っている。


「ちぃちゃん。教えて?これから起こる未来を。」


ビクッと、千夜の体が反応する。


「言ったでしょ?僕にも背負わせてって。

軽い気持ちで、恋仲になったんじゃないよ?

君の背負ってる苦しみも、僕に、分けて。

一緒に、戦おう。————生きる為に。ね。」


————生きる為に?

これから、起こる事を、彼に話す。


大まかに。では無く、ちゃんと話した事は、一度もない、


彼女の目が、僕を見て揺れる。

言うか、言わないか————迷っている。そんな、表情。


「僕は、信用できない?」


首を横に振る千夜。そんな事は思ってない。

ただ、新選組の未来も、幕府の未来も、全く明るくない。

この先、次々に仲間が、死んでいく。


そして、伊東甲子太郎が入隊する。その男が、

千夜を恐怖へと、落とし入れる。

毒を盛られ、土方の弱みだと、罵られた過去が、頭から離れてくれない。


「ちぃちゃん?」


一緒に、戦おう。そう、言ってくれた、総ちゃん。千夜は、ぎゅっと唇を噛み、決断した。

貴方の言葉を、信じる。


「話すよ。これから、何が起こるか。」

「うん。」


千夜は、ゆっくり話し出した。言葉を選びながらゆっくりと、慎重に…。しかし、彼女の身体は、震えていた。少しでも、落ち着く様に、抱きしめながら話しを聞いた。

怖くない訳ない。歴史を変えなければ、これからの未来は、彼女にとっては、過去の出来事。

過去を変えたがっている千夜。それは、何を意味するか、沖田は、わかって居た。


でも、話してもらわないと、沖田は、わからないまま。次々に、仲間の死を話していく彼女。唇を噛み締めながら、新選組の歩みを聞いた。


覚悟は、したつもりだった。

それでも、彼女から聞いた新選組の未来は絶望的で、普通順番でいけば、近藤さんが、先に逝ってしまうのは当たり前。だけど、やはりそれは、もっと、もっと、後だと思っていた。


憧れた人が、罪人として斬首されるなんて、誰が考える?


考えただけで、涙が流れた。


「……ツッ…」


新選組の話しを終えて、ちぃちゃんが、僕の涙を拭う。

————辛すぎる。


こんな事を、一人で抱えてたんだ。だから、必死に歴史を変えようとしていたんだ。自分が傷つくのも、お構いなしに…


「総ちゃん?」


大丈夫?と、心配して、僕の顔を覗き混んでくる千夜。


「大丈夫。まだ、起こった事じゃない。君の事を話して?」


「私の事?」


「そう、生まれてから、この世界に来るまで。君の話しが、聞きたい。」


キョトンとしてから、ちぃちゃんは、話し出した。記憶のある四歳の頃からの話しを、ゆっくり、話し出した。


土方さんに出会う前の話しも、出会ってからの話しも、浪士組結成、それに、ちぃちゃんは、一緒に参加した。


壬生浪士組になって、芹沢暗殺も現場に居たと

梅さんが、ちぃちゃんが、初めて殺してしまった人間だと……


ちぃちゃんは、二度も殺さねばならなかった。

彼女の望みを叶える為に————。



それだけでも、辛いのに、梅の死は、始まりに過ぎなかった。


芹沢派の暗殺に関与し、島原の潜入。島原で男達が何を求めてるかなんて僕にだってわかる。


入ったばかりのちぃちゃんは、なんとか肌を売らずに情報を得ていた。だけど、そんなのが続くはず無く、何人かの男に、侵された。


———その男共を、斬って殺してしまいたい。


そんな、黒い感情を押さえ話しを聞いた。


抱きしめたままのちぃちゃんを、離す気は、全くない。

そして、池田屋事件は、僕が見たものとは、全く違った。

吉田もそこで死んだのだと、殺したのは、————僕。


吉田は、鬱陶しいと思うけど、嫌いではない。


何処と無く、吉田は、僕に、似ていると言うちぃちゃん。どこら辺が、似てる?と聞きたくなる。

えっと。と、珍しく戸惑った、ちぃちゃんを見て、吉田との、間に何かあったんだと悟る。


やっぱり、殺しとけばよかった。


禁門の変と呼ばれる長州藩が起こした騒動。

京に、火を放ち、町が燃えた。京の都は、火の海となり、ただ、それを見ていることしかできなかった。と、悲しそうに言った、彼女。


江戸で、隊士募集をした平助が、師匠である伊東甲子太郎を新選組に連れてきたという話しをしていて彼女は、話すのを止めた。


ちぃちゃんに、何かあったんだ。きっと。

少しして、話しを再開させた千夜。


その男に、土方さんの弱点だと女のくせにと罵られ、毒を盛られた。そう言った。


それが、毒を少しずつ服用していた理由。か。


さっきも、新選組の話しをしてくれた時にも聞いたけど、山南さんの死、ちぃちゃんは、山南さんの脱走を止めたかったのに、できなかったと、そう言った。


屯所移転問題で西本願寺を諦めて欲しいと、土方さんにも言ったが、他に場所が無く、結局、脅す形で新たな屯所の場所は、————西本願寺に、決まってしまった。


御陵衛士の結成。伊東甲子太郎らの離脱。

平助とはじめくんも、新選組から去った。


はじめくんは、間者だったみたいだけど、ね。

油小路事件で平助は死んだ。

ちぃちゃんも平助を守ろうとしたが、間に合わなかったと、涙ながらに口にした。


鳥羽伏見の戦い


源さんも山崎君もちぃちゃんの目の前で死んでいった。


なにもしてあげれないもどかしさ。観察方であった、ちぃちゃんは、山崎君の死で、隊士達の治療を一人でやる事になった。戦いにも出て、隊士の治療。死んで欲しくないのに、隊士は、力尽きていく。


なんのために、戦ってるのかわからないまま、

誰の為に、みんな死ななきゃいけないのか。

と、そんな事を考えながら、治療を続けた。


寝る時間なんか、なかったと……



























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