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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
半年ぶりに帰った屯所
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決めつけないで足掻いてごらんよ。

朝餉の支度を少し手伝い、先に切り上げた千夜は、縁側に腰を下ろした。

今日は、朝稽古がない。朝日はすっかり顔を出し終え、丸い太陽が辺りを照らしていた。


「あー!千夜さーん。」


ブンブンと手を振り、こちらにやって来た零番組の面々に、朝から元気だな。と、思いながらも「おはよう。」と、挨拶をすれば、


零番組「おはようございます。」

彼らからも、挨拶が返ってきた。当たり前。だが、それは、とても心地の良いものであった。


「千夜さん、昨日、沖田組長の部屋で寝たんですか?」


なんとも、ストレートに聞いてくる安藤に、苦笑いをする千夜。


「あー、布団かけ直したら、寝ぼけて捕まった。」


さも、何もなかったと言ってみる。何もなかったのだけども…


「沖田組長ならあり得る……」

と、納得してくれたが、中村だけは強張った表情をしたまま、千夜を見つめていた。


わかってるんだよね。未来を知っているから。

総ちゃんが、病にかかったんだと———


「お前ら先行ってろ。」


中村が他の隊士に声をかければ、その指示に従う、零番組の隊士。その背が見えなくなって中村が千夜の隣に座った。


「沖田さん、かかってしまったんですか?」


何にとは、言わなかった。


「……うん。」

「そう、ですか。」


千夜を見てから、視線を空に向けた中村。


「同じ空なのに、違う世界。俺が知ってる新選組には、千夜さんは居ませんでした。零番組も無い。邪魔なら斬り捨てる。

嫌だったんですよ。————人を殺すの…。

嫌いだったんです。新選組が。」


突然の中村の話に、なんて言っていいのか、わからない。


「新選組から離れて、結局、行き着いたのは、人を殺す仕事。

あの時、近藤さんを 暗殺しようとしてたんじゃないんです。

————狙いは、「私でしょ?」


あははっと、乾いた笑い声が聞こえた。

笑えないよ?キョトンとした顔で、中村を見てしまう。


「やっぱり、気づいてたんですね。」

「まぁね。」

「けど、今は、違います!俺が変われたのは、千夜さんのおかげです。千夜さんが居たから、貴方の様に生きたいと思ったから、今、新選組が嫌いじゃない。人斬り集団と言われようが辛くない。」


「それは、中村が、頑張ったからでしょ?」


「違いますよ。俺は、何にも頑張ってなんかない。貴方が、俺の道を作ってくれたから、前に進めるんです。」


中村の道を作った?私が?


「私はただ、間違った事を、して欲しくなかっただけで。」


「それですよ。間違った事を間違ってるとは

普通言えないんですよ。怖いから、我が身が可愛いから。」


我が身が可愛い?そんな事を思った事もない。


「私、おかしいの?」


はぁ。と、中村から聞こえたため息。


「褒めてるんです!何を悩んでるんです?」


何を?悩みなんて、抱えきれないぐらいある。


「そういえば、池田屋主人は?」


突然思い出した、池田屋の主人の事。千夜が治療を受けていた時には、姿が見えなかった。


「すいません。俺がやりました。拷問されて死ぬなんて、惨すぎて。」


「……そう。」


歴史を知ってるからこその決断。これはきっと、間違った事だろう。だけど獄舎に入ってしまったら、出てこれない。中村なりの情けだった。


「すいません。」


「何、謝ってんの?私なら、中村と同じ選択をしたよ。」


「おい。朝餉の時間だ。」


はじめに声をかけられ、ビクッと体を揺らした二人。食欲なんて無いんだけど。

少しだけ、中村から元気をもらった気がする。


中村は、自主訓練をしに行った零番組を呼びに

屯所を出て行ってしまった。


朝餉は、結局、喉を通らず、平ちゃんに食べて頂いた。高杉達の姿は、朝餉の席には見られず、そんなに、気にする事なく、沖田のお膳を見れば、やはり残していた。体調は、回復しない。か。

コホンッコホンッと、たまに出る咳に、頭を悩ませる。


「総司、風邪長くないか?」


彼はヘラッと笑って

「夏風邪ですからね~」と、何時もの間が抜けた様な声を出す。


「本当に、夏風邪かよ?」


土方が問うが


「嫌ですね。自分が風邪にならないからって

八つ当たりはよしてくださいね。土方さん。」


「八つ当たりなんかしてねぇーよ」

「なぁーんだ。つまらない……」

口を尖らせて文句を言う沖田。


視線が合うと思った時、千夜は、沖田から視線を外した。



朝餉も終わり、お膳を下げ様と空いた席を見る。


零番組が帰ってない?


中村の姿も無いと言うことは、呼びに行ったまま帰っていない。という事だ。もう、帰っていても、おかしく無いのにな。


スパンッと勢い良く空いた襖。開けた人物に視線が集まる。黒装束の山崎の姿がそこにあった。


「————隊士が斬られた!」


片付けようとして、手に持ったままのお膳がゆっくり、畳へと吸い込まれる。


ガシャンッお膳なんか、持っていられなかった。畳に落ちた皿や器そんなのには目もくれず、出口に走った。


バシッと腕を取られ、私の足は、強制的に足を止める。


「烝!離して。」


「あかん!相手は、会津や。」


その言葉に、上がりかけた腰が再び畳へと戻す隊士達


「だから、隊士を見捨てるの? 何で、誰も動かない!」


仲間が危ないのに?どうして?

たかが、会津の仕業だと知っただけで、誰も動こうとしない?仲間って、そんなモノなの?


「ちぃ!会津にたてつく事は、出来ない。」


「何で!仲間が危ないのに何もするなって?

そんな事をするぐらいなら、

————死んだほうがマシだ! !」



キッと山崎を睨みつけ、鳩尾を狙うが

アッサリかわされる。腕は離してくれない


————ちぃちゃん、僕は死んじゃうんです。


なんで、わからないの?会津が私達に何をしてくれた?


「どうして?はじめから無理だと決めつける。

どうして、足掻こうとしない!!」


決めつける前に、足掻けよ!どうにかしようとしてよ!


これじゃあ、ただの犬だ。幕府の犬。

ダメだと言われたら、大人しくして、よし。と言われたら、動く。そんなの可笑しいよ。


こんな所で、泣いてる場合じゃないのに、涙は流れていく。


「ちぃちゃん。」


「千夜君、隊士なら————」


「隊士は、駒でも部下でも無い!あいつらは

————私の大事な友だ! !代わりなんかいやしない!」


ドスッと、山崎の首元を右手で殴り刀を右手に素早く巻きつける。赤くなった手なんて、どうでもいい。下駄すら履かずに、千夜は走り出した。


「ちぃちゃんっ!」

「ちぃ!!」


背後に聞こえる声は無視した。場所なんか知らない。行くとしたら壬生寺。














































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