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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
半年ぶりに帰った屯所
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麻酔と縫合

「なに企んどるか知らんけど、まぁええわ。

さっさと、縫合するでぇ。」


「ココでやるの?」


ココで、みんなが見つめている、この部屋で・・・。


「どこでも、同じじゃない?」


と、あっけらかんと言い放つ千夜に、皆が脱力する。確かに、そうだけども………。


少し乱暴に、千夜の手の晒しを取り始めた。


痛い、イタイ、いたい!


絶対ワザとだよ!


晒しが取れてみると、やっぱり、見た目は、グロかった。


「痛そう。」

傷口を覗きながら、沖田が口を開く。

痛いってもんじゃありません。半泣きです。


「ちぃの指取れるんじゃねぇ?」


「骨があるってば!」



そんな言葉も聞いていない山崎は、テキパキと注射を打つ。


「痛い!」


「はい。はい。」


千夜の言葉を軽く流しながら作業する山崎。


身体に流れ込んでくる薬。冷たい感覚が気持ち悪い。しばらくしてから、山崎は千夜の傷を縫い始めた。千夜の手の傷を、ガン見する歴史上の人物達。


「痛くないの?」


麻酔が効いてから、痛い。を言わなくなったからか、沖田が千夜に問う。


「麻酔が効いてるから、全く痛くはないよ?」


まぁ。可笑しな光景だけども。見てる人のが痛そうな表情。見なきゃいいのに……。


縫い終わった手を、晒しで、ぐるぐると巻きつけられる手。本当、中村に下手というだけはある。——…完璧


「右手、使ったら、あかんからな。」


うっ!


「————。はい。」


右手使えないなんて、最悪である。



「千夜さん!何も、手拭い口に突っ込まなくても! 」


突然、文句を言いだした中村。縫っている間は、おとなしくしていてくれたらしい。


「ごめんごめん。つい…」


「”つい”じゃないですよ!」


勘弁してくださいよ。と、呆れた中村。


「んなこたぁ、どうでもいい。ちぃ、ワザと捕まったって、どういう意味だ?」


ああ、まだ、話し続いてたんだ。


「高杉が、屯所の周りをウロウロしてたのは知ってたからね。なんか、あるんだなぁって。

で、 烝に、もしなんかあったら絶対帰ってくるから探すなと」


言ったんだけど。————


ゴツンッ

「————!痛い!」


「お前はっ!」


今日、何発、叩かれればいいの?


「山崎、だからって、見張りしなかったのか?」


「———すんません。睡眠薬盛られました。」


「………」


ギロッと、土方が千夜を睨む。


もう、拳骨は頂きたくない。頭がもっとバカになる!


山崎は、見張りをしなかったのではなく、できなかったのだ。千夜のせいで———。


「だから、ワザとって言ったじゃん。」


まさか、誘拐されて、洗脳されちゃうとは

思わなかったけども・・・


「俺ら、必死に探したんだぞ?」


永倉と原田が声を揃えるが、


「すいません。」


謝るしかない。一人で、どうにかなると思ったが、高杉の腕を逃げ出すことは出来なかった。


「洗脳されたんでしょ?」

と、沖田


「あれは、確かに洗脳だけども、忘れたのは、

新選組が私の居場所じゃないって事で、みんなの名前は知ってたよ?」


「で?いつ思い出したんだよ。」


「三月?」


「今、六月だぞ!」


存じ上げています。


「そんな早くに、記憶戻ってたんだ。」

と、長州の三人


「なんで、さっさと、戻ってこねぇんだよ!」

頭を抱えながら、呆れた様に土方が千夜に問う。


「だから、池田屋事件を止めたかったの!

それに、新選組の情報なら手に入ったし、なんかあれば、簡単に戻れたよ。」


「千夜?新選組の情報って、長州は、間者は出してないよ?」


「小春。」


ビクッと土方の肩が揺れる


「小春って、土方さんの馴染みじゃ!」


「余計な事を、言わなくていいんだよ!」


慌てた土方


「そこから、情報がもれたんやな。」


と、納得した烝と幹部隊士達は、土方をジト目で見つめた。


「もういいじゃん。眠いよ。」


目を擦りながら、言い放つ千夜に、反省の色なんて全くない。


幹部隊士「少しは反省しろ!」


怒られたし


「 I asked after Nakamura

(中村、後は頼んだ)」


「嫌です。」

「 Stingy person(ケチ)

「俺らに、わかるように話せ!なんで、急に、異国語にするんだよ!」

「気分です。」

「………」


はぁ。


「わかった。わかった。お前ら、順番に風呂入って今日は休め。」


やった。


ギロッ

「話は、まだ、終わってねぇからな。ちぃ。」


ギロッと睨まれたが千夜は、動じない。


「マジですか…」


その後、千夜は、鬼に散々怒られ、正座してたから足がしびれまくり、動けなくなった千夜は畳に倒れ込んだ。


「ちぃ?」

「………」

「こりゃ、寝たな。」


スースー


やっぱり。

「ったく。」


広間に桂らの布団を敷いて、千夜を抱き抱え、自室に戻った土方。


どんだけ、お前に会いたかったか、知ってんのかよ。眠ってしまった千夜を、ぎゅっと抱き締める。まだ、赤く汚れたままの土方は、

布団を敷いて、千夜を寝かせ、自らも風呂に向かった。



ツンツン


「やっぱ、ちぃちゃんは可愛い。」


寝ている千夜の頬を突く沖田


「沖田さん、ちぃが起きてまうやろ?」


呆れた様に言う山崎


「だって、会いたかったんだもん。」


——だもんって。


男に言われても、全くもって可愛くない。


「やっと、あの三人が、広間に行ってくれたのに、次は沖田さんって。」


あの三人とは長州の方々だろう


「山崎君だって部屋に来たでしょ?」

「俺は、晒しを変えに来たんや!」


寝ている千夜の頬を突くために、副長室に来たわけではない。


同じにされては困る。ちょっと、ツンツンと、やろうとしていたのは、秘密だ。


ジロッと、沖田を見てから、手の治療をする山崎。


「それ、跡になる?」


手の傷を見ながら沖田が問う


「なるやろな。」


手に新しい晒しを巻いていく山崎


「手は———。」


それ以上は怖くて聞けない。


「………」


山崎も答えない。池田屋で刀を握っていたのは、見た。


だが、大事な刀を投げつける程に 千夜には余裕が無かった。


そんな事は、今まで無かった事


どれだけ、刀を大事にしてたかなんて、二人も知っている。

千夜が投げたのは、———芹沢鴨の刀だったから。
































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