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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
半年ぶりに帰った屯所
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申し訳ありませんでした。



池田屋から帰還の途中に、宮部と別れて、屯所に向かう新選組。


「ねぇ、千夜。これ、絶対おかしいよね?」


そう、文句を言うのは吉田で、歓迎すると言いながら、吉田は、捕縛された人の様に縄で巻かれていた。


確かにおかしいが、千夜とて、両サイドに腕を掴まれてるし、何も言えない。


囚われた宇宙人?みたいな感じになっている。

なんで、桂と高杉だけ普通に歩いているのか?


屯所に帰ったら、確実に叱られるよね。これ。


土方に視線を向けてみるが、ちらっと見て、再び視線を前に向けてしまった。


はぁ。と、ため息の後、千夜は、行く方向の空を見上げた。


————今日の朝日は、すごく綺麗。


朝日に照らされた町中。

いつもと何ら変わらない筈なのに、そう思ったんだ。

たくさんの人が、死んでしまった。千夜が銃で撃った人も………。それでも、守った命もあった。

死んでしまった人は、どんなに願っても生き返りはしない。


もし、生まれ変わりがあるのなら、次の世は、死んでいった志士達の為に平和な世を。新たな日本を必ず、創り上げてみせる。———必ずね。


屯所に着き、みんな疲れてるから解散。とはならず、広間に集まった新選組。


「申し訳ありませんでした。」


局長である近藤の前で三つ指を付き、頭を下げた千夜。

例え、初め連れさらわれたとしても記憶が戻ってから、帰らなかったのは千夜が決めた事。


迷惑をかけたのは事実。最悪、脱走ととられても仕方がない。


目の前に座った三人の男。近藤、三南、土方


右隅には幹部隊士が座り、後ろには平隊士が勢ぞろい。桂、吉田、高杉は千夜の後ろに座っていたが、まさか、千夜が頭を下げて謝るとは思わなかった。しかも三つ指をついて。

しばしの沈黙の後、ガハハっと笑う目の前の男。


「近藤さん?」

「千夜君、ご苦労だったな。」


————ご苦労、だった?

「え?」

思わず顔を上げたら、山南さんと目が合った。

ニッコリと微笑む彼は、仏の様な笑みを千夜に向けた。まるで、大丈夫。そう言っているかの様に。

「敵を騙すには、まず、味方からっていいますからね。」


何を言っているの?


「千夜君はな、長州に間者として潜入してもらっていたんだ。」


そんな事は、全くしてないのに。長州の情報なんて、教えてもないのに、 この人達は、局中法度に触れないように、切腹をさせないように、————こんな嘘を……


桂達も、千夜が、そんな事をして居ないのは知っていた。だから、山南と近藤が嘘をついているんだと悟る。


「長い間、すまなかったな。」


そう言って、笑う近藤と山南の表情を見て、千夜は、頭を下げた。流れ落ちる涙が、畳を濡らす。


ヒクッ

「……ありがとう…ございます。」


本当に、ありがとう、ございます……、


山南が千夜の近くまできて、あんまりにも、

千夜が泣くから手拭いを渡してくれた。


「よく、帰って来てくれました。あなたが居ない屯所は、お通夜の様でした。」


それは、言い過ぎです。山南さん。


「まぁ、千夜君も戻ったし、よかったなぁ、トシ。」


そこで、俺に振るのか?よかったには、良かったがまだ、聞かねぇといけねぇ事はあるんだよ。


まぁ、近藤さんと山南さんが機転を利かせてくれたおかげで、隊士たちの対処は、必要なくなったがな……。


「テメェら、今日はゆっくり休め!幹部隊士は、巡察だからな!いいな!」


みんな、休みじゃないのかよ!と、幹部隊士達は、口から出かかった言葉を飲み込んだ。


平隊士「はいっ!」


平隊士しか返事しないし

返事をしない幹部隊士達に、鬼副長の視線がギロッと向けられた。


なんで、私を見るのか?と思ったら、後ろに総ちゃんら、幹部隊士達が千夜の背に隠れるように、隠れないんだけど後ろにいた。


「ちぃちゃん、お願いします。」

「何を?」

「土方さんを止めるのは、ちぃのがうまい。」

「………」


そんなの、上手くなりたくない!


「そうか。お前らは文句があるのか?」

「千夜がな。」


こいつら!自分の事、棚に投げやがった!


「ほお、ちぃが文句があるのか。」

で?なんだ?言ってみろ。と、距離を詰められる千夜


「ないよ?え?みんな行くの嫌?

じゃあ、桂達と行くよ。お団子でも食べようね?」


ニッコリ笑う顔を桂に向ける千夜に、桂は、うんざりとした表情を向ける。


「………」

「僕、行きます。」

「じゃあ、俺もいく~。」


平隊士「組長ばかりズルいです!」



俺も~っと言う声が、後から後から聞こえてきた。



「みんな、巡察行きたいって。」


フッと、土方は笑う。


「よし、言い忘れたがちぃは、屯所待機だ!」


まんまと、騙された隊士達。


千夜は怪我をしているのに、土方が巡察に行かせる訳がない。


「そんなぁー」


っと、みんなの声が広間に響いたのだった。


























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