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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
池田屋事件
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池田屋事件


池田屋の中で、繰り広げられる斬り合い。


頬を掠める刀を避け、相手を蹴り倒した藤堂は、声を上げた。


「うわっ。池田屋に何人居んだよ!」


ガキンッ ギリギリ。

交わる金属音は、至る場所で聞こえる。


「平助、喋ってねぇでサッサと斬れ!やられるぞ!」


永倉が、気を引き締めろ!と言わん限りに、藤堂を怒鳴りつける。


池田屋に居た志士は、4、50人新選組の近藤の組は、10人と、圧倒的に不利な状況であった。


永倉は敵に応戦しつつ、視界に入った藤堂の後ろに人影を見つける。


「平助っ!後ろ!」


藤堂が目を見開いた瞬間、ガキンッ


「よお、チビ助。大丈夫か?」


その声に、藤堂はさらに目を丸くする


「高杉晋作?」


敵のはずの男が、自分を助けた?何故?


そんな事を考える藤堂らを他所に、新選組を背に、刀を構える二人は、口角を上げた。


「長州藩士 高杉晋作!」


「同じく 吉田稔麿!

新選組に、助太刀致す! !」



池田屋に響いた声に、誰もが驚きを隠せない。


ガコンッ キィンッ ズシャッっと、二人の前に居た志士達が、現れた人物の足元へと倒れた。


「ったく、二人共格好つけすぎ。」


千夜の周りに居た五人ほどの志士が一気に倒れた。


「おー、千夜おっかねぇ。」


キッと、高杉を睨みつけ、フッと笑った。


「宮部は二階だ。行くよ。」

「ちぃ!」


藤堂に、呼び止められた千夜は振り返る。


「平ちゃんは額を新八さんは手にきをつけて、斬られるよ!」


そう言って、志士達を斬りながら、二階に上がっていった。


「ちぃが、ちぃが帰ってきた!」


「平助、喜ぶのは、ここを片付けてからだ!」



「おう!ちぃに、無様な格好見せられねぇ!」


ガキンッ


刀を握り返す藤堂。千夜の登場により、新選組の指揮は、確実に上昇したのだった。



駆け上がった池田屋の二階は、まるで、地獄絵図の様。


赤が、辺りの障子や襖にベッタリとつき、沢山の志士達が倒れていた。血生臭いその場所に、

刀を握り、ふらりと立つ男


ガキンッと、近で戦って居る、恩師の近藤の姿を横目で見ながら、どうにか、倒れない様に足に力を入れた。


はぁはぁ。体が熱い。志士の人数が多すぎる。

二階は近藤と沖田だけ。


ついには、幻覚まで見える。


こんな場所に、ちぃちゃんがいるわけないのに————。


居るわけない。


ちぃちゃんは、長州に連れ去らわれたのだから

立ってるのに、意識が朦朧とする。


「高杉、稔麿、少し頼む。」


「おう。」


歩み寄ってきた、ちぃちゃんに、手を伸ばした。

幻でもいい。会いたかった。君に。

————ずっと、会いたかった。


バシンッ


頬に感じた鈍い痛み。彼女に触れようとした手は、力なくダラリと垂れた。


何で?どうして?僕は、叩かれたのだろうか?


「新選組一番組組長、沖田総司!

近藤さんを守るのは、お前の仕事だろう!?

近藤さんは、まだ戦っている!組長の仮面を被れ! !」


そう言って、竹筒を沖田の口に当て水分を流し込む


近藤さんが戦ってる?


ガキンッ!ガキンッ!


刀が交わる金属音を聞きながら


組長の仮面とは、何かを考えた。



そうか。君は、”総ちゃん”は僕の本当の姿だと。そう、言いたいんだ。あんな甘ったれな僕。


仮面を被れば、強くなれる。


そうだね。僕は、沖田総司。



そう思ったら、視界がハッキリしてきた。

多分ちぃちゃんがくれた、水分のおかげ 。

————僕はまだ、戦える! !




刀をしっかり構えた沖田を見て、千夜もまた刀を構えた。


「おかえり。ちぃちゃん。」


帰ってきていいの?私、



バタバタと足音が聞こえ、


「千夜さん、俺らに指示を!」


零番組の隊士が、千夜が居るのをききつけ、二階に上がってきた。


ありがとう。

————ありがとう本当に、私を信じてくれて、待っててくれて、ありがとう。


溢れ出そうになる涙を堪え、千夜は、キッと鋭い目つきになる。


「新選組零番組組長、芹沢千夜!

零番組は、志士を救護し、捕縛せよ!」



「「「「はいっ!」 」」」



「新選組、誰一人欠けることなく屯所に帰るよ!」


隊士「あたりまえです!」


「高杉、稔麿、死んだら許さないからね。」


「「おう。」」



ガキンッ キィンッ ジリジリ


人数が多すぎる。


「稔麿、あんた、何回隊士に斬られそうになってんの!」


「俺だってわかんねぇよ!」


高杉は散切り頭だし、千夜は、髪の色で区別がつくが、暗闇の中、羽織を着てない私達は、仲間にも襲われる危険性が高い。


危険性というか、稔麿は何度か斬りつけられていた。


まぁ。なんとか避けてたから、怪我はしてないんだけど・・・



どうにかしなきゃ。


そう思った時だった。


バサッ。突然降ってきた羽織


「馬鹿ども、羽織貸したる。それ着ときぃ。」


そう声が聞こえ、手にした羽織を見れば、浅葱色の羽織。


「ありがたい。」



「おー。新選組だ。」

二人は、喜んで羽織を着た。


「ちぃ、貸しは大きいでぇ。」


そう言って、ニッと笑う山崎。


「心得ています。ただいま、烝。」


千夜も羽織を着ながらニコッと笑い返した。


「おう。おかえり。土方さんらは、もうすぐや。それまで、怪我すんなよ?」


「了解。」


山崎は、こちらの様子を見て、また、土方の元へ連絡に走った。


これで、稔麿への味方からの攻撃は減った。


「ったく、何人集めたんだよ!

ただの会合にしちゃあ、数が多すぎねぇか?吉田。」


「そうだね。なんか違う目的があるのかな?」


池田屋に50人程の志士。すし詰め状態であった。



ガキンッ


志士の体に刀を刺したのに金属音が鳴る。楔かたびら?


おかしい。ただの会合で楔かたびらをつけているなんて…


そう考えていたら、背後からの敵の攻撃に体が動かなかった。


キィンッ


「本当に、君は!手がかかる上に、何を考えて居るのかわからない!」


千夜の目の前に、逃げの小五郎が、いた。


「何で?」


「何で?じゃないでしょ!藩邸には居ないし、吉田も高杉も居ないから探したんだからね!」


怒られたし。


「喋ってんじゃねぇー」


志士もお怒り。


「うるさいよ。長州のヒメに、刀向けてんじゃないよ!」


ガコンッ ザシュッ。あっという間に、桂は千夜に刀を向けた男を沈めた。


嬉しいけど、複雑な心境の千夜。

はぁ。自分の羽織を脱ぎ桂に渡した。


「逃げの小五郎でしょ?」


フッ

「逃げてばかりじゃ、何も始まらないんだろう?」


「そうだね。平和な世を。」

「日本の夜明けを見るまで、死ぬなよ。」


「桂もね。」



可愛くない。本当に君は…


「桂!お前も来たのか!」


キィン キィン キィン


「君たち、帰ったら説教だからね。生き伸びろよ!」


…………



桂の説教なんて、とてつもなく、ヤダ。












































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