組長不在の零番組
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新選組屯所
組長不在の零番組
組長が行方不明なんて笑えない。
普通なら、零番組は解散して、今ある隊に吸収される。しかし、零番組は、解散しなかった。
組長不在の代理を、ある男が引き受けたのだ。
それは、土方でも沖田でもない。
仕事中は黒装束を身に纏う、観察方、————山崎烝。
零番組は観察も行う組だから、山崎の組長代理は、すんなりと通ったのだった。
「はぁ。」
ため息も許していただきたい。
朝は、早朝稽古に始まり、少しの休憩すら仕事に当てなければならない。
寝る時間は限られている。
「なんでこんなん、続けれるねん。」
文句を言いたい女は不在。
しかもそいつは、芸妓の練習も島原潜入もこなし、しまいには、屯所の雑用までやっていた。
どんだけ体力あるねん。と、突っ込みたくなる山崎よりも若いが、実際年齢は、言いたない。
150歳?アホか!
そして目の前にある分厚いノート。それに書かれた零番組隊士の癖や、強化点が書き連ねてある。組長代理を務めれるのは、このノートのおかげ。それを見ながら、明日の訓練を決めていた。
「はよ、帰ってきぃ。俺、体もたんわ。
————歳やな。」
そんな独り言を自室でボヤく。
会いたい。あいつ泣いとらへんやろか?
泣き虫やからな。ど阿呆が。
お前が居いんと、胸苦しいわ。
痛む胸の正体なんか、ずっと前から気付いている事なのに、会えなくなると、寂しさに加わり一層痛く感じる胸…。ドサっと、山崎は、仰向けで寝転がった。
痛む身体は、いつにも増して動かしているからだ。俺、こんなに頑張っとんねん。帰ったら、
俺の仕事やって貰わんとな。
それぐらい、バチ当たらんやろ?
————なぁ、ちぃ。
重くなる瞼の裏に見えたのは、愛しい女の姿だった————。
***
今日は、池田屋にお泊まり。
縫い物をしていた千夜だったが、急に、ブルッと体が震えた。
「どうした?千夜。」
「いや、今、急に寒気が。」
自分の両腕を摩る仕草を見せた千夜
「あ?風邪じゃね?お前、寝相悪いし。」
「高杉、うるさいよ。今、丁度、針使ってるから、口縫ってあげようか?」
針を高杉に見えるようにしたら
「ごめん被る。」
「千夜は何してんの?」
さっきから、気になってたんだよね
と、近くに来た吉田
「忍び装束みたいな動きやすいのが欲しくて、
この前買ってくれた着物を改良中。」
「改良中って、忍び装束って。」
突っ込みたいところが、満載なんですが?
前買った着物、かなり短くなってるんですが?
「袖切ったら、変だよね?」
と、縫い終わったらしい着物を自分の体に当てがう千夜
「お、着替えてみろよ。」
ノリノリの高杉
お前は千夜の着替えを見たいだけだろ?
と、高杉をジト目で見る吉田。
案の定始まったお着替えタイム。
「千夜、高杉の前で着替えないで?」
「え?だって、大体いるよね?」
この子に嫉妬という言葉をどう教えたらいいわけ?あと羞恥心。コッチのが重要。
はぁ。
で、御構い無しに着替えを続行し、
着替えた千夜。
「————短すぎない?」
「それ、いいな!」
「え?どっち?」
千夜の纏う着物は裾が膝上にある。要するに、丈が短くて足をさらけ出しているのだ。淡い黄色に所々に蝶があしらわれているもの
「生足。」
高杉が壊れつつある
「高杉、お前は黙ろうか?」
「なんでだよ!千夜、最近冷え!」
「………」
千夜は無視して足袋を履き、太ももまでの高さまでの白い筒状の布を履く、うえをリボンみたいに縛り付け
また立って見せた。
着物に、リボン付きのニーハイソックスを履いた感じと言えば伝わるだろうか?
「袴じゃダメなの?」
「あれ、擦れるから音なるもん。」
「お前は、何処に潜り込むんだよ!」
そんな予定はないんだけどね。
「えー?可愛いのにー。」
確かに可愛いけども、露出しすぎだ。
「忍び装束のがもっと露出激しいと思う。」
漫画やアニメだと。だけどね。
せっかく作ったからどっかで使おう
と1人決意した千夜だった。




