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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
副長助勤
125/281

大掃除


時は師走。


師走と言えば大掃除。


屯所は男だらけだし、早めにやらないと片付かないのに、副長室で、いつも文机と戦ってらっしゃるよっちゃんに、すす払いは、いつやるのか?と尋ねれば、


「あー。大掃除なー。やらなきゃなー。」


絶対、やる気ないよね?という、返事が返って来た。


スパーンっと勢いよく開いた襖。犯人はわかってるし、あえて振り返らずにいれば、


「ちぃちゃーん」と、声がして、


「————っ! !」


いつもの様に入ってきた沖田だったが、入り口近くに、千夜が居たもんだから、沖田が降ってきて、そのまま、千夜も畳へと倒れこんだ。


痛いし。


「何してんだよ。」


呆れ顏でよっちゃんに見られた。


「総ちゃん離れてー痛い。」


背中の傷、まだ治ってません。千夜の背中に、くっついたまま、顔を上げた沖田の目は、何処か虚ろだ。


「酷いよ、ちぃちゃん。僕より、こんな、女ったらしの豊玉の方がいいの?」


いや、そんな事、誰も言ってませんが?


「総司っ!テメェは、俺の事をそう見てたんだな、あぁ?」


「だって、そうじゃないですか!見てくださいよ、この恋文の山を!」


ビシッと指指した先には、確かに文の山。

そのまま視線をよっちゃんに向ければ、


「違う!これは仕事の山だ!」


そんなに声を大にしなくても、でも、総ちゃんがおかしい。


「ねぇ総ちゃん、」

「はいでし。」

「……」

「ちぃちゃん、好きでし。」


酔っ払い?沖田から匂う、お酒の匂い。


「総司!テメェさっさとちぃから離れろ!」


「イヤでし、よー」


バタバタと聞こえて来た。


「総司、テメェ!やっと見つけた!俺の部屋、

メチャクチャにしやがってー」


開けっ放しの襖から、藤堂が怒鳴った。

平ちゃんが、何やら持って居るのはわかった。しかし、怒ってるなんて、珍しい。


「僕から、ちぃちゃんを取るの?」


全く意味がわかりません。


「とりあえず、総ちゃん離れて?」

「ヤダ!」


押し倒されて身動きが取れない。


「おい!総司、

ちぃ背中の傷が————うわっ」


バシャン平助が入り口で足を引っ掛けて、すっ転んだ。


持ってた桶が宙を舞い、見事に千夜に中身がぶっかかった。総司が、逃げるように、千夜から身体を離し千夜がゆっくり動き出す。


みずもしたたる……なんたら…


「テメェら、掃除が終わるまで、島原も酒も

煙管も沢庵も甘味も禁止!」


ヒッ


「ちぃが、キレた。」


「さっさと、掃除をしなさい! !」


「「「はい!」」」


ドタバタと大掃除の始まりです。



「あー、もう。冷たい。」


濡れた着物を着替え、掃除を開始した。


「なぁ、ちぃ。」


掃除をしている千夜に話しかけた土方


「なに?」

「俺の恋文しらね?」


「あー。多磨に送っちゃった。」


「……」


聞き間違いだろうか?


パタパタと大掃除をしてる、ちぃ 。

あっちに行ったり、こっちに行ったり、


「……多磨に…送った…?」


「ちぃ、これどこや、る? あれ、土方さん、なにしとるん?」


「恋文を多磨に、」


「あれ?烝どうしたの?」


そこに戻ってきた千夜。


「いや、土方さんが固まって”多磨に恋文”言うて、おかしいんや。」


「は?あーよっちゃんの。恋文、邪魔だったから、多磨に送っちゃったんだよね。それの事?」


「ちぃ、恋文はな、男のマロンなんや。」


最近、少し千夜の影響か、横文字を使いたがる

山崎。だけど、ベタな間違いをどうも。


「烝、ロマンね。」


「そうそう。それや。」


わかってるのか、わかってないのか?


「あのね、あの恋文なんか、客寄せだよ?

また、客が来るように書くの。わかる?

何にも想ってなくても好きって書くもんなの!」


「………」

「………。ちぃも書くん?」


「え?何で私?」

「島原で働いてるから。」

「書くよ。仕事だから。」


頭を抱えた二人の男


恋文を仕事だと言われたら、喜んだ自分達は、なんだったのだろうか?そんな二人なんか、ほっといて、せっせと掃除をする千夜


————山南さん一人で片付くかな?


山南の部屋は本がたくさんある。


「いってみよ。」



「俺立ち直れないかも。」

「お気持ちお察しします。」


二人の会話なんか、千夜には届かない。


山南さんの部屋を掃除して、屯所の中がどれぐらい掃除できたか確認していたら、隠れて酒を呑む、幹部隊士を発見。声を掛けようとしたら


背後から人の気配


「沖田でし。」

「……。うん、知ってる。」


ちょっと、引き気味に返事をしてしまった。


なんだかニコニコと、笑ってる総ちゃん。

笑い上戸?さっきよりお酒臭い気がするんだけど?


「ちぃちゃん~」

酔っ払いは面倒くさい。


「総ちゃん、掃除しないで呑んでたの?」

「ちぃちゃんを守るでし。」


酔っ払いに普通に話しても、理解できない言葉が返ってきます。


「しゅ、しゅ、しゅ」


総ちゃんが壊れた?少し顔を赤らめたまま


「…しゅんがが……」


小さな声で、沖田が言うのに、

「春画がどうしたの?」


普通の声で聞き返す千夜


通り過ぎの隊士ですら、振り返る。


当たり前だ。ほとんどの隊士に、千夜が女だとバレている。


ケイキの話を聞いていた者も多い。


前々から、そうなんじゃないか?と言われていた。噂は、あっという間に広がった訳だ。


ただ、暗黙の了解で、聞く人が居ないだけ、、、。


つまり、女子が春画なんて、言うもんじゃない。って見られた訳だ。


「ちぃちゃん。」


酔っ払いの総ちゃんまで、呆れ顏。

「……?で?それが何?」


「小粒が持ってたから。」


小粒?平ちゃん?以前、総ちゃんがそう呼んでた。


『部屋をメチャクチャにしやがって』


そう怒ってた平ちゃん


「さがしたの?総ちゃんがわざわざ?」


総ちゃんが春画?何故?そんなに見たかったって事?


「ちぃちゃんの、/////」


「へ?」

私の春画?


「あー!水着の本?」


やっと通じて、コクコクと首を縦に振る沖田


「あの三人でし。」


まだ呑んでやがる三馬鹿。


春画なんどうでもいいが、大掃除をしない輩には、————制裁を。




「総司なんさー、千夜の春画が、欲しいから、

酒、無理矢理呑むし、あれは、面白かったぜ?」


「左之、お前総司に酒呑ませたのかよ~。

あいつ、チビチビ呑むけど、量は呑まねぇだろ~?」


「ったく、左之さんのせいで、俺の部屋、荒らされたんだからな!」


「まぁ、いいじゃないか。まだ手元に、千夜の春画はあるんだし。

に、しても、本当いい身体してるよなぁ~」


ジッと本を見つめる左之


「左之さんずりぃーよ。俺も見たい。」


一緒に本を見ようとする平ちゃん


春画より酒の新八さん


「楽しそうだね?みんなが掃除してるのにさ。」


三人がゆっくり此方をみる


「ちぃ!」

「「やべぇ」」


本を隠そうとする二人


「ちぃちゃんを返すでし。」


本は私じゃ無いんだけどね。


「サボった分はちゃんと働かないとね?


厠掃除に、庭の草むしりに、勝手場もまだ終わってないかな。サボった罰

今、終わってない場所を三人でお掃除ね?」


ヒッ

「千夜それは、ちょっと酷くないか?」


「やるよね?」


千夜の後ろの沖田も怖いし、千夜も怖い。


やらない。なんて言ったら、明日は、生きているかわからない。


「はぃ。」

「本は没取。」


総ちゃんが、本を左之さんから取り上げた。


「「「そんなぁー」」」


そんな声を上げたが、知らない。聞いてやらない。


この後、バタバタした大掃除は終わりを告げた。


千夜は、沖田が掃除してないのをすっかり忘れていたのだった。


































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