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浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
副長助勤
111/281

副長助勤ーー弐

懐に手を突っ込み、クナイを放つ。

肩を怪我した時、左手で、クナイを投げる練習をしといてよかった。と心底思う。


五、六本投げて、山崎の動きが停止した。壁に、山崎の腕をクナイで縫いつけたのだ。これで、当分の間、山崎は、身動き取れない。

土方は呆れた顔で、壁に縫い付けられた、山崎を見る。


「お前、何してんだよ。」

「そんな呆れた顔せんでも!取ってくださいよー。」


これで、もう一人減った。


残るは四人、


はじめが刀を収める。居合い斬りの構えだ。

本当に勘弁してくれないか?


はじめが踏み出す。受けたら死にます。私。

刀に手をかけるのを見計らい、千夜は、飛躍した。はじめの、背後に着地した彼女は、はじめの首に一撃お見舞いして、倒れていただいた。


まだ、あと三人


キィンッキィンッ


さすがに息が上がる。汗がダラダラと流れるし、いつもの倍以上体を動かしてる。


「お風呂に入りたい。」

「ずいぶん、余裕だな?千夜」


ついつい本音が。


神道無念流を相手が使うなら、私も使う。じゃなきゃ、戦えない。その流派で受けなきゃ、免許とった意味がない。

両者共に、刀を振るう。永倉の刀を避け、素早く峰で脇腹を打てば、ズルッと倒れた永倉。


やっといてなんだが、あれは痛い。

貴方が、教えてくれたんですよ?新八さん。

————神動無念流を。


これで後、二人。


休憩をください。ハァハァ。もう、強敵過ぎます。足にインクつけたら、多分、道場中埋め尽くせるほど動いています。


平ちゃんが刀を手に、踏み込んだ。速さも兼ね備えた平ちゃんは脅威でしかない。ただ、欠点は、誰にでもある。足と頭はガラ空きなんです。


平ちゃんごめんなさい。先に謝ります。踏み込んできた平ちゃんに足をかけ


ベチャッ


倒れました。


「ちぃ!俺の扱い酷い!」


知ってます。だから初めに謝ったのです。

後一人、総ちゃんだけ。


「ちぃちゃん。僕は、本気で行くよ?」


刀をもった、沖田総司はいけません。

別人です。

可愛い総ちゃんは消え失せて冷酷な総ちゃんになる。


こんなの敵にしたくない。ゾクゾクする背筋

総ちゃんが踏み込む。


これは三段突き『平晴眼 』実戦でそれを出す?


避けれなかったら、と、最悪の結果が脳裏によぎり、ゴクリと喉が鳴った。


やるしかない。


反対の手に鞘を持ち、同じ様に踏み込んだ

一突き、二突き、三突き。


なんとか、かわし、総ちゃんが地に足をつけた瞬間、私の鞘を突き出した。見事に鳩尾に入った鞘


ドサッと崩れた体。


ハァハァ


勝った。終わった。



そう思ったのに、


「まだだ、ちぃ。」


嘘だよね?よっちゃん今、出てくるの?卑怯だよ?


「ズズッ。なんか凄いことになってるね」

「お前ら、茶なんか飲んでるんじゃねー 」


見れば、茶をすすってる幹部隊士の姿


えっと?ここ、真面目な場面なんだよ?


「ちぃ、勝負だ。」


真剣なよっちゃん。また、千夜は、刀を構える

キィンッキィンッ


腕が重い。よっちゃん、足まで出してくるし、ありえない。


油断してたら足で、刀をぶっ飛ばされた。


カランッと音を立てる刀


刀を持った、よっちゃんが踏み込んでくる。

負けたくない。刀なんか怖くない。なにも持たない千夜は、力強く踏み込んだ。手を掠めた刀、それでも、土方に食らいつく。


手拳で刀を外し、そのまま襟元を掴んで、背負い投げた。


ドォンッ


————無我夢中。その言葉がぴったりだ。


投げたのはいいが、そのまま千夜も転がってしまった。



疲れた。起き上がる体力は残ってない。

「よっしゃあ!ちぃが勝った。」


そんな声が、前川邸の道場に響く、

「無理。動けない。」


倒れたまま、そう言った千夜に、土方は、立ち上がり、千夜の顔を見て


「強くなったなぁ、ちぃ。」

嬉しそうに、そう言った。


「違う。本当は負けてた。勝たせてくれたのは

みんなが仲間だからだよ。」


仲間相手に本気を出せやしない。


本人が本気と言っても、何処かで手を抜いている。傷つけたくないから。


「いや、お前は強い。」

「私は、まだ、強くなりたい。」


寝転んで動けないまま、天井を見上げてそう呟いた。

こんなに汗を流したのは、いつぶりか?


ペタペタと、気持ち悪い体とは違い 、清々しいほど、やり遂げた感が心地よい。


「ちぃ、お前に隊を託したい。」


見開いた目


「私に、隊を?」


じゃあこれは、この試験は、その為の?


「ちぃちゃんなら、副長助勤も勤められる。

平助よりいい組長になるよ。」


「総司!俺が、いい組長じゃねぇみたいじゃん!」


「えー?平助みたいな、小粒なら、僕は、いやだけどねぇー」


「誰が小粒だ!」


「おい、喧嘩はよせ。まぁ、総司の組は、哀れだと思うがな。」


「ハジメ君、けなさないでよ。」


「まあまあ、これも千夜が、頑張った成果なんだしよー」


「今日は宴だな!」


「あんたら、呑みたいだけやん。」


本当に暖かい。私に居場所を作ってくれた。


「ちぃ、副長助勤頼む!」


千夜は笑う「よろこんで!」そう言って。

寝転んだまま、喜びを噛み締めていた。


「ちぃちゃん、いつまで寝てるの?」


いやいや

「動けないんだってば。」


当たり前です。

どんだけ、動いたと思ってるんだよ!


「……」

「本当に動けないの?」

「はい。」


動けないのがそんな変?

笑うなら笑え。そう思ってたら、本当に笑われた。


それはそれで、腹が立つ。

バンッバンッバンッ


「今すぐ黙らせてあげようか?」


ヒッ

「ちぃ、動けるじゃん !」


寝たまま銃を握り発砲した。

起き上がれないから、


「おい、道場に穴が開く。」


カチッカチッ弾が無くなってしまった。


「ちぃちゃーん、お風呂いきましょう!」

喜んで、炊きます!


「お風呂いくー。」


沖田が、千夜を抱き抱えて道場から出て行った。


「いや、おい、ちぃ!お前、少しは危機感を持ちやがれ!今の総司は、オオカミだ!」


後を追った土方。


まるで嵐が去ったかの様に、道場は静まり返る。

「俺も覗いてこよっと。」


山崎も、覗きを宣言し、後を追う。

こいつら、いくつ命を持ち合わせてるんだよ。

怖いもの知らずも、ここまできたら自殺行為だ。


残った幹部隊士が、顔を見合わせるのだった。



総司の野郎どこ行きやがった!八木邸の風呂場に行ったのにいやしねぇ!前川邸か?


そう思って走った。


『総ちゃん…熱い… 』


ちぃのそんな声が聞こえた。


バンッ「あれ?よっちゃん?」


風呂を開けて固まる。


「あ、れ?総司は?」


風呂場には、ちぃだけで、白い肌に目を奪われる。


「へ?総ちゃんなら、外で火を見てくれてるけど? 井上さんが、沸かしてくれてたから、すぐ入れてラッキーだった。」


湯船に浸かって手拭いで遊んでたらしい、ちぃ

その手拭いが邪魔で、肝心のちぃの身体が見えない。


「あー!土方さん

なんで、お風呂場にいるんですか!」


信じられない!と声が聞こえた。


「あれ、沖田さん。ちぃと一緒に、お風呂入ったん違うん? 」


「一緒に入ったら、お風呂わかないじゃないですか!誰が、火をみてるんですか?

しかも土方さんが、風呂場に居るなんて!

さっさと出てくださいよ!変態!」


「ああ、悪い、ちぃ 」


「あ、うん。」


この後、山崎と沖田に、土方は殴られた。

当然の報いを受けたと、屯所中に広まった。



































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