表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浅葱色を求めて…  作者: 結月澪
長州の志士達
107/281

突然の訪問者

「………」

「………」


こんな事を、捲したてる様に言ったって、すぐに、何を言っていいか、わからないだろう。


だから千夜は、話しを変えた。


「高杉、お前は、労咳だ。この薬を持っていけ。未来は、労咳が薬で治せる。」

懐から薬の包みを取り出し、高杉に渡す。


「俺が労咳?治るのか?労咳が?でも、なんで?」

自分に、そんな貴重な薬をくれるのだろうか?

そう思いながらも、差し出された薬を手にした高杉。


「守るって、約束しただろ?」


無理して笑う、千夜が痛々しくて、高杉は思わず抱きしめた。


「生きろ、高杉。お前は、病になんて負けてたらダメだ。」


————…生きろ。


その言葉が、こんなに嬉しいものとは、知らなかった。


藩の為に命を捧げろ!武士なら、死ぬ覚悟で敵に向かえ。

投げかけられるのは、そんな言葉ばかり。

千夜の言葉が、ただ純粋に、嬉しかった。


「バカ杉、新選組だ!」


桂が叫んだ。


連れて行きたい。千夜を、でも、今無理矢理連れて行けば、また、逃げてしまう。


千夜の唇に、自分の唇を押し当てた。


「礼だ。桂!いく————。」


行くぞ!そう言おうとした高杉だったが、桂の姿は既に無かった。


「あいつ、一人で逃げやがった!」


桂を追う高杉。見えなくなるのは早かった。

流石、逃げの小五郎。


「私も、新選組なんだけどね。」


しかも、礼で、キスってどうなの?

あたりを見渡しても、新選組の姿はどこにも無い。

「誰も来てないし、嘘つき小五郎。だね。」


はぁ。帰ろ。


おかしい。いつもなら、誰かが迎えに来るのに、今日に限って迎えがない。


別に構わないんだけど、いつもあるものが無いと不審だけが残ってしまう。


「なんか、あったのかな?」


そう言いながら、屯所へ帰った千夜。

八木邸の門をくぐり、いつも通り、部屋に戻ろうとしたら、突然、部屋から出てきた沖田に驚き、足を止めた。


「あ、ちぃちゃん。お、おかえり。」


「うん、ただいま総ちゃん。」


なんだか、総ちゃんがぎこちない?

その時、いつもと違う匂いが、鼻を掠める。

女の人の練り香水?


「お客さん来たの?」

「あ、へ?な、なんで?」


目が泳いでる沖田


「ん?なんとなく?」

「そ、そっか、ちぃちゃん一緒に甘味食べよ?」


そう、突然誘われて、私は、総ちゃんの部屋へ行く事にした。


部屋に着けば、

「さ、さ。入って?」


と、部屋に押し込まれ、千夜は、沖田が差し出してくれた、座布団に腰を落ち着かせた。


自室で、甘味を広げ出した沖田。


目の前の大量な甘味屋に、ただ、声が出なくなった千夜。

沖田が、ポンッと彼女の手に大福を置いた。

「これ、美味しいよ?」そう言って。


食べろ。って事?

両手に甘味を持ち、もぐもぐと、口一杯にソレを頬張る沖田。

それを見てるだけで、胃もたれしそうなんですが?

手に置かれた、大福を見て、沖田に視線を向けた。


「で?よっちゃんの恋仲ってどんな人? 」


ゴホゴホッ。総ちゃんが盛大にむせた。


「そんな事、一言も、言————…ゴホゴホッ」


まだ苦しいみたい。

その、咳き込み様に、沖田の背中をさすってやる。


「総ちゃん?私、観察方だったんだよ? 総ちゃんの嘘ぐらい、見抜けるよ?」


めちゃくちゃ、わかりやすかったけどね。


「でも、土方さんの恋仲だって、なんで知ってるの?」


「たった今、確定した。」


「……あ。」


そう、ただの当てずっぽう。


「で?なんで、私を遠ざけるの?」


そう、聞けば、「あれ?ちぃちゃん泣いた?」と、話を変えられた。


「……。」

泣いたけど、今は関係ない。どうしても、行かせたくないらしい。


「わかった。言いたくないならいい。」

無理に聞く必要もない。


よっちゃんが幸せなら、それでいいし。


甘い香りが漂う、沖田の部屋。

沖田は、甘味を手にしたまま、千夜が屯所から出て行った時の事を思い出していた。



綺麗な女の人が、八木邸の門に居たのを見つけたのは、僕だった。


「新選組の屯所に、何かご用ですか?」


それだけで、何も知らない女子なら、逃げ出すんだ。長州贔屓の多い、京の人間なら、なおさら。ね。


だけど、その女は、表情を全く変えず、僕に

「土方さん、いらっしゃいますか?」

そう、名指しで聞いてきた。


女となれば、あの人の事だ。また、面倒事に違い無いと、どうにか帰ってもらおうとしたのだが、聞き入れては貰えず、結局、土方さんの部屋へ通す事になってしまった。


「総司。ちぃを部屋に入れるんじゃねぇぞ。」


「え?いつまで足止めすれば、いいんですか?」


「んなの、話がつくまでに決まってんだろうが。」




と、言われたから、今、ちぃちゃんは、僕の部屋に居るわけなんだけど、、、。


「ごめんね。ちぃちゃん。」


僕が、あの女の人を、追い帰せてれば、こんな事にはならなかった訳で、ちぃちゃんだって、帰ったら、やりたかった事だって、あっただろうに。と、申し訳無い気持ちで、一杯になる。


————に、しても、なんで土方さん、

あの人を、部屋に入れたんだろうか?手を出してなければ、入れる必要は無いし、屯所に来たってことは、

あの人、土方さんのヤヤコを身籠った。って事?


「はぁ。」


「???

ねぇ。私は、いつまで部屋に戻れないの?」


「え?話がつき次第。かな。」



なるほどね、人斬り集団と呼ばれた、新選組に乗り込んでくるぐらい大事な話し。


で、女の人。ねぇ。


なんとなく、わかっちゃった。

それは、それで、気が重い。話し的に。


スッと立ち上がる千夜


「ど、何処行くの?」


慌てて、声をかける沖田。このまま、土方の所に行かせる訳にはいかない。


「山南さんに、書物借りてくる。」


そう言った彼女に、確認を取る。


「部屋には…「行かないから大丈夫。」


その言葉を聞いて、沖田は、ホッとする。そして、千夜は、山南の部屋から書物を借りて、

沖田の部屋に戻って来た。




























評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ