155.始点と始点の交わり
白い白い光の中でただエナ、ネヒィアと手を繋いでいる感触だけが伝わってくる。そして、ぷかぷかと水に浮いているような感覚が急に襲ってきて、次の瞬間景色が変わる。
「ここは……」
絵里がそう言葉を零した場所は、初めてエナとネヒィアに会った洞窟の前だった。
「懐かしいわね……ここ。でも、絵里ちゃん、ネヒィア、入るわよ」
エナは少し立ち止まって、本当に懐かしそうにそう言葉を零す。けれどすぐに、エナはどこか決心したように歩き出した。
「主様、行こう?」
「う、うん」
絵里はネヒィアと一緒に手を繋ぎ、エナの後ろをついて行く。
「ここ、分かれてたんだ」
やがて初めてネヒィアに出会って、初めてネヒィアに抱きつかれた場所に着いた。けれどそこから先、洞窟は二股に分かれており、絵里は不思議がる。
あまり記憶はないけれど、ここは行き止まりだったような……
「そうよ。私達に会った時は、魔法で隠していたの。こっちよ」
エナはなんの迷いもなく、右へと進む。しばらくその道を進んで行くと、
「何、ここ?それにこれ、桜が映って……」
青白い光が壁一面に広がる、狭い部屋に出た。そして、その部屋の中央には亀裂のようなものから、絵里が異世界に来る前にいた場所の映像というか……画像みたいな物が、写っていた。
「エナ、ネヒィア、これは何?それに何だか……嫌な予感がするけど……」
ここに来て、急に絵里はそう言いながら、エナとネヒィアの方を向くと、二人は手を繋いで優しく笑っていた。
その表情に絵里の心臓が跳ねる。そして、本能的に桜が写っている場所から離れようとして……
「ごめんね、絵里ちゃん。私達、もうだめみたい」
エナがそう悲しげに声を出した。その瞬間、絵里から力が抜けていく。ネヒィアの方を向くと、ネヒィアも同じ様に……
「楽しかったよ……主様。またね」
「ま、待って!おかしい、なにこれ?ドッキリとか?嘘だよね、ね?エナ、ネヒィア!」
「…………」
エナとネヒィアは首を横に振る。そして、ネヒィアが魔法陣の中から宝石のような物と本を一冊取り出して……
「主様とお姉ちゃんと私の思い出が詰まった本だよ。後ね、これ。これを持って空間の歪みの中に飛び込めば、元の世界に帰れるから……ね」
ネヒィアはそれを絵里に押し付けて下を向く。絵里はひたすらに焦りながら、悲鳴に近い声を出す。
「帰らないよ、もうやめて……お願いだから……」
「もう時間がないの。ごめんなさい、絵里ちゃん」
「さようなら、主様」
力が入らない私に本と宝石を押し付けて、ネヒィアが言った空間の歪みへと、泣きながら押すエナとネヒィア。
絵里はなんとなく、この空間の歪みに触れてしまえば二度とエナとネヒィアに会えない気がして、必死に叫ぶ。
「やめて!押さないで!」
けれど……絵里の声も虚しく空間の歪みに絵里は当って、どんどんカラダが吸い込まれていってしまう。
嫌……嫌、嫌いやいやいやいやイヤ!
「イヤ!離して!エナ、ネヒィアッ!」
「「ありがとう」」
「イヤッッ!」
絵里のそんな悲鳴を最後に、空間の歪みと共に絵里は消え、そして……エナとネヒィアは、そこへ一緒に力なく倒れる。
そうして、倒れてすぐとうに限界を超えていたせいか、エナとネヒィアの体は思ったよりも早く、崩れ出した。
ゆっくりと消えていく感覚の中エナとネヒィアは目を瞑って、笑う。絵里に会えて良かった、と。
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