表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/127

79:『overcommon』

本話の最後に2文追加致しました。

 次の日、とある教室の右前側に、講習の開始を待つ男子3人がスマホ片手に雑談をしていた。


「なぁ、今『FIW』どこまで進んだ?」

「僕はLv17」

「俺はLv19だけど、β組で初手Lv20のお前がそれを言うとか嫌味か?」

「突破させてから1しか上がってないから、結局お前らとそう変わんないぞ。それより、今送った記事ちょっと見てくんね?」


 チャットで送られてきた2つのリンクは、『VRゲームで拷問』のネットニュースと、『ソフィア』のSNSからの投稿だった。



「…………確かに酷い内容だったと思うけど。これがどうしたの、気を付けろって?」

「いやまぁそれもあるけど……重要なのはされたのが誰かって話だよ! ソフィアちゃんだぞ! あのソフィアちゃんが酷い目に遭わされたんだ! だからさ、お前らも一緒に犯人に報復に行こうぜ?」

「またそれか。そろそろお前のソフィア信仰どうにかした方が良いぞ」

「その犯人が誰かとかは知らないけど、ロリコンも程々にした方がいいよ?」

「いいかお前ら、ソフィアはロリだがロリではない。OK?」

「お前なぁ……画面の中じゃなくて、もう少し周りの女子にも目を向けろよ。例えば、天野さんとか……」


 教室の左後ろ側、対角線上の席に座っている天野月華の方を見る。どこか儚げで、普段貞淑と呼ばれるのに相応しい佇まいで席に着いていた。


「「いやそれは厳しい」」

「2人してどうした。天野さんって黒髪ロングの清楚美少女って感じで良くない?」

「なんか……僕たちみたいなのが邪な気持ちで近付いてはいけない感じするし」

「『FIW』の話ばっかしてる俺らとは違うよな」

「まぁ、それは確かに。今もスマホで何見てるんだろうな……」


□ □ □ □ □ □


 アップデートのお知らせね……。


 講習が始まるまでの時間で、公式サイトからの情報収集をしていた。

 どうやら3日後にアップデートが入るらしい。その影響で2時間ログイン出来ないらしいけど、まだログイン制限中だし関係ないね。


 それで、詳細はどんな感じかな……


 まず《チュートリアル》の調整ね。危険通知の発動対象の追加、攻撃無効化判定の調整、危機回避のための転移追加と。

 これがLv20以下がPKされないための調整ってことかな? 私がLv20以下を気にしなくて済むなら助かるし、遠慮なく殺せるから楽しみだ。


 次、システム調整は……ダンジョン内の強制ログアウト無効化を撤廃、1日の最大ログイン時間制限が現実時間で12時間に、時計機能の追加、などの細かい部分の調整が幾つか入っている。


 あとはスキルのバランス調整か。一部のスキル効果を調整、該当する場合はお知らせに届くと。


 残りは利用規約の変更程度だから、こっちは後で確認しておきましょうか。


「席ついてくださいねー、英語Aクラス講習始めますよ」


 教師が入ってきたのを見て、スマホを鞄の中に仕舞う。


 めんどくさいけど、ちゃんと受ける姿勢くらいは見せておこうか――




 やっと終わった……。『FIW』を始めてから、退屈な時間を潰すのが下手になった気がする。


 講習が終わった後、すぐに教室を出て、校門に向かった。

 校舎の外には運動服を着ている人が数グループに纏まっていた。恐らく部活動の準備中なのだろう。


 夏休みでも学校に来る必要があるなんてね。今の私だったら頼まれても断りそうだ、あんなに楽しいことに出会ってしまったんだもの。



「おーい、ボール運ぶの手伝えー!」



「鍵持ってきた?」


「あっ、忘れてた! 急いで取ってくる」


 誰も彼も忙しそうに準備のため走り回っている中、帰ろうと歩みを進めたその時……


「琴! 早くしないと置いてくよ」


「待ってくださいよ佐瀬先輩!」



「……えっ?」


 今の声を聞いて、思わず歩みを止めて振り向いた。しかし、声がした方向には既に人の姿は無かった。


「今の声、どこかで……?」


 聞き覚えのある声だったが、突然だったことも含め誰かに思い至ることは出来なかった。その後、再び歩みを進めて私は帰路に着いた。




「暇だしテレビでも見よう……」


 帰宅して時間を持て余していたのでテレビをつけた。今日もいつも通り平凡な内容だけかと思いきや、興味深いものが目に入った。


「『最近話題のVRゲーム「FIW」の運営「overcommon」に迫る!』ねぇ。前調べてもよく分からなかったしちょうどいいか」


 今はオフィスの紹介のパートらしい。いつもよく見る若い女性のアナウンサーが、社員らしい40代くらいの男性とリモートで通話していた。


「こちらはVRゲーム内で仕事をする社員の為のエリアですね。体調面には最大限配慮されており、交代制でこの形態を利用しています」

「社員の方々も実際に『FIW』をプレイされてるんですね! ところで、こちらのゲームは体感時間は6倍になるとのことですが、お給料の方は……」

「ははっ! 確かに気になりますよね。安心してください。現実では1時間でも実際は6時間働いているのですから、その分給料は増えますよ。その問題もあるので、この技術の扱いには慎重に進めているんですがね――」


 なるほどね……。

 前にこの運営は奇人や変人がいるとか聞いたけど、思ったよりまともだ。緩そうなのは変わらないけど。


 その後しばらくすると、『FIW』についての話になった。


「初めまして。私、小野と申します。本日はよろしくお願い致します」

「どうも、初めまして。『overcommon』代表取締役、(いらくさ)です」


 おお、トップの人が出てきた。なんというか、不思議な人だ。見た目から年齢が推測できない。30代にも60代にも見える……


 まぁいいか。さてさて、どんなことを話すんだろう。


「まず始めに、どういった理由で『Freedom Imaginary World』を作られたのかお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「勿論ゲームで楽しんでもらいたいから、というのもあります。ですが、もう1つの理由として、法律という制限のない自由な世界で多くの人々は何をするのか、というものを見てみたかったからなのですよ」

「何をするのか、というのは一体……」

「色々ありますよ。特に常識から外れたようなことだと嬉しいですね。日本人というのは自ら秩序を形成しますから、そこに異分子が現れると秩序は乱れ、嵐が巻き起こります。その時何が起こるのかということを私は見てみたいのです」

「そ、そうなのですか。それは通常ならマナー違反である行為を受け入れるということにも関係があるのでしょうか」

「ええ。殺人を初めとした犯罪行為をする人は異分子たり得ますから。集団の圧力というものもありますから数は多くないですけどね。ですからそういった方々を止めることはないのです」


 なるほど……? それってつまり、社長の人間観察と社会実験のためってことじゃないの。思ったよりまともだとかそんなことはなかった、前言撤回。トップからおかしかった。


 まぁ、それの駒の1つなのは少し癪に障るけど、私のストレスと欲求の解消が出来てるんだし、今後も有難く使わせてもらおう。『FIW』運営の奇人っぷりは分かったし、社長本人についての話になってきたからここまででいいか。


 ……そうだ、ゲーム内掲示板見とこう。何かあるかもしれないし、何より暇だし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] そういやミコちゃんは同じ学校やったか…
[一言] テレビで特集組まれる程って相当やな
[一言] 奇人変人のトップが一番の変人 ま、当たり前か
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ