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【書籍化決定】羅刹の銀河 ~取り返しのつかないタイミングで冒頭で死ぬキャラになったので本当に好き放題したら英雄になった~  作者: 藤原ゴンザレス


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第九十九話

 メリッサ機の関節は無事だった。

 さすが大野家が誇るマッドサイエンティストの京子ちゃんカスタム機だ。

 壁走りでも壊れない。

 メンテナンスモードのセンサーもオールグリーン。

 すげえなこれ。

 確認したので出発。


「念のためドローンもう一台出すね」


 クレアがタイヤ付きのドローンを出す。

 室内なのでこっちの方が事故る可能性が低い。

 ヘリのやつを室内で使うとたまに墜落するんだよね。

 モニターを俺の方にも出してもらう。


「隔壁が下りてる。帝国軍標準方式で解除信号出すね」


 これは友軍を待つ場合の決まりである。

 友軍と合流できるように共通の暗号を使うのだ。

 ま、大学校行かないとこういう細かい法規習わないんだけどね!!!

 扉が開くと人型戦闘機が転がっていた。

 ドローンでIDを照合する。


「館花子爵軍機、搭乗者はザンマ・ムラサメです」


「ザンマ!?」


「知ってる人?」


「友だちの兄ちゃん」


 メリッサが走り出す。

 俺も追う。

 隔壁奥の部屋に入る。

 部屋の中は刀傷だらけだった。


「敵反応なし!」


 クレアが言うのと同時にメリッサが戦闘機を飛び降りた。


「ザンマ! 生きてるか!!!」


 帝国軍兵士の認証をした後に非常用コックを引っ張ってコックピットを開く。


「おい、ザンマ!!!」


 俺も飛び降りてメリッサに追いついた。

 コックピットの中には血まみれの男性がいた。

 20代前半だと思う。

 短髪で日焼けした色黒の男性だ。

 二人でコックピットの外に運ぶ。

 クレアが医療キットを持ってくる。


「意識がないみたい。医療キット使うよ」


 医療キットを貼り付けてナノマシンを注射する。

 意識がないんで外部モニターを使うしかない。

 クレアの後ろからモニターを覗くと酸素の数値に心拍数に臓器のいくつかが危機を知らせる赤い文字になってた。

 医療キットから警報音が鳴った。


「心停止! 電気ショックモードにします!」


 どんっとザンマの体がショックで跳ねた。


「お、おい! 嘘だろ!!! ザンマ! 起きやがれ!!!」


 メリッサが叫んだ。

 だけどザンマが目を覚ますことはなかった。

 そのままザンマは心停止した。


「遺伝子情報と脳情報のバックアップ完了。クローン処置できます」


 クレアが冷静にそう言った。

 メリッサが「―ッ!」と聞こえないほど小さく叫んだ。


「馬鹿野郎! ふざけんな! お前なんで死んでんだよ!」


 揺さぶるがすでに力は失われていた。

 ここでピゲットが追いついてメリッサを介抱する。

 メリッサはしばらく呼吸が荒かったがそれを気合で飲み込んだ。


「隊長、行くぞ」


「ピゲット少佐、メリッサ大丈夫かな」


「本来なら下がらせるべきだが……家族のことだ。もうしばらく様子を見よう」


「うっす、メリッサ無理すんなよ」


「わかってる」


「みんな手伝って。ザンマさんドローンに乗せるから」


「クレア殿、すまなかった」


 冷静なように見えたピゲットも動揺してたようだ。

 みんなでザンマをアルミシートでくるんで陸戦用のドローンにベルトで固定する。

 アルミシートはキャンプ用の防寒用のものだ。

 嫁ちゃんに連絡しとく。


「子爵領のパイロットの遺体を発見。ドローンで送る。収容お願いする」


「了解した。メリッサはどうじゃ?」


「かなりこたえてる。知り合いだったみたい」


「わかった。婿殿の愛人じゃ。ちゃんとフォローしろよ!」


 この段になってようやく男子と合流。

 男子が一人ドローンについて戻ることになった。

 今度こそみんなで奥に行く。

 移動中テンションがおかしくなったメリッサがザンマの話をしてた。


「ガキの頃さ、幼馴染みのエリとさザンマ兄ちゃんってついて回ってたんだ。うちの領地は子ども少ないし、みんな両親も共働きだし。俺が生まれたときは兄貴たちはもう大人だったし。だからザンマはみんなの兄貴みたいなもんでさ」


「そうか」


「松姉と婚約したって聞いたとき、女の子みんなわんわん泣いてさ」


「メリッサは?」


「俺は自分にそういうチャンスなんかないって思ってたからさ……でもさ、友だちのそういうキラキラしたとこ見るのって楽しいよな。たとえ悲恋でもさ。かわいい顔になるのって憧れたな」


「メリッサはいま最高にかわいい顔してるよ」


「ばーか」


 メリッサがようやく笑ってくれた。


「隊長さ、ホントは今までもモテただろ?」


「いや……それがぜんぜん」


 なんだろうか。

 攻撃的に振舞うわけじゃない。

 いや口開けば攻撃的なんだけど。

 イヤミキャラ的な。

 むしろ人と関わらないようにしてた感じである。

 人と関わらなきゃそりゃモテないよね。


「あはは! 隊長らしい」


 少し元気になったようだ。

 俺たちは要塞を進んでいく。

 進みながらドローンで確認する。


「戦いの跡があちこちにあるな」


「ザンマ機があったあたりから実弾兵器使ってるみたい。ほら弾痕」


「隔壁閉まってたのに敵はどこ行ったんだろう?」


 俺が口にするとピゲットが俺を見た。

 めっちゃガン見してた。


「なんすか?」


「……それだ」


 ピゲットのつぶやきを聞いてようやくわかった。


「通風口だ!」


「ドローン出すね!」


 クレアがさらに小型のドローンを出す。

 ドローンが通風口を走って行く。

 無限軌道だから坂も上れるはずだ。


「敵細胞と思われる肉片確認! 敵はすでにいません!」


「通風口を移動するタイプかよ!!!」


「ゾークがより効率的に人間を殺すように進化してるってこと……」


 クレアがつぶやいた。

 そうなのである。

 ケビンの人型ゾークあたりから加速的に手口が悪辣になってきてる。

 ゲームだとゾークはもっと脳筋だったはずだ。

 ……待てよ。

 ゾークは勝てるはずの場面で俺が介入して負けてる。

 もしかして戦略の見直しが行われてる!?

 人間を分析してもっと効率的に殺せる手段をとってきたのか?


「嫁ちゃん! 新型ゾークだ!」


 俺は嫁に報告する。


「ああ、ドローンの画像を見た! 気をつけよ!」


 俺は神経を研ぎ澄ました。

 まだ来る感じはしない。


「隔壁を閉めろ!」


 ピゲットが命令を飛ばした。

 後ろから襲われたらたまらん。

 クレアが隔壁をすべて閉めた。


「進むしかねえな」


 メリッサがつぶやいた。

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