第七十七話
カニちゃんに囲まれたらサイラス義兄さんが助けにきてくれた。
「なんでアンタが前線出てんのよ!!!」
どう考えてもまずいだろ。
元継承権第2位。
いまはトマスか嫁の右腕候補だ。
戦争が一息ついたら復権だろ。
VIPを前線出すな!!!
「いまは一兵士だ」
「サイラス義兄さんさあ! その理屈が通るわけねえだろ!!!」
「レオ時間がない。行くぞ」
「ねえ話聞いて!」
クレアが後ろをついてくる。
俺たちは採石場の中に入った。
採石場は露天掘りの施設だった。
地上部にいくつもの倉庫や小屋があった。
ここは砂がない。
砂漠の生き物が来ないようだ。
後ろでクラクションが鳴った。
何事かと振り返ると男子どもが今さらやって来た。
「大丈夫かレオ! 俺たちが来てやったぜ!!!」
もう終わったわ!
ツッコむのも面倒だ。
スルーしてやろう。
「待てって! 殿下の言づてだ」
「なんだって?」
「【この惑星は放棄する。生存者を救助したら脱出せよ】だってさ」
ま、当たり前である。
こんな恐ろしい惑星いられるか!!!
「了解。サイラス義兄さんもそれでいいね?」
「無論だ」
「で、生存者は?」
「倉庫」
みんなで倉庫を目指す。
頑丈な扉の倉庫は鍵がかかっていた。
押しボタンがあった。
ピンポンダッシュの体勢!
「ちわーっす。黒にゃんこッス。薄い本のお届けにまいりましたー」
はるかに科学が進んだ世界でも紙の本は絶滅してない。
とはいえ商業ベースではペイできずに同人誌が主力ではあるが。
すると扉が開く。
なんだ横にスライドするタイプか。
「入んな」
出てきたのは若い男とおっさんだった。
二人とも実弾のライフルを持っている。
「ちわーっす。救助に参りましたー」
「ふざけた野郎だ……って、おい! あんたレオ・カミシロか!?」
「はじめまして! レオ・カミシロでーす」
「お、おい! みんな! 本当に救助が来たぞ!!! あのレオ・カミシロが来てるぞ!」
「本当ってなによ?」
「俺はサルマだ。そっちの若いのはジミー。親切ヅラした海賊どもが逃がしてやるって言ってきたんだよ」
「で海賊どもは?」
「船ごとカニの餌になった。領主一族や商人どもと一緒にな! 領主様は戦って死んだってのに!」
悪党の末路は悲惨なものである。
住民見捨てて逃げようとして海賊船に乗ったら船ごと食われたのね。
あれ? でも出られなかったんじゃ……じゃあ、あの代表者は?
「一週間前に小型船で助けを呼びに行ったジーンもどうなったか」
なるほど。
そういうことね。
「生きてますぜ。ジーンさんにお願いされて来たので」
「生きてやがったか。ジーンはうちの若いので輸送をやっててな。……よかった。それで……何人乗れる?」
「こっちはヴェロニカの超大型戦艦。部屋にこだわらなきゃ5千人はいけるはずだけど」
さすがにMAX5千人とか受け入れたら物資捨てるはめになるけどね。
「いや500人だ」
「もうちょい人口多いって聞いてたんだけど」
「商社の連中は海賊と一緒にカニの餌になった」
そういうことね。
「じゃあ俺たちと来て。この辺のカニは殺したから今がチャンスかな」
「わかった」
というわけで輸送開始。
トラックと輸送機で運ぶ。
カニのいぬ間にさっさと逃げよう。
生存者のほとんどが作業員とその家族だった。
あと商社の社員で置いてかれたやつ。
「予定では近くのカニがいないコロニーに降ろしてそこから避難してもらいます」
そこに避難するか知らないけど。
すると商社のお姉さんが慌てた様子で聞いてくる。
「わ、惑星カミシロですか?」
「うちの実家も避難先に入ってるらしいですね」
「ぜ、ぜひ! 惑星カミシロをお願いします!!!」
「農協しかない田舎ですよ」
あ、でもモールできるんだっけ。
「レオ侯爵様のご実家ならゾークがいないって聞きました!」
「駆除しましたんで出ませんね。たぶん」
「で、ではお願いします!」
「はあ、じゃあ希望は上げときますね」
なんだろう?
うちの実家、過度の期待がされてるような……。
いいのか?
畑しかないぞ。
幸い過疎化が進んで過剰生産気味だから食い物は大量にあるけど。
「わ、私! え、営業できます!!!」
「あ、はい。兄貴が代官やってるんで言っときますね」
営業できる人材は必要だよねっと。
戦艦帰ったらサム兄に連絡しとこう。
……なんだろうか?
やけに過剰評価されてるような。
俺の活躍はそれなりに暴れたからわかるけど、実家への過剰評価が理解できない。
「キノコと柑橘類の栽培、ば、番組で見ましたよ!」
「はい?」
聞いてない。
なんだそれ?
サム兄……基本自由にやらせるから好き放題やりたい勢が集まってないか?
親父どもは仕切りたがりの老害だからなあ……。
「い、いま、まともに撮影できるの惑星カミシロと惑星ミストラルくらいなので。ちゃ、チャンスだと思います!」
あ、そうか。
なんでネットの番組がうちの領地取り上げるかわかった。
ゾーク出ないからか。
帝都から近いのに、もともと番組で特集されないのがおかしかったのか……。
無能クソ親父によるデバフの恐ろしさよ……。
みんなで輸送機に乗る。
俺や戦車隊は住民とは別。
物資輸送用の足は遅いけどいっぱい運べる機体である。
みんなを誘導して俺も乗る。
万が一のため対物ライフルを構えて輸送機の搬入口で待機。
搬入口を閉めようとしたそのとき、万が一が来てしまった。
「カニがやって来ました! 人型重機を乗っ取った寄生体も確認!」
「開けて!」
搬入口のハッチが開く。
俺は人型戦闘機から崖降り用のウインチを出してハッチに固定する。
本来の用途とは違うけどそこはご愛敬。
そのまま対物ライフルを構える。
「レオ! 照準補正します!」
クレアの言葉と同時に俺は気合を入れた。
寄生体よりカニだ。
寄生体は飛んでしまえば無力だ。
問題はカニちゃん。
宇宙空間普通に泳いでくるからな!
結局、ゾークの主力はカニちゃんなのだ。
俺はカニを撃つ。
一発で砕ける。
だけど数が多い。
そういや……カニちゃんが宇宙から飛来するのはわかるんだけど。
惑星から惑星に移動するときってどうやってるんだろうか?
その疑問が浮かんでしまったのが悪いのか、カニちゃんが飛んだ。
背中から虫の羽みたいなのが生えて空に飛びたった。
狙うがカニちゃんはカナブンみたいに軌道が安定しない。
「狙いが定まらない!」
クレアもお手上げだ。
と思った瞬間、ぎゅんっとカニちゃんが加速した。
火の付いたガスを放出してロケットみたいに飛んできたのだ。
「ロックオンできました!」
引き金を引いた。
カニちゃんが爆散する。
怖ッ!
やっぱりなめてかかってはいけない。
頭おかしい生物である。
アリッサをココと表記した間違いが多数見つかりました。
修正したいんですが台風のせいか頸椎症の首&頭が痛すぎて現在アホの子になっております。
ちょっと待っててね。
8/25
頭痛がひどいッス
ウインチをウインカーとか書いてるレベルなので書けなかったらすまないッス




