第三百九十六話
はいはい万魔の魔女タチアナッス。
レオの兄貴とはるばる来たぜ太極国。
聖女の遺跡がある惑星に降り立つところだ。
なお不法侵入。
シーユンの許可はもらってるけど帝国的には災害救助目的だそうで。
そもそも帝国と太極国は条約を結んでない。
法律的には放棄された未開の惑星の原住民扱いなんだって。
だから未開の原住民の対応マニュアル準拠だそうで。
聞いてもわかんねえ。
一つもわかんねえ。
法律って頭よすぎて一周まわってバカなんじゃないかな?
輸送機で降り立つ。
人型戦闘機は操縦できるけど、まだ免許を交付されてない。
着陸する。太極国の軍の出動はない。
不気味なくらい静まりかえっている。
レオの兄貴は当然という顔でトレーラーの運転席に座ろうとしたらレイブンさんに止められる。
「殿、運転は我らが」
「えー……」
レオの兄貴はいろいろおかしい。
いまだに下級兵士のつもりだ。
いやアンタ准将だろ。
いつもの面々。
エディの兄貴やイソノくんや中島くんがレオの兄貴を捕まえてバスで移動する。
今回はワンオーワンはシーユンの護衛で艦にいる。
エッジくんとアリッサちゃんたちは積み降ろし作業だ。
捕まって護送される兄貴と目が合った。
すると兄貴はいきなり笑顔になった。
「なんスか?」
「タチアナはここから近くの村までバイクの練習なー」
な、なにぃ!!!
てっきり運んでくれるものとばかり思ってたのに!!!
【帝国士官学校幼年部】と刻印されてるバイクをトレーラーから出す。
アタシは背が低いのでこれになる。
オフロード仕様のバイクだ。
所定の距離走らないと記章もらえないんだって。
大気圏突入は免除だって。……背が低いから。
「えっと……」
パーソナルシールドをオンにする。
もともと戦闘服だ。
服のパーソナルシールドもある。
コケてもケガすることはない。
銃撃もバイクのシールドで数発は耐えられると思う。
シールドをオンにしてまたがる。
認証して安全装置外したりいろいろやって発進。
実は最近まで自転車乗れなかった。
うちのコロニーじゃ自転車なんてすぐ盗まれるから乗ったことなかった。
それを言ったらレオの兄貴に神社でワンオーワンと座敷童ちゃんと一緒に練習させられた。
バイク乗れないとまずいんだって。
そういやエッジくんたちも軍艦の操船実習してたな……。
操船の勉強してるけど複雑すぎて頭に全然入らねえ。
アタシにできるのか?
今から不安である。
「はいタチアナちゃん。スピード上げて」
クレアお姉ちゃんから指示が飛ぶ。
嘘でしょ!
もっとスピード出すの!?
言われたとおりスピードを上げる。
草の生えてない荒野に土煙が上がる。
パーソナルシールドを貫通した土埃でヘルメットが汚れる。
音声で指示する。
「ヘルメット洗浄モードオン」
洗浄すると視界が回復。
便利である。
地元じゃ自動車にもついてなかったぞこの機能……。
それにしてもレオの兄貴が見てなくてよかった。
もし見てたら、
「いいかタチアナ、土ってのは砂や石に生物の死体がついたもの……」
みたいな話が始まる。
するとクレアお姉ちゃんから通信が入る。
「ここは赤土みたいね。土が赤いのは鉄分が多くて……」
あの二人性格的にお似合いなんじゃ……。
ヴェロニカお姉ちゃん公認なんだけど元々張り合ってたらしいし。
そういうアタシもレオの兄貴のとこに嫁に行く予定だけどね。
今のところ不満はない。
「そろそろ遺跡に着くよ。エディ隊は村で医療活動、ケビン用意できてる?」
「できてるよー!」
ケビン姐さんはおっぱいだ。
戦闘服の上から揺れてる。
ワンもだけど、なに食ったらあんなデカくなるんだ?
ゾークの女子ってヤバくね?
……よく考えたら同じもの食ってるのか。
今のところケビン姐さんはレオの兄貴の嫁になる予定はないようだ。
周りは嫁になると思ってるっぽいけど。
双方とも葛藤があるみたい。
あんな好き好きオーラ出してるのにぃッ!?
もう元ゾークとか元男とかどうでもいいじゃん。
だって女子の誰もが圧倒的女子力に打ちのめされてるもの。
すぐに遺跡のある村へ到着。
聖女の遺跡は村の観光資源のようだ。
寂れた村にサビだらけの看板が立っている。
【ようこそ聖女伝説の地へ!】
元は人が来てたのだろう。
あまり大きくない宿があるが、どこも閉めていた。
半分廃墟みたいな村だ。
村の入り口にバイクを停める。
決まった駐車場ってのはなさそうだ。
商店ももぬけの空。
もう何年も前に撤退してそのままになっているようだ。
「寂れてるな。まるで戦争前の地元みたいだわー……」
レオの兄貴が降りてきた。
「これ見ると、うちのコロニーって都会だったんスね……」
メリッサお姉ちゃんが降りてくる。
「観光地はね、失敗するとこうなんのよ。うちも他人事じゃねえわ」
「タチアナ、こちらが観光地の達人。メリッサ様だ」
「うぇーい」
こいつら別な意味でお似合いだな。
ノリが似合いすぎてる。
二人とも心の奥に化け物みたいな陰キャ飼ってるタイプの陽キャだからな……。
「観光資源ってさ、メンテナンスとかテコ入れとかしないとこうなるんだよな。景観だけでもちょこちょこメンテナンスしないと数年でダメになるし。温泉は無限にメンテナンス必要だし。うちだってエージェント会社作って国営放送とかネット媒体とかと共同製作して時代劇作ってるし。十年放送されないとジャンル自体が忘れられちゃうし。最終的な利益なんて雀の涙だよね……」
「お金持ちの実態が涙ぐましい!!!」
「タチアナ……だから安心して。黒歴史になっても数年で忘れられるから……」
メリッサお姉ちゃん?
過去になにがあったの?
ねえ!?
その横顔は闇しかなかった。
お姉ちゃん!?
アタシがあわててるとレオの兄貴がメリッサお姉ちゃんの手を取る。
「黒歴史なんかじゃないよ。だってメリッサはかわいいから」
これだよ!
このハーレムキングが!!!
横を見るとイソノくんと中島くんが歯ぎしりしてた。
「あんたら婚約者いるでしょ」
「男の子はいろんな女の子にチヤホヤされたいの!!!」
「そうだそうだ!!!」
あ、ダメだコイツら。
私は呆れていた。
まだ私は知らなかった。
遺跡になにがあるかなんて。




