第三百七十八話
イソノと喧嘩したせいで営倉入り。
准将の営倉入りは帝国史上初めてらしい。
おかしい……なぜイソノは許される?
ムカつきすぎて血圧上がりそう。
妖精さんと遊ぼうと思ったら通信が繋がらない。
クソ! 脱走防止か!
いったん心を落ち着けるためにストレッチする。
ストレッチしてると営倉のスピーカーから嫁ちゃんの声が聞こえる。
「カッカッカ! 婿殿しばらく反省せい!」
「いや俺悪くないじゃん!? 殴りかかってきたのイソノのバカじゃん!!!」
マイクに向かって叫んだ。
俺悪くないよね?
「は? イソノの攻撃が当たっておるではないか! 婿殿は明らかに弱体化しておる! 准将の義務としてギャグ世界の住民に戻るのじゃ!」
速報、【皇帝陛下直々にギャグ世界の住民に戻れと言われる准将】。
「えー……」
でも……たしかに。
殺気を感じることもイソノの攻撃予測もできなかった。
イソノがバカ強いのもあるけど、それでも食らいすぎだ。
いま襲撃されたら普通に死ぬわ。
「理解したな! 暗殺の危険も考慮しての営倉入りじゃ! いい子にせい!」
「へーい」
しかたないにゃー。
俺、嫁ちゃんに愛されすぎだわー。
それにしてもイーエンズ爺さんと敵対してたら死んでた可能性あるな。
あの爺さんジェスターの天敵だわ~。
成仏してくれ……うん? 別に仏弟子じゃねえか。
太極国は仙人とか天女とかそういう感じの宗教だしな。
タチアナも天女の生まれ変わりの聖女とかなんとか……よくわからん!
考えるのやめとこ!
全身緩めて~。
ぐにゃーん。
猫とジェスターは液体。
さーて、屍食鬼を地獄に送るプランでも考えようかな。
まずはー、ラターニアと共同で屍食鬼の生態に関するレポート出して~。
太極国での感染状況レポート出して~。
治療法も出して~。
【屍食鬼ども。お前らをいつでも殺せるぞ】
ってメッセージ代わりに太極国皇族の感染状況も出して~。
そのついでに海賊掃討して~。
イーエンズ爺さんの仲間に海賊のボスになってもらって~。
太極国と戦争になるだろうからシーユンの情報出して~。
あとは野となれ山となれ~。
もー、どーにでもなーれー♪
要するに俺たち帝国って科学側なんだよね~。
鬼神国は工業できるけど余計な信条で生産力落としてる国。
バトルドーム加盟の弱小国家は国家再建中で工業どころじゃない。
ラターニアは工業できるけど金融に過剰に適応してる。
太極国は帝国と同じ傾向の国家だ。
でもそれも屍食鬼のせいでどうなるか……。
工業が弱くなるという予測情報も発表するか。
鬼神国が弱くなったのだって屍食鬼と遊んでたのが大きいだろうし。
さーて、屍食鬼の件は流言ではなく確定情報として発表してやろう。
屍食鬼が太極国社会の敵って認識になってもらおう。
支配を受け入れるのなら滅ぼすしかないよね~。
ただ映画に出てくるゾンビみたいに繁殖力が異常に強いわけじゃなさそうだ。
そこから崩せそうな気がする。
宗教から崩してもいいし。
地元宗教が天女とか仙人みたいなものなら死者への冒涜に対する神話の一つや二つあるだろう。
そこを逆手に取ればいい。
たいていの国家間戦争で問題になるのは【どこまでやるか】でしかない。
屍食鬼は滅ぼす。慈悲はない。
太極国は……シーユン次第だ。
基本的には俺たちの都合で好きなようにさせてもらう。
なお、わざわざ侵略戦争からの分断統治するほどのリソースは当方にない。
屍食鬼退治がせいぜいである。
とにかく屍食鬼だけは許さん。
さーてストレッチ終了。
筋トレでもするかね。
するとまたスピーカーから声がした。
「あ、あの、レオ様」
シーユンだ。
「うん? どうしたん?」
「あの……」
なんだろうか?
「ほれ、さっさと言うのじゃ!」
なんだ嫁ちゃんか。
「どうしたん? 言ってみ」
「あ、あの……レオ様は太極国を滅ぼすのですか!?」
「滅ぼしても責任取れないからヤダ」
やだめんどくさい。
屍食鬼だけ排除して交易する方がいい。
「ほらな。言ったとおりじゃろ? 妾は個人的にはシーユンが皇帝になってくれたらと思うが。……すでに候補は何人も確保しておる。好きにせい」
皇位継承権10位あたりから何人も確保してる。
中には屍食鬼の恐ろしさを知ってるものもいる。
シーユンの方が統治が楽だろうけど、別にこだわる必要はない。
だって皇位継承権上位は屍食鬼に体を乗っ取られてみんな死んでるし。
誰がなろうが国を立て直すためにはラターニアの援助が必要だ。
ラターニアだって太極国がまともな方が都合がいいってだけで、財産やリソースを狙ってくるだろう。
死ぬほどたいへんだろうことは想像がつく。
ヘタすりゃラターニアの経済植民地一直線だろう。
そういう意味じゃ皇帝になるのは外れクジもいいところだ。
安易になれなんて言えないよ。
「……ここにいてもいいんですか!?」
「うむ。たしかにイーエンズの思惑は違うのだろうが、妾も婿殿もイーエンズと同じ方を向いてるわけではない。よく考えるがいいのじゃ」
「とりあえずさ、同室の三人とも今置かれてる状況が似てるからさ。三人で話し合ってみてよ」
ワンオーワンはゾークの女王だし、タチアナは鬼神国から太極国までの神話に出てくる聖女と思われてる。
そこに太極国の第三皇子(ただし女の子)である。
三人を同室にしたのは我ながら良いアイデアだったと思う。
「わ、わかりました」
「それよりさー、嫁ちゃん。そろそろ出してよ~。暇なんだよ~」
「あー、はいはい。出たらまずはカトリのところに行け」
「なんでぇ? なんでカトリ先生のとこぉ?」
「【体力が余ってるから余計なことを考えるのだ】だそうじゃ」
「なんで俺の周りは脳筋しかいないのぉ!!!」
もうやだこんな生活!
いいもん!
カトリ先生に勝つもん!!!
こうして俺はまたもや無謀な戦いに乗り出すのだった。




