第三百七十四話
イーエンズ大人と子分、それにミン皇子とシーユン姫を連れて外を目指す。
「来た道に太極国の兵士が集まってきてる。地下鉄の方がまだマシだよ」
殺意高すぎである。
「ラターニア兵は?」
「外でもめてる。今出たら全面戦争になるかな?」
現在交戦状態の太極国とラターニアが全面戦争に突入しても困らないが……その引き金を引いたのが銀河帝国というのは嫁ちゃんの顔に泥を塗るのと同じだ。
嫁ちゃんは「しかたないのー」で許してくれるだろうが俺はヤダ。
できる大公はちゃんと交戦しないのよ~。
「地下鉄から出るわ。誘導頼む!」
「了解」
なおビースト種にボコボコにされた皆さんであるが、その辺にあった資材で雑に拘束してある。
気を失ってるけどそのうち起きるだろ。
簡易検査では屍食鬼陰性。
つまり末端までは屍食鬼になってないようだ。
たぶんだけどミンとシーユンの二人を始末した後に皇族殺害犯に仕立て上げられて死刑にされるんだろうと思う。
処刑したことにして体を乗っ取って再利用かも?
俺が太極国側に潜入した屍食鬼なら高確率でそうする。
自分の安全も考えて一族皆殺しに誘導するかな~。
使える肉体が増えれば増えるほど屍食鬼は有利になるし。
ゲーム的に考えてね。
相手のカードを読んでいく、こういうタイプのゲーム感覚は本当に大事。
口に出したら怒られそうだけど。
そう考えると末端まで乗っ取らないのは意図があるのか?
それとも寄生虫の分際で生産力が低い?
それは俺の考えることじゃねえか。
報告書上げとこ。分業重要。
地下鉄の路線に出る。
地下水排出用の側溝にタバコが大量に捨ててあって側溝は詰まってる。
水があふれ出て汚い。
現場作業員のレベルは低いようだ。
地下鉄の高圧線は断線してるようで電気は流れてない。
太極国の主要エネルギーが電気なのがわかる。
こっちの銀河とは互換性はないけど似たような技術体系である。
発電までの技術は微妙に違うけど、最終的には電気なんだよね。
……便利な未来技術を手に入れてなきゃそんなもんか。
照明は消えてる。
完全な闇だ。
暗視装置をオンにして先に進む。
いやライトの方が視認性がいいんだけどね~。
人間型相手なら暗闇から先制攻撃した方がいいもんね。
俺たちは近接戦闘で音出さないで攻撃できるし。
サクサク進んでいく。
すると敵を発見。四人ね。
ハンドサインで作戦確認。
【突撃する】
【了解】
って感じで。
エディと俺で突撃。
音出さないで後ろから絞め技。
首トンできるようになりたい。
首トンの練習してたら練習用の人形の首もげたんだよね……。金属製なのに。
エディも絞め技。
犠牲者二人を雑に縛って放置。
あとの二人はエディと飛びかかって普通に殴る。
パンチで意識刈り取るのは得意だ。
やっとのこと作業員用の外への出口を見つけた。
ラターニア軍に連絡して回収してもらおう。
暗視装置を切って外に出る。
まぶしい自然光を浴びて安心する。
「ふへー」
メリッサに抱っこされてたシーユンが俺の方に来る。
「手繋ぐ?」
「はい」
そう言ってシーユンは下を向いた。
照れちゃってかわいいなー。
こういう妹が欲し……うちの妹分たちは元気すぎて……こういう正統派の子遭遇したことなかっただもん!
ミン皇子はそれを見てほほ笑んでた。
なんかミン皇子……大人びてるんだよな……。
俺……同じくらいのころ食い物のことしか考えてなかったよ。
ま、あとで悪いこと教えようっと。
サッカーとか野球とかマンガとかゲームとか。
ラターニアの輸送船が見えてきた。
おっし任務完了……と思ったんだけどね。
あちこちから殺気が飛んできやがった。
ですよねー!
もうここが最後のチャンスですもんね!!!
来ますよね!!!
殺気が俺に……違う!
シーユンを抱いて殺気をよける。
「隊長!」
ビームがかすめた。
まずい! ミン皇子!
だが殺気の先はシーユンに集中してる。
シーユンを守る。
クッソ! ビーム武器じゃ弾丸つかんでビビらすこともできねえ!
「な、なんだ! あの化け物は!」
「ビームをよけてやがる!!!」
「仲間にもビームが当たらねえ!」
あ、効果あったわ。
すると助けに来たラターニア船が警告してくれた。
「彼らはラターニア銀行の従業員である!!! 攻撃を停止せよ!」
いやどう見ても無理がある。
だってシーユンはともかくミン皇子は伝統衣装だ。
……そういうことか。
「シーユン……君が第三皇子か?」
いやでも、俺が女の子の骨格間違えるはずないし。
どう考えても女の子でしょ!
混乱してると太極国側が俺たちに警告してくる。
「貴様らにはテロリストをかくまってるとの容疑がかかっている! 大人しく投降しろ!!!」
嘘だね。
いきなり攻撃してきたじゃん。
それは通らねえよ。
バカじゃねえの。
「ふ、ふはははははは! バレたか! この希代の大悪党、海賊イーエンズは逃げも隠れもせぬ! 太極国第三皇子ミンを返して欲しくば我を倒してみろ!!!」
なぜか芝居がかった声でイーエンズの爺さんが叫んだ。
イーエンズ爺さんは剣を抜く。
「レオ様。シーユン様をどうかよろしくお願いいたします」
海賊たちが太極国の兵士に突撃する。
「さあ! 我が一族の恨み! ここではらそうぞ!!!」
俺はわけがわからないままシーユンを抱っこして撤退する。
エディはミン皇子を抱っこして逃げる。
わけがわからねえ!
どういうことよ!
「レオ閣下! そのまま作戦ポイントへ! ラターニアが救助いたします!」
俺たちはラターニアが指示した作戦ピントへ急いで向かう。
わけがわからん!!!
だけどイーエンズ大人と海賊たちが命をかけたのだ。
命をかけたのなら期待に応えてやらねばならない。
銃声が響いた。
おそらくイーエンズ大人と会うのはこれで最後だろう。
シーユンは震えてた。
「わ、私は……こんなことを望んでなかった」
「イーエンズ大人の気持ちを大事にしてください」
ラターニア船が見えた。
するとミン皇子がエディから飛び降りた。
お、おい!!!
「ミン皇子!!!」
「朕のことはかまうな!!! 朕は! 朕はここで死ぬために生まれたのだ!!!」
「だ、だめ! ミン! 私が許します! だから生きて!!!」
シーユンが叫んだ。
するとミン皇子がほほ笑んだ。
「姉上……たった一週間でしたが、朕は幸せでした」
もうギリギリだった。
ラターニアの輸送船が開いた。
それだって間に合わないかもしれない。
エディは本気で走った。
だけどどう考えても……。
「エディ無理だ!!!」
イソノがエディをつかんだ。
エディは顔を歪めて輸送船に走った。
俺たちは輸送船に乗り込む。
太極国は装甲車に乗ってきやがった。
条約違反、しかも過剰戦力にもほどがある。
やめろバカ!
俺の能力は届かない。
ジェスターの能力の限界。
それは本人が死を望んでること。
絶望も、ゾークマザーも、プローンもだ。
本人や種族全体が死を望んでいた。
死を望みさえしなければ和解ルートだってありえたのだ。
だからプローンも子どもだけは生き残ったのだ。
心の底から自己の死を望むミンは俺には救う手段がなかった。
「クソ! イソノてめえ!!!」
エディがイソノにつかみかかる。
「やめろエディ……俺の能力が発動しなかった。救えなかったんだ……最初から……」
クレアが俺の背中をさすってくれた。
メリッサは涙を流しながら輸送船の床を殴ってた。
「シーユン……真相を教えてくれ」
シーユンは静かにうなずいた。
直前までミン皇子生存ルートと迷ってたんですが、当初の案でいこうと思います




