第二百九十七話
嫁ちゃんの式典を惑星サンクチュアリから視聴する。
食堂はごった返していた。
居残り組の兵士には、ここでなにが発表されるかはすでに知らされていた。
実は兵士には口止めしてない。ご自由にどうぞと放置してる。
そのせいかネット界隈では外宇宙からの侵略者の話がまことしやかにささやかれていた。
ただゾークですらオカルト側の存在のため外宇宙の敵ともなると理解の外。相手にされてない。
それよりも好調な株価や連休の行く惑星の話題なんかで盛り上がっていた。
実家のカミシロ領なんかも新しく発見した温泉やら、やたら人間にフレンドリーな野生動物の話題で盛り上がってる。
観光客数が前年比数百倍だって。
あまりの人手不足に親父と長兄は軟禁を完全に解かれた。
領主経営宿舎と土産物店、それに観光市場に温泉施設が併設された施設で働いてる。
帝国の軍人共済組合の委託事業なんだって。
貧乏神属性の親父たちが働いているのに経営は異常なくらい順調。
その凄まじさは予約が取れないほどだ。
連休前になると予約サイトにつながらない。
2号店出さないかと銀行からかなり強引な打診があったくらいよ!
なんで今まで借金漬けだったのかわからない。
これだけでも公爵会ぶち殺してよかった。
そうそう、クレアの実家もとんでもないことになった。
公爵会はスーパーやドラッグストアなんかの流通大手、さらに飲食チェーンやらスポーツジム、学習塾までも経営していた。
銀行や損害保険大手、商社もある。
そのどれが帝国民の怒りを買って経営破綻。
我々がすべて押しつけられた。
誰も買えないんだって。
そんなの無理だよぉ……と普通ならなるのだが、そこはクレアさん。
士官学校生徒やら大学校やら大学院の学生の実家に連絡。
カミシロ一門の仲間として経営しないかと話を持ちかけまくった。
その結果、テーマパーク事業はノウハウのあるメリッサの家が仕切ることに。
イソノや中島、レンにニーナさんに……使えるコネはすべて使った。
商社は嫁ちゃんの仲間の商社に押しつけた。
お前もカミシロ一門だ!!!
一見すると新たな公爵会の出現に見えるが、公爵会みたいにケチじゃない。
そもそも仲間の数は膨大。
公爵だけで利益を独占するなんていう暴挙は不可能。
あれは何百年もかけて帝国を牛耳ったからできるわけでな。
男爵子爵に平民にも経営できる人材に分けていく。
俺たちだけじゃ能力的に不可能だったのってが大きい。
こうして帝国経済の正常化による高成長に世間はわいていた。
外宇宙の脅威は好景気のニュースのすき間のゴシップニュース扱いだった。
式典が始まった。
嫁ちゃんは皇族の儀礼服でスピーチした。
それと同時にニュース速報が入る。
打ち合わせ済みなのね!
【外宇宙の脅威迫る。帝国宇宙海兵隊を外宇宙へ遠征させることを決定】
従軍記者さんが本社に連絡する。
俺たちのインタビューも事前に終わらせてる。
出していいよ~っていう連絡だ。
戦勝気分でパイル●ー●ンしてた国民の皆様もパニックに……。ならなかった。
覚悟ガンギマリ。
勝ち癖のついた国民は落ち着き払ってた。
株価も暴落するかなと思ったらすでに織り込み済み。
むしろ外宇宙への進出を好材料とした。
嘘だろ……。
まずは新型船を作ってるところである。
もうね、外宇宙だから戦艦自体を要塞とする方向で行くみたい。
今回はビーム兵器も持っていく予定だ。
戦いの準備は整いつつある。
式典が終わってからがたいへんだった。
銀河中のマスコミが宿舎に押し寄せた。
幸いトマス義兄さんがマスコミ対応をしてくれた。
持つべきものはマスコミに慣れた義兄である。
でもさー、宿舎の中にまで入って俺にインタビューしようとする輩は多いのよ。
ほらそこにも。
「レオ・カミシロ少佐! 外宇宙に対して一言!」
「はい、ぱこーん!」
メリッサが木刀でぶん殴る。
倒れた記者を憲兵が逮捕した。
……一言くらいはいいか。
俺は拘束されて床に押しつけられた記者の前にしゃがんだ。
「記者さん。外宇宙の件ですけど。敵がいるなら戦いますよ。逃げ道なんてありませんから。なにせ俺はカミシロ大公家の家長です。皇帝陛下や家族を守らなきゃなりません」
すると記者はこっちを見た。
おじさんというよりおじいさんに片足突っ込んだ年齢のようだ。
たぶん業界では偉い人なんだろう。
おっさんは俺をじいっと見て値踏みしていた。
でも残念。俺は記者さんに嫌われても困らないのである。
「怖くないのかね?」
偉そうな態度で聞かれた。
「怖いッス。でも逃げねえッス。軍をクビにならない限りは」
当初は逃げようとしたのは秘密だ。
おっさんはなぜか立ち上がり俺に頭を下げた。
「ふッ……悪かった謝罪する」
あらま素直。
憲兵に身とも確認されてから追い出される。
だけど記者は素直に応じてた。
なんだろうね?
後日、なぜか出版社から謝罪文が届いた。
俺でも知ってる大手だわ。
それ同梱で週刊誌の見本誌が送られてきた。
【レオ・カミシロ少佐「怖いッス。でも逃げねえッス。軍をクビにならない限りは」】
そのまんま載せやがったな。
俺の戦績とか活躍を客観的かつ詳細にまとめた記事だった。
俺の嫁さんたちの情報から、エディやイソノ、中島ら男子の情報、他の女子の情報など盛りだくさんである。
ちゃんと俺たちをまとめた情報がなかったせいか売れに売れまくったらしい。
記事自体は【レオ・カミシロが英雄であることは承知してるが、それでも少年を戦場に送り出したのは失策】と批判的に書いてあった。
そうだもっと書け!
できればイチゴにトマトにエンサイの過剰生産も批判しろ!
そんな記事が出たからネットのおもちゃにされるかと思ったら……そんなことはなかった。
逆に人気が出た。
共和国領伯爵に任命されたワンオーワンの写真が出たら一気に人気が爆発。
敵じゃないから余計に推せる形だ。
ケビンが分家っていう形になって、かなりの惑星を所有することになった。
二人ともアイドル扱いで報道から逃げ回ってる。
さーて、そんな中、約束を果たすときが来た。
ワンオーワンのパフェである。
嫁ちゃんが店の方を送ってくれたのだ。
くっくっく、さあ、たんと召し上がれ!!!




