第二百九十話
普通に考えればクローンなんだろうけどさ~。
意図がわからんのが問題である。
俺に遺体を見せる必要もない。
時間稼ぎってわりには罠の一つもない。
惑星ごと爆破とか外道な手段はいくつか思いつくが……。
いや……できない。
よく考えたらこの距離なら惑星サンクチュアリまで巻き込む。
直接的な滅亡じゃなくても隕石が降り注いで駐留は不可能になるだろう。
判断に余計な因子をぶち込むタイプの心理戦ではなさそうだし。
わからん!
あれからホラー苦手勢のメリッサは休んでる。
物理で殴れないものは苦手なようだ。
貴重な前衛が……。
でだ、今日は有識者に話を聞いてる。
アオイさんとワンオーワン、それに共和国の皆さんだ。
「わからないであります!!!」
はい、今日も元気ね!
お兄ちゃんチョコあげちゃう!!!
「ありがとうなのであります!」
いい子いい子。
でだ、本命はアオイさんだ。
アオイさんなら知ってるはず!
「わかりません」
終わった……。
「ただ……アヤメがマザーだとしたらクローンを作って代替わりしているのかも」
「その残骸を見せる意図がわからん……」
結局意味がわからんのである。
とりあえずアヤメの遺体を回収することになった。
今回は俺も合流。
ジェスターの能力でなにか起きるかもって話だ。
祭壇へ行く。
祭壇のある部屋は蜘蛛型のドローンでようやくたどり着ける程度の隙間しかない。
なのでハンマーで壁を壊す。
案外もろい壁を壊すと、部屋にたどり着く。
作業員が喜ぶ中、壊した壁の残骸を拾う。
鉄筋みたいなものはなし。
……後から部屋を埋めたようだ。
なんじゃこりゃ。
中の部屋には見たことないデザインの異様な端末があった。
それは肉。
手の形にくぼみがある。
手を置いたらバッドエンド直行だろう。
きっとそうに違いない。
これは他の兵士にまかせよう。
俺は絶対に触らない。
床にケーブルが垂れていて、その先は祭壇に繋がっていた。
これ本当に祭壇か?
「少佐、おそらくそれは祭壇ではありません」
アオイさんから通信が入る。
まだ歩行に支障のあるアオイさんは船にいる。
「ここはおそらく実験場です」
「なんの実験?」
「おそらく新型を生み出すための実験かと。そこの育成ポッドは見たことがあります」
壊れた大きくて透明な円形水槽が見える。
ホラーゲームなら敵が突き破って襲いかかってくるやつ。
そしてさらに奥に普通のコンピューターもあった。
こっちならわかる。
「その端末起動してください。ここからあっちの辺な肉コンピューターに侵入してみます」
「端末起動します!」
他の作業員にも聞こえるように大きな声で言う。
端末を起動する。
古!
インターフェース古!
業務用でコマンドラインだ。
前にレンの実家で触ったやつの方が新しい。
「ユーザー名はっと……」
いきなり詰んだ。
「あきらめるな! はい管理者ですよ!」
妖精さんがうまいことやってくれたようだ。
操作は帝国のとそんなに変わらない。
コマンドは帝国のコンピューターとほぼ同じか。
ヘルプ見ても業務用のやつと同じなのを確認できた。
ドキュメントフォルダには鍵が……。
「ロック解除っと」
妖精さんの前には鍵など無意味だった。
中を開けると書類の山である。
「全て戦艦のサンドボックスに移動しますね」
「へーい要約頼んます」
「うーん、何百年も前のシフト表やらゴルフの予定やらですね」
思いっきりくだらなかった。
「グループウェアにアクセスして……データベースからデータぶっこ抜いてっと……」
作業しながら妖精さんは腕を組んで首をひねっている。
「どうしたん?」
生身なら肩こりを心配するところだ。
「普通に考えてそんなくだらないファイル置かないですよねえ」
「そりゃそうだ」
普通は【かゆうま】くらいの情報はある。
「とにかく肉のアクセス方法のマニュアルを探さないと……おっと」
「どうしたん?」
「いやほら、前に船に神様がいるって話してたじゃないですか」
「いきなりホラー!?」
「いいから! ゾークどもは神様を作り出そうとしてたみたいです」
「頭おかしいのかな?」
神様なんて作ろうと思って作れるものじゃない。
なに考えてるの?
「なに言ってんですか。レオくんだってこの戦争勝てば死後に神様として奉られますよ」
「は? 勘弁してよ!」
神様扱いなんて勘弁してほしい。
いいことなんにもねえぞ!
そもそもだ。
帝国で最も神に近い存在は妖精さんである。
「とにかくゾークというか共和国ですね。彼らは神を欲した。ただし神社に寺にと宗教に関してテキトーな帝国とは違い、絶対的な一柱ですけどね。つまりそれが……」
「マザー?」
「そういうことですよね? アオイさん」
「私の時代はそこまでの空気ではありませんでしたが……」
ワンオーワンもアオイさんも限界共和国知らないからな。
弱肉強食が行くとこまで行くとこうなるのか。
「つまり……そもそもゾークと交渉ができないのは?」
「ゾークが神の目線だからです。対等と思ってないからこそ帝国へのアプローチが雑なんですよ」
それがゾークの長所であり短所なのだ。
「おそらくどこかで上位存在に遭遇したんでしょうね……外宇宙かも」
神が必要になるね……。
ゾークはどんな存在と遭遇したんだよ!?
「とりあえず全て回収しましょう」
「へーい」
片っ端から回収していく。
ゾークの技術は習得しても応用できない。
でも敵を知るには必要なことだ。
その日のうちに全データが解析される。
で、食堂でいつメンとメシ食いながら会議。
おっさんたちの会議とは別だ。
なおもう一人の絶望、通信相手の惑星がとっくに滅んでたこともわかった。
それを知らせるメッセージを送っておいた。
「嫁ちゃん。どうする?」
「とりあえず後ろからゾークに襲われる心配はなくなった。決戦じゃ」
これで全領土の奪還ができるわけだ。
長かった……これからは俺の学園ラブコメを楽しんでくれ!
「用意できしだいじゃ。追加の遠征軍も合流したら一気に叩く」
とうとう決戦である。
……決戦だよね?
なんか外宇宙で遭遇した神とかの要素あるけど、行かなきゃいいんだよね?
解決だよね?
俺イヤだからね!
遙かなる航海しないで延々と序盤マップで雑魚狩って遊んでたいんだからね!!!




