第二百八十三話
【ぴえーん! お化け怖いよ~!!!】
と、嫁ちゃんたちに泣き言を送信したらクラスの連中全員で肝試しをすることになった。
な、なにを言ってるかわからねえ!
「ぎゃははははは!!! レオ! お化け怖いんだって!!!」
イソノが指さしてゲラ笑い。うぜえ。
「ぎゃははははは!!! レオが怖いって! ゾークだって怖くねえのに!!!」
中島もゲラ笑いである。殴ろうかな?
するとワンオーワンが首をかしげる。
「少佐が怖いってゾークより強いでありますか? もしや新型でありますか?」
全員の視線がワンオーワンに集まる。
その発想はなかった……。
「さ、さすがにゾークはなかろう」
「で、デスヨネー!!!」
俺と嫁ちゃんも大慌て。
ということで俺は心電図計持ちながら移動である。
「で、どこでお化け見たって?」
廊下でエディに聞かれる。
「トイレ行ったついでに自販機で飲み物買おうと思ったから、そっち」
まずは再現。
トイレ側に行ってから自販機の方へ。
「そしたら声がしてさ」
「……けて」
「ほらこんな声! まったくもー! 俺を驚かせようとして!」
俺がそう言って振り返るとエディの顔が青くなってた。
なによその顔。
イソノと中島は抱き合ってる。
なんなのお前ら。
「むむむむむむ! 婿殿!!! ちちちちちち違う! 妾はなにもしてない!!!」
「だろうね。エッジあたりが仕込んで……」
あれエッジも顔青くしてる。
アリッサもぶんぶん首振ってる。
「じゃあタチアナは……」
タチアナはぺたんと床に座り込んでる。
腰が抜けたみたい。
あっれー?
「クレア……」
ぽくぽくぽくちーん。
壁に体を預けて気絶してた。
「メリッサ……」
「お化け怖いお化け怖いお化け怖いお化け怖いお化け怖いお化け怖い……」
こっちも床に座り込んで耳を塞いでブツブツ言ってる。。
そっかー、みんなお化けダメだったか。
うーん安心したわ。
嫁ちゃんは震えて俺にしがみついてる。
同じクラスの連中も大なり小なり怖がって使い物にならなくなってた。
パーティーが全滅する中、たぶん種族的に恐怖耐性が一番強いレンが俺の方に来た。
「旦那様。ルナ様が沈黙してます」
なんだー!
仕掛け人は妖精さんか!
もー! いたずらっ子だなあ!
「妖精さんやめてよ~! もー! 悪趣味ないたずらだな!」
すると妖精さんが現われる。
だけど難しい顔をしてる。
なによその顔。
「なによ妖精さん?」
「んんんんんんー? たしかに聞こえるんですよー。レオくんだけじゃなくて、みんなの聴力には反応あるんですよ。でも端末のマイクには雑音しか入ってないんですよね」
「雑音? 自販機の音?」
「だと思うんですけどねえ。おっとできた、雑音を解析して環境音を消したバージョンです」
聞いてみる。
【助けて】
「完全に言ってるじゃんか!!!」
「うーん……でもこんなに近いのに環境音に紛れること自体がおかしいし……」
考えているとまた声がする。
「助けて」
そうだ!
女の子だ!
女の子がいたはずだ!
「エディ! みんなを頼む!」
「レオ! ちょ!」
俺は自販機へ走る。
たしか俺がいたあたりに……。
女の子が見えた。
「妖精さん!」
「防犯カメラで確認! 実体のはず!」
「了解!!!」
俺は女の子に近づく。
次の瞬間、なにかが飛んできた。
ボールだと気づいたのは顔面にぶち当たってからだ。
この感触……よく子どもが遊んでるピンク色の樹脂製キャンディーボールだ。
競技で使うやつじゃなくて、子どもというか就学前の幼児が遊ぶやつ。
顔面にぶち当たった球を無理矢理キャッチ。
ラメ入りでキラキラしてる。
ボールに気を取られたせいでコケて尻餅をついた。
そのまま滑って壁に激突。
痛い。
心電図計も外れて転がっていた。
女の子の方を見るがもうどこにもいない。
「かかかかかかか、壁の中に消えました!!!」
「ホログラムとか?」
「どこに投射器あるんですか!!!」
ないな。
壁の中ね……ほう、拙者これでもエンジニアの端くれ。(ただライセンス持ってるだけ)
通風口よし。
「あ、悪いこと考えてる」
「ふっふっふ……壁の中へレッツゴー!!!」
「やると思った!!!」
天井の通風口カバーをジャンプキックで蹴っ飛ばして外す。
そのままもう一度。指さえかかれば侵入できる。
指が引っかかった!
中に入る。
ここから匍匐前進でダクトの中を通る。
「レオくん……完全に動きがホラー映画のモンスター……」
「お黙り!」
予想どおりダクトは壁の中に通っていた。
さらに進んで奥に行く。
「ああん?」
変な部屋があった。
外に繋がるドアはないのに部屋の空間がある。
その中心には祠、社?
とにかく何かを奉っていた。
意味がわからない。
ナニコレ?
その祠であるが倒れていた。
おそらくワープ時にコケたと思われる。
一応元にあった場所に戻しておく。
でも俺は手順とかわからない。
嫁ちゃんに画像を送る。
「婿殿! いまどこにいるのじゃ!」
「ダクトの中。神社みたいなの見つけた」
「え? ちょ、ちょっと待て! どこにも繋がってないのか!?」
「うん、出入り口ないよ」
「もー! わけがわからないのじゃー!!!」
事件は誰にもわからない展開を見せたわけである。
で、戻って夜だというのにピゲットやトマスと会議。
おまけにカトリ先生まで加える。
トマスはわからないって言ってたけど、カトリ先生とピゲットは知ってた。
昔の船は神様を奉ったらしい。
二人の若いころは高位貴族や皇族の船には航海の成功を祈ってそういったものを設けたんだって。
麻呂の代になって伝統は急激に風化、今に至ると。
麻呂の野郎、相変わらずろくなことしねえな。
で、なぜそんな昔の仕様が嫁ちゃんの船に残ってたか?
総責任者が古い技術者だったみたい。
怒られるからわからないように隠したと。
「入り口を作るぞ」
嫁ちゃんの命令で急遽工事が行われた。
入り口はいつでも作れるようになったそうで。
さすがに宮大工はいないから木工得意勢が社の応急修理。
あとで作り直すって。
で、復旧したネットで神職の偉い人がリモートで儀式をする。
もはやカオスの極みである。
で、俺の方もデータ取りが終わって部屋に帰ることが決まった日の夜。
寝てると枕元に女の子が立った。
「うっす」
挨拶するとほほ笑んだような気がする。
顔わからないけど。
「ありがとう」
そう言って消えてしまった。
神様?
それとも座敷童的な存在?
よくわからない。
こうして研究所区画に社が設置されたのである。
「れれれれれれれ! レオくん! この艦! 性能が20%上がってます!!!」
後日、妖精さんが慌てた声で俺に言った。
オレ、ワカラナイ。




