第二百七十一話
あれから数日。
少佐のお仕事も一段落。
座標衛星も打ち上げたし、食料などの物資も余裕がある。
造形プリンターは適当な岩石砕けば素材が手に入る。
ゾークの殻とかもあるので素材も問題なし。
エネルギーは2、3年分はある。
最悪適当な恒星の近くに行けば熱と光でいくらでもエネルギーをチャージできる。
発電効率は悪いらしいけどね。
物資をエネルギー作成に回せば数年分。
ゴミ処理施設と汚水処理施設も問題なく稼働中。
有機肥料化施設も問題なし。
施設で作った肥料を使う野菜工場も順調に稼働中。
最新艦だから実習船とは違って処理施設の清掃をしなくてもいい。
数年は戦える。
巨大軍艦だからこの辺困ることないよね?
マウスウォッシュしかないという状態で漂流しているわけではない。
物資の豊富な最新鋭艦は精神的余裕が生まれるのである。
冷凍食品もインスタント食品も大量にある。
いくら食べても問題はない。
勝ちである、完全勝利である。
はっはっはっはっは!!!
「インスタント食品禁止」
「なんですと!!!」
給仕係のケビンに言われる。
健康に悪そうな食品こそジャスティスと故事にあるくらいなのに。
「な、なぜに!?」
「栽培施設の生産過剰だって。はい、お芋と野菜食べてね」
というわけで野菜山盛り。
サラダだけじゃなくて野菜尽くし。
トウモロコシ畑で間引いたヤングコーンも大量である。
野菜カレーにヤングコーン合うな……。
「ひ、姫様、野菜は食べられますでしょうか!?」
「自分は好き嫌いないであります」
「なんと! なんと高潔な……」
野菜カレー大盛りを食べるワンオーワンを見て執事のおっちゃんがむせび泣く。
見なかったことにしよ。
それに比べて……。
「ワンオーワン、ナス食べるか?」
「タチアナありがとうなのであります!」
「小さいコーン食べるか?」
「タチアナありがとうなのであります!」
「グリーンピース食べ……」
「タチアナちゃん、好き嫌いはダメだよ」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ。
ニーナさんが圧をかける。
「ひゃい! 野菜美味しいッスね! ニーナ姉!!!」
慌ててタチアナが野菜を食べる。
タチアナは野菜嫌いなんだよね。
コロニーでもケビンのところは首都に近いから野菜食べる文化が消えてないんだけど、タチアナのところくらいになると自炊文化が完全に死んでて冷食とインスタントそれに携行食糧くらいしか食べたことない人が多い。
なのでお子様味覚のまま育つのである。
タチアナは箸を使うところから直されて、現在は野菜に挑戦中というわけである。
なお食わず嫌いのため食べられないわけではない。
食べる習慣がないだけだ。
そんなタチアナもジャガイモは食べる。
バターのっけたふかし芋も好きだ。
なんという絶対正義。
それがジャガイモである。
なお嫁ちゃんは俺の前の席で上品に食べている。
クレアもメリッサもレンもきれいに食べていた。
肉好きのレンもタチアナの教育を考えて今は我慢である。
俺は私物の魚肉ソーセージをわからないようにレンに渡す。
「はい賄賂」
「旦那様ぁ……大好き……」
買っておいてよかった。
そんな野菜生活であるが続くと士気に影響する。
いや野菜嫌いじゃないんだけど、ずっとだと嫌になるよね。
なお農家しかいない惑星出身の俺は問題なし。
野菜どんとこい!!!
おっとデザートはイチゴだな。
最近イチゴがたくさん出るな。
在庫大丈夫かな?
それにしても嫁ちゃん……大人しくないかな?
「婿殿問題が……」
部屋に帰ると嫁ちゃんがドアの鍵をかけた。
深刻な顔をしてる。
「なにがあったん?」
「下層に来てくれなのじゃ。クレアとケビンも同行する」
なんなのよ。
怖いな。
戦艦下層の生産施設に案内される。
ほう……いちごの箱がたくさん。
いいんじゃないの?
「レオ……驚かないでね」
クレアまで深刻な顔してる。
水耕栽培施設か。
問題ないだろ……っと思って中に入ると異常が一目瞭然だった。
「なんでイチゴだらけなん?」
イチゴ、イチゴ、イチゴ!!!
冗談ではなくあふれんばかりのイチゴが区画を占領している。
野菜感覚で育てられるからイチゴは戦艦でよく栽培されてる。
けど水耕栽培の一区画がイチゴで占領されてるのは異常だ。
つうかイチゴって採れるまで200日かうらいかかるんじゃなかったっけ?
「イチゴってこんなになるんだ……」
「ならないはずじゃ」
「レオ、200日たってないの」
「はい?」
「婿殿、戦艦栽培用の新しい品種なのじゃ……だがやりすぎじゃ」
「ほう……まーでも冷凍しても美味しいから大丈夫じゃないの?」
「レオ……聞いて、すでに冷凍で貯蔵してるの。ところが三日でこの惨事に……今日のカレーの具にも入れたんだけど減らず……」
カレーに入ってたんかい!!!
「なんで製造途中でやめなかったん?」
「成長が早すぎるのじゃ! 対処する前にみんなできてしまったのじゃ!」
「とりあえずこの区画を焼却処分すれば……」
「規則でできぬのじゃ! 我らは遭難中扱いでの。その際のマニュアルに食糧や苗を処分するのを禁じる項目があるのじゃ。前に食料処分して全滅する事故が何件もあったらしい」
「規則を変えれば……」
「議会を通すのに何ヶ月もかかる」
独裁者じゃないから難しいよね。
「アルコール醸造とかは?」
「すでにやっておる」
「……待って、つまり食えと?」
「そういうことじゃ」
イチゴクライシス!!!
「ま、毎食……?」
「うむ毎食じゃ」
「期間は?」
「数カ月を見込んでる。助け出されれば短くなるが……」
「えっとケビンとニーナさんには?」
「婿殿の後に伝える予定じゃ」
なんということだろうか。
食糧危機では全然ないんだけど、宇宙海兵隊のお残し禁止項目がこんな事態を生み出すなんて……。
イチゴ……毎食イチゴジャムとかだろうか?
「とにかくなんにでもイチゴが入ってると思ってくれ」
漬物までありそうだ。
こうしてよくわからんことで航海に暗雲が立ちこめてきたのである。
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