第二百六十九話
エンジンを再起動。
なおこの辺の技術はブラックボックス多すぎてもはや整備班でもわからん。
とりあえず修理でも造形プリンターで出力したパーツに組み替えていく感じだ。
無理な停船で痛んだ部分を交換する。
艦隊の損害は敵の攻撃の規模を考えれば奇跡的に軽微な損害だった。
あれだけの爆発で死人ゼロ。(ワープによる入院者多数)
トマスのところも諸侯のところも修理だけですんでいる。
俺たちがやる気をなくすことはなかった。
で、名ばかり高級士官の俺は今日は電気系エンジニアとして勤務。
主に内装の電気系の修理である。
というか、船内ケーブルなんかの大きな工事のエンジニアは足りてる。
俺たちは人手が足りないところを経験してるから船外工事までできるけど、やらせてもらえない。
専門家がいるからね。
俺は学生でもできる給湯器、照明の交換任務である。
「給湯器の交換でーす」
作業着を着て食堂で交換任務。
「あれ……あれ少佐じゃね?」
「カミシロ少佐が給湯器取り替えてる」
遠巻きにクルーにヒソヒソ話される。
士官学校の連中や近衛なら俺がたまにエンジニアやってるの知ってるのに……。
「あれ? レオの兄貴。なにやってるんスか?」
タチアナがやってきた。
「あんた昨日まで入院してたでしょ」
「そんな昔のことは忘れたな」
「あー、クレア姉。レオの兄貴が食堂で働いてる」
「ノータイムで密告だと!!!」
通報を受けたクレアとワンオーワンがすぐにやってくる。
俺は逮捕されるのだった。
「安静にして言われたよね」
床に正座でお説教。
「いや仕事しないと不安で……将来が……」
「レオは大公閣下で皇帝陛下の婿でしょが!!!」
「ほら……失脚したら離婚されるかなと」
「そしたら私が食べさせてあげるって! うちのスーパーで働けばいいでしょ!」
「クレアしゃん……」
「いやあんたら、最終兵器みたいな兄貴を軍が手放すわけねえだろ」
タチアナはあきれかえっていた。
ワンオーワンはよくわからずニコニコしてる。
本当に君は天使だなあ……。
「クレアー、隊長働いてるって?」
メリッサも来た。
「旦那様。絶対安静なんですからね!」
レンも来た。
あ……メリッサは「……ッたく、しかたねえな」って顔してるけど、レンは完全にキレてる。
レンはめったに怒らないけど、完全に怒ってる!
俺わかるもん!!!
「旦那様……。絶対安静の意味わかります?」
「あ、はい。ごめんなさい」
クレアさんなら「もー、バカだな~」からのアイアンクローで許してくれそうだけど、レンを怒らせるのはシャレにならない。
根拠はないがそんな気がする。
だから俺は声を出した。
「あの……とりあえずあとホース繋ぐだけなんで……やっていいかにゃ?」
秘技。仕事してすべてごまかしてしまうの術!!!
ホースを繋いでテストして完了っと。
そしたら今度はライトの交換を……。
「旦那様、なにやってるの?」
「い、いえ、ライトの交換を……」
「退院したばかりの人がやる仕事?」
レンがニッコリ笑った。
「チガウでゴザル……」
ごまかせなかった。
みんなに捕まって部屋に押し込められる。
ライトの交換は別の人が引き継ぐんだって。
オレ……カナシイ……。
仕事しないと不安……。
「なにして遊ぶでありますか!!!」
ワンオーワンが元気に言った。
うむ遊ぼうぞ!!!
ワンオーワンはゾークの姫なのであるが、今回は執事さんはなし。
クレアもタチアナもいるしね。
意地悪されたところも見たことないし。
うん、君はそのままでいてね。
通信環境はバッチリ。
真っ先に通信衛星打ち上げたしね。
ネットも使える。
そのまま遊ぼうと思ったら、突如として妖精さんがドアップになる。
「レオくん! ゲーム禁止!」
「どあああああ! なんで?」
「亜空間酔いの原因なんですけどね、脳が今まで知覚できない四次元を認識しちゃったせいみたいです」
「え? 酔いってレベルじゃなかったけど」
脳が「ふえぇ死んじゃうよおぉッ!!!」って悲鳴上げてたけど。
「だってはじめての知覚ですよ! しかもレオくんはその現象の中心地なんですから! 脳にとんでもない量の情報が流れ込んできたんですよ! 普通死にますからね!」
「……え? 死ぬ?」
「死にますね。レオくん心停止しましたし」
おうふ。
思ったより重傷だった。
「超能力使いすぎで心停止したんじゃなかったのぉッ!?」
「人の領域からかい離しすぎたんですよ!!! その証拠に日頃からレオくんに振り回されてるヴェロニカちゃんのとこは倒れた人少ないですけど、トマスくんのところとか病院送りだらけですからね!!!」
「えー……」
「というわけで頭使うの禁止! 寝ててください。……仕事もすんじゃねえぞ!」
「へーい。ワンオーワン、ゲーム禁止だって」
「わかったであります! タチアナ遊ぶであります!」
「へいへい、兄貴。ゲーム借りるぜ」
「どうぞ~」
レンとクレアがお茶を入れてくれる。
メリッサはワンオーワンとタチアナ、それに妖精さんと遊んでる。
「みんなさー、これからどうする? 食堂でなんか作ろうか?」
働いてないと不安が……。
するとレンがにこやかにほほ笑む。
ちょっと怖かった。
「絶対安静です♪」
困った……やることがない。
しかたないのでふて寝する。
周りに自分の彼女たちがいるのに眠くなるはずがない。
そう、麻呂は膝枕を所望する!!!
とどうでもいいことを考えながら……暇すぎるだろ!
は、働かねば! 働かねば!!!
「レオくんが軍畜になってるー!!!」
うっさい妖精さん!
だれが軍畜じゃ!!!
「婿殿ただいまー……ってみんな来てたのか。どうしたのじゃ?」
「あ、ヴェロニカちゃん! レオを止めて! なにしても働こうとするんだよ!」
クレアが訴える。
すると嫁ちゃんがニヤっと笑った。
あ、悪いこと考えてる。
「レオ・カミシロ少佐!」
「ふぁい!!!」
「上官命令じゃ! 寝ろ!!!」
「はッ!!!」
すやぁ……。
眠りに落ちる前に「婿殿はこうやって扱うのじゃ」と聞こえた気がするが水に流すことにする。




