第二百五十八話
「やってしまったのじゃああああああああああああッ!!!」
ほら、やっぱり恥ずかしくなった。
嫁ちゃんが人の枕抱きしめてベッドでゴロゴロ転がった。
いつもの二段ベッドだ。
俺の部屋にお泊まりするときは嫁ちゃんは上の段である。
「嫁ちゃん……俺に関わった人間のさだめだと思ってあきらめた方がイイヨ」
「恥ずかしいのじゃ……どんな顔してみんなと会えば……」
「気にしてないと思うよ。だってみんな俺のギャグワールドの被害者だし」
奥歯キラン。
すると嫁ちゃんがガバッと起き上がった。
「足痛い……」
「おおう……」
「い、いや、全身が痛いぃ!!!」
今度は別の理由でゴロゴロし始めた。
俺は女官さんに通信する。
「レオです。嫁ちゃん……皇帝陛下が全身が痛いと仰られて……ええ、おそらく成長痛ではないかと」
「嫁ちゃん……ストレッチしよ?」
「すすす、ストレッチの前に起き上がるのが痛いのじゃー!!! い、痛み止めを……あ、足がああああああ!」
「いま女官さん呼んだから待ってて」
「ぐおおおおおおおおおおおおッ!!!」
数分後、嫁ちゃんは女官さんたちが用意したストレッチャーで運ばれて行ったとさ。
ナノマシン使わなきゃならない症状じゃないし痛み止めとマッサージにストレッチかな?
父親代わりのピゲットに連絡したら「ご立派になられて……」と男泣きされた。
たしかにピゲットからすればそうだろうな。
嫁ちゃんの普通の幸せを心から願ってくれる人がいてよかった。
さて俺は嫁ちゃんが散らかした部屋を片付けてっと。
民間の船なら清掃ドローンが部屋を掃除してくれるんだけど、ここは軍。
部屋の清掃も仕事のうちである。
今度は嫁ちゃんの脱ぎ散らかした服をカゴに入れて、掃除機かけて床をモップでから拭きしてっと。
お菓子の欠片でも見つかったら上官の拳骨が……ってもう俺は上級士官か。
俺に拳骨落とす上官は存在しないな。
それはそれで寂しい。
嫁ちゃんの服を持ってランドリーへ。
高価な物は女官さんにまかせるところだが、今回はジャージなので俺が洗濯。
ネットに入れてぽいっとな。
乾燥まで一時間っと。
お茶でも飲みながら時間を潰そうかなと食堂に行くとクレアがいた。
こっちに手を振ってる。
「レオ! ヴェロニカちゃんは!?」
たぶん妖精さんが言いふらしたのだろう。
クレアは運ばれて行ったのを知っていた。
「成長痛のひどいのみたい。女官さんが連れていったよ」
「そう……よかった。病気じゃないのね」
病気じゃないのはいいことである。
問題は急激な成長のため成長痛もかなりのものと予測されることだろう。
レンとメリッサが女子を引き連れてやって来た。
「お、隊長! ヴェロニカちゃんどうなった!?」
「急激な成長に伴う成長痛だって。骨格に神経と筋肉の成長が追いついてないのかも」
「うわ……あれ痛いんだよな」
メリッサがうんうんとうなずいた。
「わかります! ビースト種も急激な成長するんで成長痛重いんですよね」
一瞬納得しかけたが、女子たちはケビンを一斉に見た。
この中で一番急激な成長を遂げた……というか男から女になってしまったのがケビンだ。
「ボクはなにもなかったよ……」
ケビンはぷいっと顔を逸らした。
女子たちが悪い笑顔になる。
あーあ……。
男子どもも大概だけど、女子も人のことは言えない。
調子にのった女子どものウザ絡みがはじまった。
「けーびーん。こんな大きいのぶら下げてなにもないわけがないでしょ!!!」
女子の一人が鷲づかみ。
俺はそれを見て無になる。
一方、男子どもの視線は釘付けだ。
「ちょ、ちょっと、やめてよ!」
「るせー吐けー!!! どこが痛かったんだ? うん?」
ケビンは嫌がってるが女子の追求は止まらなかった。
【賢者モードに移行します】
黙れ。今は出てくんな。
俺は無だった。
本当に無だった。
悟り開きそう。
「ねーねーレオくん、暇ですか?」
無になった俺に助け船が来た。
妖精さんである。
「洗濯終わるまで暇だぞ」
「あ! ボクを置いてどこかに行こうとするな!!!」
俺が席を立つとケビンが逃げてくる。
「俺について来なくてもいいんだぞ」
「哀れみの目で見るな!!!」
もー、注文が多いな!
「それで妖精さん何よ?」
「あれからシミュレーターの難易度を見直しましてね。ちょうど今回の件で絶望の戦闘データも入手できましたし。ゾーク戦のかなりリアルなものができたんじゃないかと」
「へー、もうプレイできる?」
「パッチ当てたんでできますよ」
なるほど。
それは興味ある。
「ケビン、シミュレータールームに行こうぜ」
「おっぱい鷲づかみにされなきゃなんでもいい!」
ケビンとシミュレータールームへ。
シミュレーターの席に腰掛けて起動と。
とりあえずシングルプレイ……と思ったけどケビンと二人でやってみる。
ケビンの座席に座って起動。
ユーザーデータなどを読み取ってスタート。
ケビンが表示される。
ケビンは後方のトラック内でドローンを準備していく。
俺は殺戮の夜で出撃。
あらま、前よりリアル。
「妖精さんすげえ!」
「ふふふん! 今回は気合を入れました!」
これでまたシミュレーターが売れまくってしまう。
軍の納入も桁違いだけど、民間用はベストセラーである。
だって帝都の会社は今すぐ職人欲しいんだもん。
会社が金出して育てても惜しくないと本気で思ってるくらいに人手が足りないのだ。
それは我が社のシミュレーターが作った先から売れてしまうほどである。
いやすげえな! なんて感心してたところ、声が聞こえる。
【ジェスター……聞こえてますか?】
……目の前に巨大な女性の姿が現われた。
あ、あん?
バグか?
ケビンは!?
「ケビン! なんかおかしい!」
「こっちも見えてるよ。ねえ、ルナちゃんシミュレーターおかしいよ」
「妖精さん、シミュレータがバグったんだけど……」
すると妖精さんが現われた。
「バグじゃねえです。何者かが侵入しやがりました」
はい?




