第二百四十五話
「真面目系クズ起きろー!!!」
頭の中で呼ばれて飛び起きる。
ここは……?
目の前、拡張現実の画面でツインテールの女の子がじっと俺を見てる。
「起きましたね。ここは帝都警察病院ですよ~。あ、いまオリジナルと通信しますんで。オリジナル、アマダ起きたよ~!」
「おお! 起きましたか」
今度は妖精が表れた。
なるほど、こっちは皇女ルナ。
皇族だ。
VR対戦ゲームの時と印象が違うな。
「アマダくん、現状を説明しますね。アマダくんは彼女のネルに撃たれました~」
ルナ皇女が飛び回る。
うぜえ。
あと【彼女】を強調すんな。
「元彼女な。どうせ野郎なんだろ!」
「え……言っていいんですかぁ?」
「……や、やめろ! 言うな!」
「えっと、指紋からアントニオ・ゴメス53歳、強盗の前科ありと判明。いやー警察に潜り込んでたなんてびっくりですわ」
「てめええええええええええええええええええッ!!! 言うなって!!!」
「安心してください! 警察の皆さんは【俺も狙ってたのに……】【こんなトラップ回避できないよおおおおおッ!】【アマダのカウンセリング代をカンパしようぜ!】【むしろご褒美】など同情の声が……」
「逆に復帰しにくいわ!!! つか最後ぉッ!!! うッ!!!」
腹が急に吊った。
打たれた傷だろう。
と思ったら急に痛みがこみ上げる。
「いでええええええええええええええ!!!」
「あ、やべ。アマダくんはレオくんと違って軍用のナノマシンじゃなかった。えっと、ナースステーションに連絡っと」
「る、ルナ、てめええええええええええええええええええッ!!!」
「はっはっは。ではマザーAI後は夜露死苦!」
「はーい!」
逃げやがった!
くそ! レオに言いつけてやる!!!
「アマダさんどうしました? あ! 傷口が開いてる!!! たいへん!!!」
で、もう一回ナノマシンを注射された。
手術用の麻酔入りのやつ。
次に起きたらのどがカラカラ、麻酔のせいだな。
柔道とラグビーやってたから耐えられた。
そうじゃなきゃ死んでたぞ。
「アマダ、おはよーございます!」
まだツインテールのマザーAIは俺の中にいるらしい。
「よう」
一応挨拶。
挨拶は大事だぞ。
挨拶しないと警察ではグーパンチが飛んでくる。
基本的に体育会系だからな。
「アマダ、オリジナルが逃げたので私が事情聴取しますね」
「うっす」
「先週、あなたは帝国警察合同チームの指揮官として家宅捜索をしましたね?」
「ああ、公爵会残党のアジトだ」
これでも陸軍であれば中尉相当だ。
レオのやつは先に行ってしまったが……クソ、海軍は出世はやいな……。
「なにを押収しましたか?」
「ワークステーションだろ、紙の資料だろ、プリンターに、銃に……あと大量の古美術品かな?」
「リストは?」
「俺に聞かなくても警察のサーバーに報告書があるだろ?」
「それがないんですよ」
「あん? ちょっと待て、俺のストレージに……おうお、死にかけたときに破損したみたいだ。しかたねえ、テンポラリから復元するわ。よし、こいつだ」
「……セキュリティ的にガバガバなことをオリジナルと共有しときます。それはそれとしてファイルをマザーAIに送ってください」
リンクが送られてくる。
……待てよ。
「これは皇族にしか使えないって噂のマザーAIとの直通回線の……」
「ご明察です」
怖いっての。
アップロードするとツインテールのマザーAIが踊り出す。
「いまファイルを精読するんで私の踊りでも見ててください」
うぜえ。
しばらくするとマザーAIが写真を指さした。
「これは?」
「なにかの箱だな」
「箱……いえ、これはデータテープですね。大昔に貴族が作らせたもののようです」
なんじゃそれ?
「じゃ、調べるように指示を……」
「だめです! 危険なものかもしれません!!! まずは軍に連絡して……アマダさん! データ吸い出し用の装置送ります。それで私にデータ送ってください」
「俺入院中なんですけど」
「帝都でレオ・カミシロ一門の信頼できる人があなたしかいないんです!」
「よせよ。正義の超シゴデキセクシー刑事なんて。もー、しかたねえな! 動けるようになったらやってやんよ!」
「何一つ言ってませんがそれでいいです。アマダ、いいですか? 心してください。誰が味方で誰が敵か。それをちゃんと見極めてください」
「おいおい。俺たち警察官が皇帝陛下を裏切るわけねえだろ」
「つい数時間前に警察官に殺されかけてますが」
それはそう。
「でよ、その……な、代わりに頼みがあるんだが……」
モジモジ。
「なんですか?」
「嫁欲しい」
「懲りない人ですね!!!」
「半同棲してた相手が野郎だったんだぞ!!! もうやだー! ジロウ職場結婚できないよ~!!!」
もう泣くしかない。
結婚指輪まで買ってあったのに~。
「あー、はい。えーっと、ヴェロニカちゃんが【おもしろそうじゃ!】だそうです」
「頼んます~……ふえええええぇ」
男泣きである。
「どんな女性がタイプなんですか?」
「おっぱいが大きい娘~!」
「正直ですね」
そのあと三日ほど入院。
軍用ナノマシンの投与で強制復帰。
人でなしだらけである。
なぜか俺の病室を宇宙海兵隊員が護衛してくれた。
仲間すら病室に入れねえ。
メッセージで同僚にさんざん怒られ退院。
海兵隊員と警察の証拠保管庫へ。
もちろん同僚たちに警察のお偉いさんも一緒にだ。
皇帝陛下の命令は絶対なのだ。
「アマダ中尉、ここに箱はあるのですね」
ムキムキの筋肉ゴリラが聞いた。
このゴリラはベネット少尉。
たたき上げの軍人で今は憲兵らしい。
このゴリラは俺の事を中尉って呼ぶ。
隊長格だからなんだろうけどさ。
中尉じゃねえッつーの!
まあ、隊長格だからそう呼びたいんだろうけど。
「ええ、記録上は」
俺が入院している間、証拠保管庫は誰も入れないように施錠された。
お偉いさんが震える手で鍵を開ける。
「開いたぞ。アマダ! まずはお前が入れ」
「了解」
俺は中に入る。
っていっても中にゾンビがいるわけでもねえ。
サクッとデータ読み込んでルナ皇女に送りゃいいわけだ。
……で、どうしてベネットくんは俺の頭に銃を突きつけてるのかな?(涙声)




