第二百四十三話
なんとなく予想していたが、中継器はあの巨大ゾークだった。
周囲のゾークは活動を停止。
周囲は平和を取り戻した。
物資使いすぎた俺たちも動けないけどね。
嫁ちゃんの使ったモノポール砲。
一発あたりの代金を見てひざが震えた。
嘘だろ!
コロニーの方が安いなんて!!!
やはり廃棄コロニーを落とすのが一番サステナブルな戦争なのだろう。
戦争経済怖いよ~!!!
そんな俺は今回も怪我もせず無事である。
おおう、すげえ!
末松さんも無事。
みんなも無事。
怪我人は多数。
カニの数が多すぎて漏れたところで結構な人数が怪我したらしい。
ほとんどが骨折者かな。
作業中の怪我も多かったかなと。
あえて言うと惑星シナガワで陣地工事してた作業員が作業機械に指を挟んで切断したんだよな。
あと火事に爆発事故に管制のミスで輸送機が一台落ちたくらい?
いやそれもナノマシンでどうかにかなったんだけどさ。
死人ゼロ。
やっぱ、俺の見てないところは難易度がヘルモードに突入する傾向にあるようだ。
この大戦果に死を覚悟してた一般兵にも安堵が広がった。
嫁ちゃんは「異常な事じゃ」と渋い顔してた。別にいいじゃん。
「管制ミスが起きるくらい帝国軍の練度が落ちてるのじゃ!」
まーねー。
だってタチアナの話聞いてると少年兵を前戦に送り出すのは当たり前、ザクザク人が死ぬ地獄みたいだし。
やだ怖い。
そもそも地方惑星じゃ作業員の事故死なんて日常茶飯事みたい。
うちの惑星はそういうのあんまりなかったな。
軽トラが畑に落ちるくらいで。
あと畜産農家が動物に蹴られたとかとかかな?
俺が子ども頃、馬やってた爺ちゃんが馬に蹴られて死んだくらいか。
いま考えると、あのころはジェスターの能力が発動してなかったんだな。
「うちは花卉農家だからそんなに事故はないかな。あ、でも倒れたハウスの下敷きになった人なら……」
クレアさんの話を聞くとタマタマがキュッとする。
「うちは鉱山が崩れた事故がありましたね」
そう言うのはレン。
怖い!!!
結構人が死んでるな……。
「うちは象がいるからよく事故起ってたぞ」
中島の実家はハードモードのようだ。
「みんなすげえ環境だな……うちじゃ野生動物にカツアゲされるくらいだぞ」
「なにそれ?」
ケビンが首をかしげた。
最近、完全に仕草が女子になってるが指摘しないでおこう。
「いやさ、学校から帰るだろ? でさ、うち過疎じゃん。全校生4人しかいないから一斉下校するんだわ。するとさコヨーテとかが来てさ、キュンキュン鳴いて給食の残りをくれって言うのよ。おなか見せて目をうるうるさせてさー、しっぽ全力で振ってさー」
「隊長……俺の知ってるコヨーテとだいぶ違うんだけど」
普段はなんでも笑って許してくれるメリッサが頭を抱えた。
「いやさー、うちのコヨーテはさ、給食残りをくれるって知ってんのよ。休みの時は農作業してるじいさんにメシくれって訴えるし。あのキュン声聞かせてやりたいわ。腰砕けになるから」
「それ誰か飼ってない?」
「いや野生。そりゃ昔、誰かが持ち込んだんだろうけど、今は野生」
「なんで隊長の周りは野生動物までメルヘンなのかな!!!」
「わかんにゃい!!!」
「いい、レオ。普通の惑星ではコヨーテは危険生物なのよ」
「クレアママわかったー」
クレアさんに当たり前を諭されるが、でもうちではコヨーテはそんなものである。
一度も噛まれたことがない。
「あとさー、ピューマとオオカミも俺たちの給食狙ってさー」
「あの旦那様……もしかして野生の王国に君臨してたんじゃ……」
俺がライオンと思われた説!
それはない。
「いやいやいやいや……それ普通死亡事故起きてるぞ……」
「えー、でも事故なんて起きたことねえって。むしろ家畜の方が凶暴だっての。兄貴に聞いたら今でもそんな感じみたいだけど。そういや今度大学の調査入るって聞いたな。あと帝都の番組も」
「婿殿の実家は仲良しどうぶつ村かー!!!」
というやりとりから数日。
俺たちは足止め。
ひたすら生産に励んでいる。
アオイさんも元気になり、散歩するようになった。
俺が惑星シナガワの基地内でランニングしているとアオイさんに出くわした。
「こんにちは少佐」
「あ、ども。体調どうですか?」
「おかげさまで元気になってきました。神経の同期まで杖は必要ですが」
そう言ってアオイさんは笑った。
クローンとは違い年単位でリハビリが必要らしい。
虫の良い話はないって事だろう。
「今回の作戦助かりました」
「お役に立てて幸いです」
敵側の【絶望】の一人と内通した件は内緒だ。
俺と嫁ちゃんが知ってればいい。
吉と出るか凶と出るかはわからない。
なるようにしかならんだろう。
「あのおっさんがゾークのトップに立ってこちらを征服しようとしてきたら嫌だな~。適当なとこで死んでくれないかな~」
って思ってないとは言わない。
敵に不確定な要素があると勝ち筋が見えなくなっていく。
感情では「人と自認のあるゾークを受け入れてみんな仲良くできたらな」と思わなくもない。
でもさ、責任あるのよね。俺、少佐だし。
帝国を勝利させないと。
多少非情でもやることやらんとね。
「あ、少佐どの~!」
「ッス」
ワンオーワンとタチアナが来た。
看護師さんの手伝いだな。
偉いぞ。
「お菓子あげよう」
「うわーい……あとにするであります」
「どうしたんよ? ねえアオイさん?」
「しかられたのです。食べすぎだってケビンお姉ちゃんに」
ワンオーワンはしゅんっとしていた。
ケビンも注意するんだな。
「私があげたおまんじゅう、一箱一人で食べちゃいましたので」
「そりゃ怒られるわ」
体に悪すぎる。
「ま、仕事終わったら食堂に来なよ。なんか作ってやるからさ」
「うわーい! 少佐大好きであります!!!」
俺はタチアナにも言う。
「お前もあとで来いよ」
「う、うす」
俺はみんなと分かれてランニングを再開する。
うん、うまくいってる。
このままゾークマザーをわからせてやればいいさ。
はっはっは!




