第二百三十四話
オレ、カワゴン。
木刀デ場外ホームラン、痛イ。
シュウウウウウウウウゥ……という音がしたような気がした。
カトリ師範との遊びは続いていた。
ゾークの方も兵をそろえるのに時間がかかっているようだ。
当たり前っちゃ、当たり前である。
なので俺たちは防衛作戦を練っている。
だけど少佐なのに大きな立場からの作戦指揮をしたことない俺は蚊帳の外。
一応会議には出るけどね。発言は求めないでほしい。
隊長として「ここで戦いたくないにゃー」くらいしか言えない。
俺の指揮能力は小隊の指揮官までなのよね。悲しいことに。
二、三年の猶予があれば演習の経験積めたんだろうけどね。
それでも最速なのよ!
普通は四年かけて理論を学んで、演習とシミュレーションで学んで、軍人に本採用になってから10年くらいかけて実務を通して身につけるんだからね!!!
俺が少佐なのがおかしいの!
いや戦闘機乗りは軍事法廷の弁護士と同じで全体的に階級高いんだけど、それは専門職だからなの!
リアルガチで、本当に冗談ではなく、指揮官やるには年齢が足りないのよ!
上が片っ端から殉職しちゃったから置物として飾ってるだけの少佐だからね!!!
なので俺はできることに注力する。
訓練でしょ、シミュレーターでしょ。
死にたくないので自分基準でウルトラハードモードでいく。
死んじゃってクローン(俺だと錯覚してるだけの俺でもなんでもない他人)に嫁ちゃんたちがNTRされるとかこの世を滅ぼしたくなる。
そんなん闇堕ちしちゃうよ、俺。
で、これ。
惑星シナガワで剣の稽古。
カトリ師範と遊んで木刀で場外ホームラン。
防御ごと体持ってかれた。
木刀折れてるじゃん!!!
もう何度目かの窓突き破り。
そもそも窓つけるのやめようかって話まで出てる。
「先生! 木刀折るのやめてください!!!」
「おめえもさっき上段斬りで一本へし折っただろうが!!!」
おかしいんだよね。
普通の木刀じゃ折れるから樹脂コーティングしたのよ。
木材の繊維に流し込んで硬化したやつ。
昔からこういうのあるらしくて、そういや元の世界でも中国武術で棍をお茶で煮て硬くしたりとかがあったな。
で、この木刀は理論上鉄より硬いはずなんだよね。
でも曲がるわ折れるわでもう何本壊したかわからん。
「オラかかってこいや!!!」
「レオ! いっきまーす!!!」
今日こそぶちのめしてくれる!!!
折れた木刀片手に突撃。
俺は道場に正面引き戸を蹴り破る。
奇襲、奇襲しかない!!!
薩摩殺法で渾身の一撃をぶちかま……木刀が飛んできた。
ここまでは予想通り!
よけて……足元に木刀が転が……ぎゃあああああああああああああッ!
ずささささささー。
木刀を足に引っかけてコケて顔面からダイブした。
「だから足!!! ドタバタ走るんじゃねえ!!! おめえは勝ち筋があると急に焦って動きが雑になるんだよ!!!」
って説教しながらカトリ先生は俺のケツを木刀で叩く。
ひーん!!!
道場の隅で見てた男子やトマスとその近衛隊がひそひそ話をする。
「おい、気づいたか? 先生、壁に掛かってた木刀投げたぞ」
「もはや少佐は剣だけでは止められない段階に来てるのか……」
いや真剣に受け取るのやめや!!!
木刀がちょうどいいとこにあったから投げただけだろ。
「はい注目、少佐の悪いところは運足ですが、いいところは?」
トマスが答える。
「一撃必殺を狙ったことでしょうか?」
「いいえ、場外に吹っ飛ばされても戦闘を継続したことです。私と違い皆さんは競技者ではありません。戦争なら場外負けはありませんから。少佐なら戦闘中に崖から突き落とされても戦闘継続すると思いますよ」
「なるほど……」
「もちろん対人関係がありますから。目つぶし金的、噛みつきなどの危険な技はやりません。それはお互いの信用です。ですが、そうじゃない部分では本気だということです」
いや、ホントに真面目なの……やめよ。
俺だって相手が先生じゃなければここまでやらないって。
ピゲット相手なら普通の戦いに徹してたでしょ。
ここは「バカだこいつらー!!!」でしょ!
目つぶし金的についてはやったらぶち殺されるのでやらない。
俺だって命が惜しい。
「というわけで二人一組になって乱取りしましょう。ちゃんと防具つけてくださいね。オラ起きろ! てめえは防具なしだ!!!」
「扱いが酷すぎる!!!」
俺だけ防具なしである。
ひーん! ひどいよー!!!
その後、「死ね!!!」「ぶち殺す!!!」という罵声が飛び交う戦いに。
ってのが毎日。
終わったら書類作成という名の休憩時間を挟んでシミュレーターへ。
もはや休憩という概念が崩れている。
もうね、カミシロ本家の親衛隊すらどん引きしてる。
ひそひそ話してる。
「朝稽古やって仕事してからシミュレーターとか殿の体力は無尽蔵なのか!?」
「部下に己の背中を見せるとは……やはり帝国の救世主たるは殿のみ!」
「レオ・カミシロ万歳!!!」
なぜ感動する?
ただのブラック労働やぞ!
昼食ってプロテイン飲んでシミュレーターへ。
なお昼ご飯は肉も野菜も大盛りだ。
食わんとやってられない。
トマスのとことカミシロ本家の近衛騎士はハードすぎて数人吐いたらしいが、うちの隊に脱落者はいない。
山盛りご飯をガツガツ食べた。
おかわりまでした。
これには一般兵もどん引きである。
「さすがハウンド隊……化け物ぞろいすぎる」
「あの荒行のあとでご飯山盛りとか……化け物かよ」
「聞いたか? ハウンド隊の隊員の部隊、数カ月で精鋭に鍛えられたってよ」
「なにそれ怖い……」
あきらめろ。
君らも数日後から【カトリ先生と一緒】が始まるのだよ!!!
どうやってもゾーク戦は白兵戦になりがちだもんね。
健康体操だと思って(自分を騙して)がんばってほしい。
シミュレーターは【敵キャラがゾーク】版が完成したので、そっちでプレイ。
何百匹来ようが怖くねえぞ!!!
って言いたいんだけど、カニちゃんが実弾しか効果ないから実弾で戦うんだけど、リロードで死ぬんだよね。
困ったね。
なるべくみんなが死なないようにしたいな。
って思ってたところでアオイさんに呼び出された。
なんだろう?




