第二百二十六話
男子どもが正座させられる。
ザマぁッ!
そこは道場。
仮設の小屋だったのに、いつの間に……というか朝起きたら組み立てられていた。
突貫工事である。
で、俺やエディ、エッジ以外の連中も練習させようじゃないかって話になった。
で、これ。
今日は槍の稽古。
「お前らさあ、少佐も少佐なら部下も部下だよな!!! 剣筋は立てられない! 軸はぶれてる! すり足もできてない!!! なんでそれで今まで生きてられやがったんですかね!!! おじさん不思議でしかたねえわ!!!」
「せ、先生! 自分らは接近戦は得意ではなく……というか槍は本来三学年で銃剣術の補講として少し習うだけであります……自分らは二学年で……」
木刀で、同級生のイソノの顔をグリグリ。
男子で一番のバカ野郎なので実に痛快である。
「なるほどねえ。でもお前らさあ、基本ができてねえのにバカ強いから怒ってんのわかれよな!!! オラ中島!!! 逃げようとしてんじゃねえ!!!」
逃げようとした中島のケツに木刀がクリーンヒット。
二人ともさ、サボりすぎなのよ。
二人とも短剣術は得意なんだけどね。
って思ったら俺に弾が飛んできた。
「おら! レオ! 槍持ってかかってこい!」
カトリ先生が木の槍を取る。
俺にも投げてきた。
「先生! 自分は先ほどイソノが言ったとおり帝国槍術は履修しておりません!!!」
キリッ!!!
そしたらカトリ先生ったら槍で俺の胸をグリグリ。
乳首ドリルやめや!
「ああん!? お前の戦闘履歴見たら槍って書いてあったぞ! てめえコラ、いいからかかって来い!」
「ぴえーん」
クソ! カトリ先生、俺たちのこと調べ尽くしてやがる!!!
前後に肩幅の1.3倍の歩幅で構え。
「ほう……かかって来い」
下から振り上げる。
「あんだ? 槍じゃなくて棒術か?」
「うおおおおおおおおおおおッ!」
スッパーン!
打ち込んだはずなのに倒れたのは俺。
槍で足を出した瞬間に引っかけられた。
「すり足しねえでバタバタ足を出すからそうなんだよ! やり直し!!!」
「ふえええええええん!!!」
って言いながら心の中は【ぶち殺す】である。
死ね!!!
「はいその調子!!!」
ふええええん!
本気でぶちかましたのに防御された。
逆から……ふんが!!!
「いいぞ! 次!!」
槍を上から押さえつけられる。ふはははは!!!
槍を下から刺し込んで有利な位置に移動。
あとは有利な位置からひっくり返して……ひっくり返した勢いで飛び上がって頭を狙……。
「はいダウト」
飛び上がった瞬間、胴めがけて槍のフルスイングが飛んできた。
ホームラン。
「ぎにゃああああああああああああッ!!!」
道場の壁まで吹っ飛ばされた。
「なるほどねえ。お前さー、どこでそれ習ったのよ? 館花流でもそんな構えねえぞ」
どうやらカトリ先生はメリッサに習ったと思っているようだ。
違うね!
「映画で見ておぼえました!!!」
キリッ!
「……おう……わかった。レオに聞いた俺が全面的に悪かった。お前ら全員基本の型からだ!!! やるぞ!!!」
「ひいいいいいいん!!!」
というのが男子の毎日。
女子の方は男子と違って指示すればちゃんと練習するし、自己流の動きが入ってないので普通に基本から。
「がんばるであります!!!」
ワンオーワンも参加してる。
でさカトリ先生、ワンオーワンに甘い。
「ワンオーワンはいい子だなー、おやつあげよう」
「先生大好きであります!」
なおワンオーワンの相棒であるタチアナはカトリ先生から距離をとっている。
猛獣の気配がするそうだ。
カトリ先生も俺と同じものをタチアナから感じてるのか一定の間合いを空けてる。
お互い嫌ってはなさそうなんだけど警戒してるみたい。
俺たちはこんな感じで一ヵ月ほど過ごした。
第二次遠征隊は人数が多すぎた。
動き出すために時間がかかるのだ。
はよしろ!!!
カトリ先生から俺たちを解放しろ!!!
なおトマスたちはカトリ先生から逃げ回ってる。
彼らが言うには「頭おかしすぎる」だそうだ。
もうね、やってる内容が全銀河選手権前の選抜選手の合宿レベル越えだそうだ。
ワシラ軍隊やぞ!
スポーツ選手ちゃうぞ!
ほんとそれな!!!
さて、そんなグダグダな俺たちであるが、先行してる部隊がある。
遠隔操作の偵察ドローン部隊である。
彼らは惑星サンクチュアリを目指すにあたって周辺惑星を偵察してる。
今の惑星から先になると無主の惑星がある。
シナガワ家の領土ではあるんだけど、上空からのカメラ調査で無価値とされてる惑星だ。
開発するほどじゃないよねって惑星だ。
かと言って酸の雨が降ってるとか気体の惑星とかの住むのもテラフォーミングも不可能な惑星ってほどじゃない。
管理番号は……やめよう。桁が多すぎる。
水がないとか空気が薄いとかクロレラ処理の労働者を動員してムリヤリ開発するのも無理な惑星だ。
とにかく経済性がない。
たいていの場合、現在の技術で農業ができなければこのランクに分類される。
(ただし戦略上の要所だったりするとコロニーを建ててでも開拓される)
この惑星の場合も同じだ。
農業に適しておらず、惑星シナガワに近いため開発されないのだろう。
とは言ってもゾークがいたら困る。
偵察の対象である。
こういう惑星に金脈があったりするのだが……ここまで条件が悪いとせっかく資源があっても赤字になってしまう。
結局、物言うのは立地なのよね。
惑星経営って難しいね。
で、データが送られてきた。
「建築物が見えます」
調査隊が声で説明してくれる。
これがギーガー風かベクシンスキー風なら死亡フラグ発生。
絶対に行かない。
問答無用でミサイルで焼き払うもん!!!
「それが岩に白い家がぽつんと……」
写真を見ると一面岩だらけのところにぽつんと一軒の家がある。
……焼き払お?
逆に怖いから。
「空気薄いのになんで存在できてるのかな……」
たしか生命維持装置が常に必要な大気のはずだ。
これが存在できているのが怖い。
嫁ちゃんに判断を仰ぐ。
俺の判断無理よ。
「婿殿はどう思う?」
「問答無用でき焼き払お!」
「ドローンで調査しろと伝えよ。婿殿が過剰反応してる」
「なんでえええええええええぇッ!? なんでそんなこと言うのよおおおおおおぉッ!!!」
最近、思い通りにならないよね。
みんな俺の行動先読みするんだもん。




