第二百十七話
新しいパンツに履き替え、新しい軍服一式を支給される。
士官学校指定の芋ジャージなし。
替えは船にあるんだけどさ。
少佐の階級章ががっちり取り付けられている。
俺の金で買わされないだけマシか。
靴下は厚手のものだ。
穴開きそうだったからこれは良かった。
靴も新しい軍靴だ。
で、着替えする前に全身を処理される。
ナノマシンで全身をビームで焼かれるのだ。
洗っても落ちない組織がついていた時の処理だって!
髪の毛とか眉毛は大丈夫みたいだけど産毛は焼かれるって。
理髪店の顔剃りみたいなものか。
ジェスター的には誤作動で片眉だけ落とされることを覚悟しよう。
最後に煙で燻される。
股間がシュワシュワするのであまりよくない煙だと思う。
あとケツが冷たい。
俺が洗われてる最中、館内は一斉に清掃される。
ドローンで隅々まで清掃。
ゴミなどのサンプルはすべて近くの研究所に送られる。
少量の体組織から増えるやつだったら困るんだってさ。
で、着替えたし働こうかなと思ったとこで防護服を着た兵に捕獲された。
俺は別室……というか急遽建てたガラス張りのコンテナに隔離。
そして何もいわれないまま半日経過。
軽く囚人になった気分でいると嫁ちゃんが来た。
宇宙から慌てて来てくれたようだ。
「よっ! 元気か?」
「うわああああああああああ! 苦しい! 俺の中でビースト的なものが暴れてるうう! いますぐチューしてくれないと俺の中から怪物がああああああああああッ!」
「元気じゃな」
軽くスルーされた。
よかった下ネタの方やらなくて。
たぶんそっちやったら上から致死性のガスが出てきたぞ。
「お菓子持ってきてやったぞ」
嫁ちゃんがベルトコンベアにお菓子を載せると何重もの検査をされてから俺の部屋に運ばれてくる。
悪意しかない回転寿司システムとでも言おうか。
「うわーいポテチだー!」
というか本気ではらへった。
カワゴン、ポテチマルカジリ。
「婿殿、今日は寝てるのじゃ。食事も出すように言っておく」
「あざっす。ところでさー、なんかわかった?」
「液状の金属を使ったナノマシン兵器はかつてあったそうじゃ。婿殿の措置もそのころのプロトコルに従っておる。あとは組織の検査じゃな」
「了解ッス! ……ところでさ、サリエルは液体金属のサイボーグってこと?」
「まだわからん」
もしサリエルが液体金属のサイボーグならSFだと文句なしの強キャラだよ。
めんどうなの出てきたな……。
「じゃ、いい子にしてるんじゃぞ! いいな!」
「はーい」
面会時間が終わって嫁ちゃんは帰ってしまう。
みんなも来ないので暇すぎて死にそう。
監視カメラがあるから踊ってると怒られそうだし。
へいへーい監視者見てるー?
ひゃっほーい!
「なにやってるでありますか?」
「うべらぼっぽーい!!!」
ワンオーワンとタチアナである。
よかった……ウケを狙うあまり全裸芸を披露する前で。
「ご飯お持ちしたであります!!!」
「あざーっす」
また幾十ものセンサーを通って弁当が来る。
弁当はハンバーグだった。
「おら、お茶だぞ」
ポットごとくれた。
あと紙コップも。
「いい子いい子」
と手を伸ばしたがガラスで触れるはずもない。
だけどタチアナは「ん」と頭を差し出そうとした。
「おおー。タチアナも少佐が大好きなのでありますな!」
「ち、違ッ! これは条件反射だっての! レオがいつも頭なでるから!!!」
顔真っ赤である。
なつかない野良猫がベタ甘になったようでうれしいわ……。
「ち、違うからな! 帰る!!!」
「また来いよ~」
タチアナがワンオーワンを引っ張って出て行った。
また暇になってしまった。
うーん、隔離措置って意味あるのかな。
ゲームでもやろうかと拡張現実からメニューを開くと同時に妖精さんが現われた。
「レオくん! たいへん!」
「なにが?」
「レオくんの剣を運んでた研究船が航行不能になったの!」
ええー、フラグ回収はやすぎない?
そういうの勘弁してよ。
ホラーじゃねえか!
「カメラは?」
「映像見ます」
鳴り響く警報音。
研究者と技官に戦闘員が通路を走る。
それだけでヤバそうなのはわかる。
「え? これ巨大な化け物が出てくるパターン?」
「それもまだわかりません」
一人ずつクルーがゾンビになっていくのはやめてほしい。
【サンプルが逃げた! 捕まえろ!】
……あかんやつだ。
【液体窒素につけても動くのか!】
……冷凍処理だめじゃん。効果ないじゃん。
うーんでも、問答無用で耳から脳味噌に入って体を乗っ取るとかじゃないのか。
怖さを一段階引き下げ。
【お、おい!!! ケーブルが切断された!!!】
【クソ! 電源が落ちた!!!】
どんどん暗くなっていく。
……危険度を一段階引き上げ。
予備電源。というかバッテリーでカメラは撮影し続けていた。
「生命維持装置は?」
「レオくんが初遭遇したときとは違って全損じゃありませんし。しばらくはもつかと。止まっても補給基地も近いですし、各人の戦闘服の生命維持装置だけで耐えられると思います」
それでも船を壊せるのヤバい。
大きく出力が大きいのから小さくコンパクトで急所だけを狙ってくるようになってる。
そんなのが群れで来たらと思うと……。
「俺行った方がいいかな?」
「むしろ来んなです。現状なら最悪船ごと爆破すればいいだけですけど、レオくんが行ったらなに起るかわかりませんし」
「えー……」
数時間後、船が爆破されたと聞かされた。
あー……カニとサリエルの組み合わせは厄介だわ……。
なにより実弾しか効果ないカニと、実弾無効のサリエルの組み合わせ……どうしようか?
あれがボスモンスターならいいけど雑魚だったら……帝国滅亡するかも?
うーん、うーん……。困った。
「レオくん」
妖精さんが猫なで声を出した。
やだ怖い。
「……600年前の兵器があるんですけど、試します?」
「マジっすか?」
【試します?】なんて聞くのだ。
ろくでもない兵器だ。
俺は知ってる。
妖精さんは自信がないのだ。
だが選択肢は少ない。
「頼んます」
こうして新兵器をオーダーしながら俺の拘禁は続くのだ。




